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物事を延長でしかみない風潮

これは448回目。メディア批判ということになります。メディアだけではありません。経済学者や、多くの市場参加者(専門家の方々)も同じ嫌いがあります。

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ウイルス騒動で、世界の景気が真っ逆さまだ。これからおそらく1-2ヶ月が、最悪のデータになってくるはずだ。45年ぶり、72年ぶりという、最悪データばかりで、まさに「ブリの大漁」である。

このためか、世の中これからとんでもないことが起こるという悲観論が、メディアの全面を覆い尽くしている。

馬鹿げた話なのだ。なんでも計量データの延長でしかものを見ない人たちが多すぎる。

たとえば、(わたしの仕事のフィールドで恐縮だが)こういう状況なので、株式相場は、これから出てくる最悪データによって安値更新をして、また暴落するのではないか、という悲観論である。

ならば、なぜJR東(証券コード9020)の株価は、3月13日の最安値7060円を割り込まないのか? 4月17日終値で8156円だから15%も上ではないか。前日、3月の乗降客数が、90%減というショッキングなデータがでたばかりである。おかしいではないか。

その株価も似たようなものである。どころか、たとえばわたしが会員に公開しているモデルポートフォリオは、2月26日時点の評価水準に戻っている。すでにほとんどウイルス騒動による暴落分は、回復してしまっているのだ。

このからくりは簡単だ。なにもわたしがうまいからではない。むしろ下手なのだ。それでもこうなのは、株価が先行しているからだけなのだ。

市場というものは、常に最悪の状況を最大限織り込もうとする。ウイルス感染が先進国で急拡大し始めた2月後半、市場は最悪、ロックダウンもありうるというところまで一気に織り込んだ。つまり、経済活動がゼロ、企業の収益は一時的にゼロになる、というところまで織り込もうとして、日経平均は一気に34%の暴落をしたのだ。

これからやおら、その最悪データが出始めるというところなのだが、市場というものは、同じ材料を二度織り込むということは、無い。

すでに底入れをしてしまった株価は、上げたり下げたりはあるだろうが(相場だから当然である)、基調としては上昇トレンドにすでに復帰しているはずだ。

基本的に株式相場は、平均すると、実体の景気より9ヶ月先行して動く。今回のような短兵急なショックのときには、両者の時間差はそれほど無いだろうが、要するに市場が先に動くということは、常に変わらない真理なのである。

なぜ、そうなるのか、それは誰にもわからない。だから昔から「神の見えざる手」と呼ばれる。

おそらくテレビや新聞で、悲観論ばかり吹聴している人士というのは、およそ株というものをやったことがない人たちなのだろう。世の中で先に動くものはなんだとお思いだろうか?

金(かね)である。マネーが、なにより一番最初に動くのだ。マネーこそは、もっとも貪欲で、もっとも臆病な代物だ。

だから、リスクがあると思えば、真っ先に逃げる。リスクが無くなった、なくなりそうだ、と思ったら、誰よりも早く安値を拾おうとする。だから、常に先行的に動くのだ。

世の中の先をよみたければ、市場を見なければ嘘である。為替、金利(債券)、商品、株、すべて市場原理で動いている。不動産もそうなのだが、あまりにも換金性が悪いので、実はこれだけ実体景気より1年から1年半遅れる。

こういうことを、アメリカでは小学校から教えているのだ。そういう連中に対して、日本人はあまりにも喧嘩の仕方を知らなさ過ぎるということを、先般もここで書いた次第。

流行を一番最初に織り込むのも、市場なのである。株式投資や、その他の金融商品をやるやらないはどうでもよい。ただ、これを知っているか知らないかでは、生き方の選択が、がらりと変わってくるはずだ。

なぜなら、市場だけが次に起こることをおぼろげにも見せてくれる唯一の鏡だからだ。市場というものは、老若男女の関係なく、学の有る無しもまったく頓着せずに動いている。地位や、人徳ですら、なんの意味も持たない。市場の前では、すべてが平等だ。およそ人間が作り出したもので、これ以上自由なものは、まずお目にかかれないのだ。

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