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【5分で読める】映画監督として知っておかなければならない照明の基礎知識

照明。

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舞台や結婚式、発表会であれば、その重要性を知っている人も多いかと思います。

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 しかし、映画においても照明が大切であることはあまり認知されておりません。しかし、映画に関わる人間であるならば照明が重要であることは認識しておきましょう。そもそもカメラには光があるからこそ画を映すことができるので極端な話、照明がなければカメラが役に立たなくなる、という状況もありえます。私がこれまで経験してきた商業映画の現場では照明部さんはセットの組み立てをする段階から照明のセッティングをされていましたし、次のシーンのために誰よりも遅く残り照明のセッティングをする、ということもされていました。そんな照明の映画における役割と演出についてこのシリーズではお話していきます。

 照明の関する第一回目の記事ということで照明の基礎となる「3ポイントライティング」について紹介をします。まず、映画で使う照明の種類には3つあります。
1.キーライト
2.フィルライト
3.バックライト
これは特定の照明器具やブランドの名前を指しているわけではなく、そのライトの役割を表した言葉です。例えるならエコバッグです。エコバッグには「この銘柄でなければエコバッグではない!」という厳格なルールはありません。自分が持っている手提げ袋などをスーパーに持っていき、レジ袋の代わりに使えばエコバッグです。役割に応じて名称が変わるという認識を持っておけば大丈夫です。

キーライト

 これはメインとなるライトであり、画面の中で最も強いライトのことを指します。以下の画像は左からキーライトがあたっています。こういった顔に影ができる照明は映画でもよく見かけます。

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 この照明を設置する時の注意点としては照明を目線の高さに置く、ということです。目線より下や上に照明を置くと顔に変な影を落としてしまい、画としておかしくなってしまいます。意図的にそれを狙うのであれば、問題ありません。こちらの画像は照明を下から、目線の高さ、上から当てた時の比較写真です。
左:下から
真ん中:目線の高さ
右:上から
 目線の高さの光は通常のシーンで使われるとして、「下から」「上から」の2種類の光が映画でどのようなシーンで使われているのかも解説いたします。

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①下から光を当てる場合
 これは言わずもがな。ホラー映画もしくは視聴者に恐怖感を与えたい時に使うライトですね。子どものころに懐中電灯を下から充てて友達を怖がらせたのが懐かしいです(笑)

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(フランケンシュタイン)

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(シャイニング)

②上から光を当てる場合
 これは夜を表現する時に使うライトです。ブラピの画像はクラブのシーンなのですが、上からの強烈なライトのおかげで彼がクラブにいることがこの画で分かります。

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そして、こちらは演出的な話になります。ジョージ・クルーニーの上から照明があたり、目の部分に影が落ちています。目をハッキリと見せないことによって彼の意図に謎を持たせたり、この場所に非合法的な雰囲気を持たせることができます。

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 以上がキーライトの解説です。次はフィルライトの解説です。

フィルライト

 フィルライトはキーライトでできた顔の影をなくすために使われます。モデルの撮影などにはよく使われています。以下の画像はキーライトの解説の時に用いた画像なのですが、フィルライトによって影がなくなり印象が全く違います。
(左からキーライト・右からフィルライトあり)

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(左からキーライト・右からフィルライトなし)

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 しかし、これだけだと演者が背景と同化してしまい、画がフラットな感じがしてしまいます。だから、立体感を持たせるために次のバックライトが重要になってきます。

バックライト

 これは文字通り演者の後ろから放たれる光です。場合によっては真後ろではなく斜め後ろからだったりするのですが、細かいことは大丈夫です。まず、注意点として演者の後ろにライトを配置するということはカメラが向いている方向にライトを設置するので照明機材が見えないように工夫をしなければなりません。技術的な話はこれくらいにして演出の話に行きましょう。
 バックライトの役割は演者(主体)を背景と切り離すことです。この切り離しによって演者に立体感が生まれます。以下の画像が最も分かりやすい例です。背景も演者も真っ黒ですが、バックライトにより、演者の縁に白い輪郭が見え、演者が浮き出ているように見えます。

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 このバックライトだけですと演者のシルエットを見せることになるので演者の姿を見せたくない、ミステリアスな印象を与えたい、という時などに有効です。以下のフレディの画像に関しては、最初はシルエットでしか登場しないからこそ彼の姿が露わになった時のインパクトを強烈に観客に植え付けることができます。

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他にも私が好きな映画のジャンル:ノワールと言われるものでも使われています。この画像ではディヒュ―ジョン(煙)が使われていますが、この煙が見えているのは照明のおかげです。この煙についてもまた別の記事でお話をしていきます。

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まとめと私が好きなカット

 いかがだったでしょうか?映画には3種類の照明の使い方がある、ということを知るだけでも映画の見方が変わってきます。私もこの記事を書きながら早速、自分が好きな映画:ドライブのカットを研究してみました。

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 オレンジのバックライト(街頭)と上手(右)からの青いキーライト(月光)で顔を照らしています。そして、フィルライトは使わず顔の後ろに影を作っています。これにより完璧な夜の演出ができています。他にもドライブの好きなカットがあるので機会があれば、研究したいです。

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