見出し画像

「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」観劇感想

 こんにちは、雪乃です。

 行ってきました!!!!!「ムーラン・ルージュ ザ・ミュージカル」!!!

 わ〜〜〜〜もうめっっっっちゃくちゃ良かったです。行って良かった……。

 というわけで感想です。ネタバレしてます。

 今回のキャストはこちら。キャストボードは通常であればキャストの名前のみが掲載されているのですが、ムーラン・ルージュはキャストの写真つき。こんなところも豪華です。

 グッズはトートバッグ(白)、ピンズを購入しました。ピンズ、勝手にランダムだと思ってたら選べたので「愛」を選択。

 劇場に入った瞬間からもうすでに目に映るものが赤い!そして客席に足を踏み入れれば、目が痛くなりそうなほど鮮烈な赤に染まった帝劇の舞台が視界いっぱいに広がります。
 舞台上だけではなく、上手には象のオブジェ、そして下手にはムーラン・ルージュの象徴でもある赤い風車が設置されていて、帝劇すべてを使って観客をパリに連れて行ってくれます。
 赤いのは帝劇だけではなく観客も。今回は赤い服を身につけている人が多かったです。かくいう私も赤いワンピースだったので全身赤でした。なんなら爪も赤。

 劇場ロビーから客席に至るまで流れていたBGMが止まると、そこからはもうムーラン・ルージュの世界が始まります。オープニングからスピーディに展開する豪華絢爛なショー。夢よりも夢夢しくて扇情的で華やか。美しくあるよう計算され尽くした照明や舞台装置や振り付けに、人間の本能が絡み合って生み出されるエネルギーからなる大きな花火のようでした。

 ムーラン・ルージュは既成曲を使ったミュージカルです。なのでどこかで聴いたことのある楽曲が多数登場するのですが、注目すべきはその訳詞。海外のライセンスミュージカルを日本で上演する際には、1人の作詞家、演出家がすべての楽曲の訳詞を手掛けるのが一般的です。しかしムーラン・ルージュは、1曲ごとに違うアーティストに訳詞を依頼。これによって、知っているメロディにも知らないメロディにも馴染みやすい日本語が乗り、世界に入りやすくなっていました。

 そして楽しみだったのがダンス。今まで観たミュージカルの中でも、ダンスの満足度は間違いなくトップクラスです。時に思い切り扇情的に、時に健康的な色気を纏いながら展開する躍動的なダンスは、衣装や照明、舞台装置の力もあってとびきり華やか。その上で黒一色、大掛かりな装置も使わない、あらゆる煌びやかさを削ぎ落としたシーンもあって。夢のようなシーンの中にも息づく確かな生命力を感じさせるダンスでした。

 アメリカ人作家クリスチャンとムーラン・ルージュのスターで高級娼婦のサティーンの恋を軸に、ベル・エポックに生きるボヘミアンたちの生き様や芸術への絶えることのない情熱が描かれている本作。日本版ムーラン・ルージュを作る上ではこれ以上の役者は揃えられないだろう、と言えるほど最高のキャスト陣でした。

 今日のサティーンは元雪組トップの望海風斗さん。サティーンが登場した瞬間から輝きがすごい。「るろうに剣心」では早霧せいなさん、「1789」では凰稀かなめさん、「オン・ユア・フィート」では朝夏まなとさん、「マリー・アントワネット」では花總まりさん、そして「エリザベス・アーデンvs ヘレナ・ルビンスタイン」では明日海りおさんを、と何度か宝塚のトップやトップ娘役だった方を拝見していますが、どの方も「トップだ!」と分かる、登場した瞬間に毎回圧倒されます。
 私はフランク・ワイルドホーンが好きで、望海さんのトップお披露目公演である「ひかりふる路」のCDを何度も聴いていたのですが、生で聴く歌声は、当たり前ですがCDより何倍も凄くて。特に好きなのが「Firework」。命を削り、燃やすようにして歌い上げる力強さと儚さはまさしく大輪の花火そのものでした。
 作中でダイヤモンドに例えられるほどの煌めきを華やかさを放つサティーン。しかし煌びやかな衣装を着こなすその奥にある真実の美しさが、クリスチャンへの愛を通じて自由になっていく。ムーラン・ルージュは、ダイヤモンドのサティーンが人間に戻る物語なのだと思いました。

 クリスチャン役は甲斐翔真さん。「デスノート」夜神月や「ロミオ&ジュリエット」のロミオ、「エリザベート」のルドルフ、「マリー・アントワネット」のフェルセン等々、話題作に大役での出演が続いていたのでずっと拝見したかった方です。帝劇の2階席まで届く伸びやかな歌声に舞台映えする長身を生かしたダンス、心の軌跡を繊細に、地に足をつけて辿るお芝居。すべてにおいて素晴らしいクリスチャンでした。
 作中でのクリスチャンは、まだ何者でもない若者。その等身大感と、しかしその中に底知れぬ可能性を秘めたまっさらな輝きが激しい恋に染まっていく過程が、ムーラン・ルージュという物語の強靭な軸になっていました。

クリスチャンの恋敵となるのが、サティーンを愛人として身請けしようとするデューク(モンロス侯爵)です。要約すると「らんまん」の高藤をもっとヤバくした感じのキャラクター。作品のテーマである「真実・美しさ・自由・愛」のアンチテーゼを担うことで主題を際立たせる重要な立ち位置です。しかし単なる主題のアンチテーゼ≒ヒールではなく、どこかに人間味を感じさせたKさんのデューク。与えうるすべてを与えることでしかサティーンに抱いている感情を表現できないんだろうなと思わせる、どこかに哀しみを漂わせたような質感がすごく良かったです。

 ムーラン・ルージュといえば!な人物が、実在の画家であるロートレック。作中では、ムーラン・ルージュでかける新作の公演を手がける姿が描かれています。今日のロートレックは上川さん。人間らしさと表現者のエゴと渦巻く、それでいて愛のあるロートレックでした。そしてもう、永遠に歌が上手い。ずっと聴いていたいです。四季を退団された後もミュージカルに出てくださっているのがすごく嬉しいです。

 ムーラン・ルージュは、人間が生き生きと描かれているミュージカルです。そんなキャラクターも、人間味あふれる姿を見せてくれます。前述のデュークもそうですし、ムーラン・ルージュのオーナーであるジドラーもそう。
 人間の描写で個人的に好きなのは、サティーンの同僚であるベイビードールが、サティーンが結核に冒されながらもショーに臨もうとする直前、サティーンのドレッサーの前で祈るような仕草が見えたシーン。ムーラン・ルージュで働く人々の信頼関係が垣間見えたシーンでした。

 ムーラン・ルージュは、サティーンの死を以て幕を閉じます。しかし舞台を締めてくれるのは、華やかなショー(MORE MORE MORE!)。ムーラン・ルージュの物語そのものがサティーンという人間の生きた証であるからこそ、舞台は最後にとびきりの夢を見せて終わってくれる。最後まで、サティーンたちの愛した美しいムーラン・ルージュを目に焼き付けたまま劇場を後にできる、本当に良いフィナーレでした。
 本作は生オケなので追い出しまで聴いて帰ったのですが、ギターがめっちゃカッコよかったです。

 衣装も照明も舞台装置も、何もかもが豪華絢爛だからこそ際立つ人間ドラマ。豪華だけど豪華だけじゃない、魅力溢れるミュージカルでした。早くも再演希望!

 さて、次は9月に「生きる」を観に行きます。楽しみです。

 本日もお付き合いいただきありがとうございました。

この記事が参加している募集

舞台感想