入学式

入学式に黒いスーツを選んだわけ

 大学の入学式に黒いスーツばっかりで気持ち悪いとニュースなどで言われていた。うちの息子も今年大学に入学したので、入学式のスーツを息子と買いに行ったのだけど選んだのはやはり黒いスーツ。お店に並ぶスーツは当然真っ黒が一番多くて安いのだけれど、他の色や模様の入ったものもあって、全く選択肢がなかったわけでもなかった。だが、実際にスーツを買う段になって考えたのは、今ここで買ったスーツは入学式の後一体何回着られるのだろう? 成人式の着物みたいに数えるほどしか着られないのではないだろうか? ということだった。きっと入学式に着たら次に着るかもしれないのは来年の入学式にサークルの新入生勧誘ビラを「おめでとうございます」って言いながら配る係になった時だろうなぁと想像する。その係にならなければ成人式と就活か冠婚葬祭か。

私「どうせ入学式に着た後大学生活ではそんなに着る機会もないのだったら、一番安いテキトーなやつでいいんじゃない? それか、普段でもジャケットとして着られるカジュアルな感じのにするとか?」
息子「スーツにもなるジャケットを普段着るとは思えないから安いテキトーな方で」
私「それか、急な葬式にも着られる礼服にしちゃう? ネクタイ変えるだけで葬式も結婚式もいけちゃうよ」
息子「そうか、高校卒業したらそういうのも制服というわけにいかないんだ」
私「ガルパンのネクタイとかしたらいいじゃん? 裏にこっそりキャラが隠れてるやつ」
息子「高校の制服のネクタイでいいよ」

そうして葬式や結婚式に着て行ける黒いスーツに決まった。

私「形もオーソドックスで就活にも使えるのが良いと思うよ」
息子「就活の時にはそれ用のを買わなくていいの?」
私「お姉ちゃんの就活の時はスーツが必要ってなって一通り揃えたんだけど、最初の説明会くらいしか使わなかったのよ。インターンとかで毎日着ていくこともあるかもって洗い代えのまで用意したのに、面接もインターンも平服でおいでくださいって。逆に平服のセンスを問われるし、ずっと同じ服ってわけにもいかないから結構大変だった」
息子「何それ、メンドくさい」
私「だから、スーツで行かなきゃなんない場面はこれ一つで済ませちゃう。一人暮らしになったらそういう服装もいちいち自分で考えて自分で買わなきゃなんないけど、黒いのなら、葬式も結婚式も就活もとりあえず困らない。ただ夏だと夏用のが必要かもね〜」

そういう経緯で就活でも大丈夫なスーツを買った。他のご家庭でも同じようなやり取りがあったとすれば、まぁ、入学式の風景が就活の時の会社説明会と同じようになるのは当然かなと思う。目立たないようにするとかそういう気持ちはないが、葬式に黒以外の色んなスーツが良しとされないなら他の色にはならない。

 では、なぜ以前は色や形がバラエティに富んでいたのかが疑問になるのだが、洒落っ気のあるスーツを着ていくようなシチュエーションがあったのではないかと思う。例えば、昔の大学生は学生であってもドレスコードがあるようなお店(ディスコとかね)に行く機会があった。そういう、ちょっとちゃんとした格好しなければならない時に黒のスーツは昔の常識では葬式みたいで縁起悪いと言われてNGだった。そして、スーツの中だけカジュアルなポロシャツやセーターに変えて平服として着るような着まわしのファッションもありだったので、そういう時は黒じゃない方が都合が良かったからかもしれない。
 今の大学生にそんなシチュエーションはない。時間的にもお金の面でもそんな余裕はない。学費は高いし、親に金はないのでみんなバイトをギュウギュウに詰めて忙しいからだ。つまり、何回も袖を通さないような無駄な衣類に金をかけるわけにはいかないから、スーツは黒だけでいいってことにしたのだ。効率的で良いと思う。

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戸田幸子

仕事は編集、イラスト、ライティング、パンフレットなどのデザイン、夫とだ勝之の漫画の編集など。パソコン雑誌『MACLIFE』OB。 生まれは広島。立体視、だまし絵、発達障害、科学技術、カープ、食べ物、酒、野菜、漫画、アニメーションなどに興味があります。
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