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世田谷美術館┃塔本シスコ展 シスコ・パラダイス

世田谷美術館で11月まで開催中の企画展、塔本シスコ展へ行ってきました。

世田谷美術館は砧公園にあり、世田谷にゆかりのある作品や、アンリ・ルソーの作品を所蔵しています。用賀駅が最寄りなのだろうけど徒歩で15分ほど。本当に公園の中にあるのでピクニックがてら鑑賞なんて素敵な日を過ごせそうです。

恥ずかしながら塔本シスコという画家を知ったのはこの企画展のおかげなのだけど、インパクトのある展覧会チラシをみたら行かなくては!と妙な使命感に駆られてしまいました。

50代で油絵を始めた塔本シスコさんは熊本の生まれ。お名前の由来は、養父の夢だった地サンフランシスコからきているとのこと!その作品は本当に豊かで鮮やかで自由。片岡球子のような大胆で迫力ある作品を想像していたのですが、画面は大きくとも緻密な描写で、家族や生物など日常的な主題がほとんど、生き生きした画面からは迫力も感じるけれどそれよりも身近な生への愛おしさみたいなものを感じました。

海や山へ行った日のことや日々の生活風景などを描かれていて、まさに"人生絵日記" です。キャンバスだけでなく、ダンボールや箪笥の引き出し、空瓶やしゃもじにまでその世界はひろがっていました。

今回の展示は撮影が許可されています。

シスコさんの描く金魚や蟹、カエルなど小さな生物がとても印象的でした。一匹ずつ繊密で丁寧に色がのせられていて生物への慈しみが伝わってきます。

《金魚 大和錦の産卵》

写真では伝わらないのだけど、本当に細かいところまで色が重ねられています。みんな表情も違う。カニちゃん可愛い。

こちらも金魚を描いた作品。水槽を覗かせてもらっている気分になります。

《金魚とほてい草》

ミーチャンというネコと暮らしていたシスコさんは、ネコもたくさん描いています。描かれるネコちゃんはみんな表情豊かで、何か話しかけてきそう。大切な家族や隣人のひとりとして存在していたのですね。

《三匹のネコ》
《ヒロコさんを見ているミイ》

晩年の作品には月を描いたものが多く、その中でも雲に隠れそうな満月を描いた作品が特に印象的だった。

《月光 雲に入る》

これまでの作品に比べて小さい画面でシンプルな構図だけど、筆跡からも力強さと儚さを感じます。隣には似た構図でまんまるの満月を描いた《シスコの月》が展示されていて、対のような作品だなあと感じました。

素朴派、なんてカテゴライズされているのもみかけますが、たしかに独創的な部分ではルソーなどの画家と共通しているような気がします。同時に、田中一村の作品のような南の国感も想起させられました。きっとわたしが寒い山の出身だからなのかもしれません。(上京してきて何年も経ちますが、温暖な場所への漠然とした憧れがずっとあります。海っていいな〜)

シスコさんの オフィシャルサイト でたくさんの作品が紹介されているのでお勧めです。展示はこの後何ヶ所か巡回されるよう。

世田谷美術館のミュージアムショップは小規模ながらオリジナルのルソーグッズ(お洒落!)などが展開されています。今回はシスコ展のポストカードと、糸綴じノートを購入しました。

お気に入りの金魚の作品の表紙を選びました。しっかりした地なので語学のまとめノートに使おうと思います。

鑑賞後は砧公園から少し歩いて馬事公苑方面へ。美術館内って寒いから、鑑賞した後は温かいものをとりながら感想をメモしたりすることが多いのだけど、この日はシスコ・パラダイスに触れて元気も出たので少し歩いて体温を取り戻しました。

馬事公苑横の cafe+8101 でひとやすみ。 

モーニングやテイクアウトメニューも充実のカフェ。テラス席はワンちゃんもOKみたい。開放的なので晴れた日は混みそうですが、この日は雨だったのでひとりのんびりさせていただきました。

遅めランチでタコライス!

可愛いLOVOTもいるよ(お子ちゃんに怖がられてた)

晴れた日なら併設のセタビカフェのテラスで日を浴びながらぼーっとするのも良いです。ガレットが美味しい。世田美にはレストランもありますが敷居が高そうなのでわたしはまだ利用したことがありません…いつの日か!

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世田谷美術館は昨年のコロナ禍で、なにもない展示室を公開する「作品のない展示室」という企画をされていました。

足を運べなかったのが本当に悔やまれるのだけど、この企画展の存在が、美術館の在り方というか美術展の意義みたいなものを、様々考えさせられる機会になったと思う。

ちょっと《4分33秒》みたいな感じもあるよね、ないか。笑

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