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【7分で読める】映画の衣装デザイナーに衣装へのこだわりを聞いてみた

【トリッシュ・サマーヴィル:ハンガーゲーム】

この衣装は誰の衣装ですか?この衣装で何を表現されていたのですか?

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 これはスノー大統領の衣装なの。物語の後半で暴動が起こるでしょ。そのことを知っていたからその場面を演出できるような衣装にしたかったの。だから、一般人よりも強い力を持っているように見せるために豪華に誇張させたわ。
(岩崎:出た、誇張。のちの反逆で大統領からの墜落をより劇的にするための誇張なんですね)

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 これはカットネスがパーティで着ていたものよ。この衣装では彼女の異名である「炎の少女」とマネシカケス(物語に登場する架空の鳥の名前であり、後の最終章のサブタイトル)を意識したかったの。

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 だから、スカートの裾には、炎を模した刺繍をしたの。そして、肩には鳥の羽をモチーフにした装飾を着けたわ。

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(岩崎:確かにスカートに目を凝らすとうっすら炎のような模様が見えますね。神が宿ってます)

【キャサリン・マーティン:華麗なるギャツビー】

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 こちらの衣装は終盤でギャツビーがトムと対決するシーンで着ている衣装です。レオナルドがピンクのスーツを着たがっていたのかは分かりませんが、ギャツビーが秘めていた燃える愛情を表現する上では正しい選択だったと思います。

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 私が衣装をデザインする時に意識しているのは、「この衣装が監督と俳優の伝えたい物語の手助けとなっているかどうか」ですね。

【ダニエル・オーランディ:ウォルト・ディズニーの約束】

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 P.L.トラヴァースが初登場シーンで着ていた衣装は上質なツイードスーツとオーバーコートです。気候は晴れていたのでオーバーコートはいらないかもしれませんが、「周囲の人間から浮きだたせること」と「P・L・トラバースという厳格な女性がロスにやってきた」という演出上、必要だったのです。

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 対してウォルト・ディズニーがP・L・トラバースと初対面した時のスーツは60年代のスーツとなっております。

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(岩崎:ウォルト・ディズニーの約束の舞台が1961年なので60年代のスーツを作ったのでしょうね。そう聞くと簡単に聞こえますが、おそらくダニエルさんも「ウォルト・ディズニーの約束は『メリー・ポピンズ』映画化の交渉をする話だから年代は1961年だな」と調査をされていたのだと思います)
*この「調査」は衣装だけでなくセットや小道具にも関わってきます。以下のザ・ボーイズの記事でその重要性について書いております。

【衣装だけでなく小道具やセットについて学びたいなら】

 衣装部というのはある意味、心理学者のようでもあります。脚本に書かれている行動から「この人物はどこで買い物をするのか」「外見に対してどれだけの気を遣っているのか」などのことを想像して、作る必要があるのです。
 また教養も必要です。歴史を扱った映画を担当するのであれば、当時、何が起きていて登場人物はどのような時代で生きているのかも話さなければなりません。
 もし、映画の衣装デザインの世界に入りたいのであればなんでもいいのでとにかく仕事を受けてみましょう。私も衣装デザイナーを目指して、最初に受けた仕事はトラックの運転手でした。
(岩崎:確かに。その人の実力ももちろん大事ですが、コネクションを作ることや自分の身をその業界に置くことも大事ですね)

【マイケル・ウィルキンソン:アメリカンハッスル】

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 シドニー・プロッサーの最初の衣装では「ニューヨークに上京した青二才」という印象を醸し出します。

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しかし、アーヴィン・ローゼンフェルド(クリスチャン・ベール)と出会うことで高級な衣装を身にまとうようになります。まさに彼女が求めていた「成功者の世界」へと入った証拠でしょう。

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 私は当時の社会的な出来事を治めた写真を見て研究します。そして、衣装は見る者に大きな影響を与えます。どのような影響を与えるのかというのは、衣装デザイナーの永遠の課題ですね。
 しかし、衣装部だからといって衣装だけを作っていればいいというわけではありません。私、一人で衣装を作るわけではありませんから部下や仲間が気持ちよく仕事ができるように励ましたり、働く環境を整えたりする、といったことが大事なのです。
 映画ではカメラが近づけばどんなに小さなものでも見えます。ですので、自分が意図していないモノが映るのは避けなければなりません。
(岩崎:カメラにどう映るかが最終地点ですよね。でも、本当にこの方の言う通りです。私が経験した商業映画の現場でもモニターを監督だけじゃなく、衣装部やメイク部の方も見ていました。監督志望の私がモニターをガッツリ見ていたら「邪魔」と怒られたことがあります(笑)みなさんもお気をつけて!)
 あと、以下の写真はソーシャルネットワークの「衣装合わせ」の映像です。これは各登場人物の各シーンの衣装や見た目を確認します。ここで衣装香盤などが出来上がったりするので監督・演出部を目指す方にとっても非常に重要な工程ですね。

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【メリー・ゾフレス:インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌】

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 ルーウィン・デイヴィス(オスカー・アイザック)の衣装はコーデユロイ素材を使い、ズボンにも年期を入れました。靴もズボンにも全て年期を感じるようにしました。
(岩崎:これはヨゴシですね。前回の撮影でホームレスの衣装を用意していた時はやすりを使って服の表面をただれさせていました)

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 ローランド・ターナー(ジョン・グッドマン)はアフリカ系のジャズシンガーの心を持った人間に見せたかったの。

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(岩崎:調べてみたのですが、一番近いのはこれかなと思います。どちらかというとジョーカーの衣装みたいな感じがするのですが、僕だけですかね)

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 映画では、それぞれの個人にそれぞれの仕事があるの。衣装デザイナーは衣装を通じて物語を伝える、と言いますが視聴者の目を惹きすぎてもダメなのです。そういったところにも気を配りつつ衣装を作ることができれば、一つの成功と言えます。

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(岩崎:みなさん、仲良さそうですね!)

【感想】

 今回で3本目の記事となりましたが、映画の衣装というのは奥が深いですね。今までの人生は「服は着れればOK」の気持ちで選んできただけにかなりの衝撃でした。
 そんな時に国立新美術館でファッション展示会がされているという情報が入ってきたんですね。いつもだったら「NO」と即答の僕なのですが、今回だけは違いました。早速、明日、行ってきます(笑)

 さて、ファッションについてここまで書いてきましたが、もう残すところ2つくらいの記事になりそうです。「オスカー受賞者のお話」と「私が好きな映画:ドライブの衣装考察」の二本立てです。その次は、脚本について引き続きかいていこうと思います。

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