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『日本の税は不公平』全文公開:    第1章の1 

『日本の税は不公平』(PHP新書)が3月27日に刊行されました。
これは、第1章の1全文公開です。

第1章 税を誤れば国は滅びる

1 パーティー券収入のキックバック裏金問題

政治家に対する国民の不信が爆発
 自民党派閥のパーティー券収入のキックバックが、2023年12月に問題となった。本稿執筆時点(2024年2月)で事態は進行中であり、どのように決着するかは、見通せない。
 この報道を受けて、政治家に対する国民の不信感が爆発した。安倍派、岸田派、二階派などが派閥解散を決めたが、国民は納得せず、岸田文雄内閣に対する支持率は低下している。
 これは、上脇博之神戸学院大教授が政治資金規正法違反で刑事告発したことから行なわれている捜査であるため、資金収支報告書の記載義務に違反した問題として捉えられている。
 政治資金の流れの透明化は、重要な課題だ。それは、政府の政策が特定集団の利益のためのものになっていないかどうかをチェックするための、基本的な情報となるからだ。
 ただし、キックバックされた裏金について、資金の流れの追跡は難しいかもしれない。また情報がデジタル形式で提供されていないために、分析作業に多大の労力が必要となる。
 そして、この問題とは別に、多くの国民が、課税の不公平に対して、強い怒りを持ったことも間違いない。

これは、脱税事件ではないのか?
 たまたま事件が報道されたのが確定申告期であったこともあり、多くの国民は、報道される政治家の実態と自分の日常生活を比べざるをえなかった。
 われわれは、税金を納めるためにこんなに苦労しているのに、政治資金について、政治家は巨額の収入を得ながら、税金を納める必要がない。毎年、確定申告の時期には、私を含めて多くの国民が、わずかな額の領収書も漏らさず集めようと、必死になって書類の山を引っ搔き回している(私は、申告書の作成は税理士に依頼しているが、領収書や支払い調書など申告に必要な資料は、自分で集めなければならない)。
 しかし、なぜ政治家は、われわれと桁違いの収入を得ても特別の扱いなのか? 何と不公平なことだろうと、怒りがこみ上げてくる。
 自民党派閥のパーティー券キックバック裏金問題は、政治資金に関してさまざまな問題があることを明らかにした。普通の人の感覚なら、これは脱税問題になる。しかし、実際には、そうなってはいない。なぜなのだろうか?
 以下では、記載義務違反とは別に、課税上の問題があることを指摘したい。要点は、キックバック収入は政治資金とは見なせないから、課税所得であるということだ。


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