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私55歳 夫60歳の日常 夫うつになる⑥

抗うつ剤と抗不安薬と入眠剤を服用して1ヶ月と少しが経った。
今までは2回はトイレやら水を飲むやらで夜起きていたが、それがなくなったように見えたので眠れるようになったのかと思い聞いてみた。

「夜起きていないみたいだけど眠れたの?」
「トイレには行ってないけど布団の中でなんか起きてるよ。眠りが浅いっていうのかな」
「そうか、眠れるようになったと思ったんだけどそうじゃないのかな」
「うん、なんか寝ているような寝ていないような感じなんだ」
「そうか、そうなんだね」
「ドキドキしたり不安な感じはどう?」
「不安な感じは最近あんまりないよ」
「そうか、それは良かったね」

そんな会話をして数日後夫はクリニックに行き、不安感か減ってきたのは薬が効いてきたんでしょう、と言われたと私に告げた。

そうだと思う。

薬が不安感を減らしてくれたのはきっとそう。それと一緒に薬は夫の楽しい、嬉しいという気持ちも奪っていく感じがする。
陰性感情も陽性感情も人間がつけた便宜上のただの名前で人間の感情は一つなのだ。

不安感だけ減らすなんてできないよ!人間は機械じゃないんだから、「不安感だけ減らしましょう」なんて誤字を消しゴムで消すみたいになんて無理だよ。

夫はぼーっとすることが多くなり私の問いかけにも生返事になることが増えた。感情が薄らいでいくように見える。

悲しい

すごく悲しい

そして

仕方がない。今は仕方がない。


そんなこんなで今朝から私は元気がなかった。
「私、今日元気ないんだよね~」
「………。」

返事がなかった。「んー」もない。無言でスルー。初めての事だ。

悲しくて悲しくて泣きそうになった。そして腹が立ってきた。
んー、くらい言ってくれてもいいんじゃない?辛いのは分かるけど私だって辛いんだからね!テメェふざけんなよ!と思った。(うつの人に向かって何て事を。と後から振り返って思うのだけど"(-""-)")
そしてこうも思った。
こんな時でさえも私は分かってもらいたいと思っているんだな~、と。


自分を少し責めながら夫に自分が不機嫌なことをアピールした。

何やってんだか私………。



夫の靴を磨きに玄関に行く。
靴クリームを付けて左の靴の先端から磨いていく。紐をしっかり結びなおす。
今日一日夫をお守りください。無事に帰って来れますようにと心の中で言いながら左手を左の靴に右手を右の靴の中に入れた。


出勤まで少し時間があったらしく夫はベッドのふちに足をのせて椅子にもたれていた。
「時間が少しあるなら、マッサージするよ」と私は夫の手をとって甲をゆっくりゆっくりなでた。

温かい………。

夫の温かい手に触れていたらさっきの事がスッと溶けていった。
優しい気持ちに包まれた。

「ありがとう」と言う夫に
「うん、帰ってきたらまたマッサージするね」と言ったら夫は嬉しそうに笑って出勤した。

こちらの方こそありがとうだ。

私は何を見ていたのだろうか。
心を病んで何も出来ない夫?それを支える妻?

違う そうじゃない。

心は病んでる、でも何も出来なくない
私は夫を支ている、そして夫も私を支えている。

帰ってきたらありがとうと伝えよう。















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