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【レビュー】「エスコンフィールドが描くボールパークの未来」 2023.5.29 日本記者クラブ会見リポート

日本記者クラブで記者会見が始まる−

5月29日月曜日 日本生命セ・パ交流戦の開幕を翌日に控えた日に下記のような投稿がTwitterのタイムラインに流れてきた。

このコメントだけ切り取ると、何かの意思表示や大々的な発表があるのか、と思案したが、出先(散髪)から帰ってスッキリした後に改めて動画を視聴することに。

以下、自分の備忘録的に会見および動画で話されたことを記載します。
目次にはタイムスタンプ的に動画のLAPを記載したので、よくよく動画を見られる方は参考頂けると幸いです。
一部、動画での発言内容と記載内容でニュアンスが違う部分があるかもしれませんが、動画とテキスト双方で補完しつつご笑覧いただけますと幸いです。

ゲスト / Guest

前沢賢 / Ken Maezawa
ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長
三谷仁志 / Hitoshi Mitani
ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄副本部長

新球場建設プロジェクトを中心となって推進したでお二人が参加された会見でした。
ご参考までに、このエスコンフィールドHOKKAIDOの建設地決定までを記した物語『アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち』をご一読いただくと、この会見の言葉の裏にあるものの一端を読み取れると思います。

0:00〜冒頭

会見の司会は、日本記者クラブ企画委員で産経新聞の方が務められました。

1:43〜これまでの説明

前澤氏と三谷氏から
 ・新球場建設までの経緯
 ・観客数の実績や施設の稼働状況
 ・北海道ボールパークの今後の展望
について説明がされました。
※この辺りは動画でよくよくご確認いただいた方が良いと思います。

28:20〜記者クラブ会員からの質疑

はじめに、司会者からの質問

ファンを増やして観客動員を増やしていくのがプロ野球球団だが、1球団の挑戦としてボールパークを展開して野球以外の分野も広げてまちづくりをする、というモチベーションはどういうところにあるのか。

前澤氏より返答
人口減少局面で、野球・球場に近づいていただくことがポイントと考える。野球を見て帰るではなく、長時間滞在いただく、定住・関係人口を増やすまちづくりができないか、チャレンジしている状況。

海外の球場で参考になったところは?

三谷氏より返答
アメリカの球場はほとんど見てきたが、アメリカの今あるものを取り入れるというよりは、エッセンスを我々が取り入れるに値するのかを鑑みてミックスし、我々ならではの要素をどう出せるのかを考えた上で作った。
交流人口をどう増やすか。来場人数を増やすのではなく、人口に時間をかけた総和をどう増やしていくのかが一つのキーポイントと思っている。
関係人口という形で球場で時間を過ごす方、住む方などの総和を増やしてまちづくりにどう変換できるかを追い求めている。
その結果野球人口が増えるのかということにトライしている。

33:25〜個人会員より質問(本塁-バックネットの距離問題)

本塁-バックネットの距離の問題。第三者的には不透明な決着に見えた。
いろんな不備を金で解決したように見える。
日本で野球をする上では日本の野球規則に従うべきだが、金で解決したのは野球ファンに対しては失望するような話だと思うが、なぜそのような解決を取ったのか。

なお、上記の記事は今回の質問とは無関係だが、この件に関して納得がいかない方がいることは理解できる。マスコミの立場であれば追求したい内容だったはずだ。

34:58〜 前澤氏より返答
※回答時の様子ややりとり、ニュアンスなどは動画をご覧ください。

39:00〜個人会員より質問(新駅の建設状況)

新球場に隣接する新駅の建設状況はどうなっているのか。JRや自治体との交渉状況はどのようなものか、いつ頃新駅ができるめどか

40:10〜前澤氏より返答
新駅については資材費高騰もあり計画見直しの報道が出ていたので、本当に着工するのか不安に感じる方もいるに違いない。
また、あくまでも「請願駅」であり、球団としては北広島市に寄り添いながら引き続き折衝していき2027年の新駅開業を目指したい。
とのことでした。

41:08〜個人会員より質問(行楽地化から街化)

行楽地化が順調に進行する中で街化する上でのポイントは。
どのような人々が中心となってどのような生活を描いているか。

40:30〜前澤氏より回答
重要なのは学校・オフィス・病院、とのこと。
子育て世代が住みやすい・過ごしやすい街を目指すという返答があった.

実際に認定こども園が開園したこともあり、着実に若い世代が定住していく未来を描いているのだろう。

42:55〜 司会者より質問(新球場による事業側のインパクト)

自前の球場を持つことにより、事業に広がりを持つことができたと思うが、実際のところどうか。

43:10〜三谷氏より返答
※詳細は動画をご覧ください。

https://www.nipponham.co.jp/ir/library/events_materials/pdf/20210112_03.pdf

会見で表示された資料は、2021年1月に日本ハムのIR資料で発表されたものにも記載があり、自前で球場を持つことのインパクトが説明されていました。

46:35〜 北海道文化放送より質問(雪を生かした取り組み)

オフシーズン雪の寒さがある時期でボールパークができること、雪を生かした取り組みは検討しているのか。

47:40〜 三谷氏より返答
四季ではなく「五季」にわけて展開することを検討しているとのこと。
春、夏、秋、冬、そして厳冬期の五つ
※この五季という発想は、関東・関西でしか暮らしたことのない自分にとっては、体感したことのない区分だった。長く北海道で歩んできたからこその戦略なのだろう。

具体的には、冬から厳冬期はスノーパークとしての展開を検討しているとのこと。海外インバウンドにとっては雪体験に要望があり、Fビレッジがアジア圏から来場されたお客様に雪体験いただける場所になれば、という計画があるようです。

50:20〜 個人会員より質問(新たなパートナーや日本エスコン社との連携)

今後新たな提携先・パートナーはあるのか、日本エスコン社とはどのような取り組みを行なっていくのか。

50:56〜前澤氏より返答
具体名は挙げられないが、学校・大学とはいくつか話をしている。
日本エスコンとは10年以上の契約で、いろいろな事業権をバンドリングしている契約。日本エスコン社の事業をブーストできるような契約内容。
エスコンに対する独占権はないが一緒に行っていく可能性は十分にある。

この辺りは大型スポンサーシップをディールする上で念頭に置かないといけない部分だな、と改めて痛感。
単日の冠協賛やイベントスポンサーはもちろん、事業権や社会貢献活動などさまざまな要素をミックスして大型ディールとして提案する。
企業側が何のためにスポンサードするのか、目的を明示・目線合わせを行う。
そのためにクラブ側が活用できる権利・アクティベーションを用意する。

とてもクリエイティブでカロリーを要する部分であるからこそ、まずは自分の今の役割で貢献できることや視座の置き方を見つめ直したいと思った。

52:33〜 北海道新聞社より質問(高齢者向けの取り組み)

高齢者を呼び込むための方策はあるか?

53:00〜前澤氏より返答
日本エスコンと連携したシニアレジデンス アクティブシニア向け約280世帯をFビレッジの近隣に建設中。アクティブシニア同士が交流できるような拠点がボールパークのエリア内にできる、球場を活用できるのでは。
と考えているようです。

北海道新聞社より追加の質問
70代が少なくなっていることは、札幌ドームに来られていた方が少なくなったのでは?

54:45〜三谷氏より返答
全体で若い世代が増えていることから割合として70代の比率が少なくなったと見ている。それでも新球場を体験いただきたいという思いがあり、エスカレーターを多数設置していることや傾斜角をなるべく緩やかにすることで歩きやすい球場を目指している。ぜひ来場して歩きやすさや空間の広さを体験いただきたい。
70代の比率よりも絶対数としての人数を増やしていきたい。
とのことです。

高齢の方にとってアクセスは重要な問題。
前述の質問とも重なってきますが、新駅や駐車場の課題が少しでも速やかに解消され、年代問わず多くの方達がもっと訪れる球場になることを願うばかりです。

56:40〜 司会者より質問(勝敗の影響、グローバル戦略)

球団の成績に左右されない運営はどう考えているか。世界中86億を対象としたグローバルなマーケティングでは、どういったところをターゲットにしていくか

56:45〜 前澤氏より返答
来場者アンケートでも 一方的に負けた試合ではポイントが下がっている傾向はあるが、勝敗は言い訳にしたくない。
(負け試合のアンケートは、「そりゃそうだろうな・・・」と率直に思ってしまった。特に開幕直後は厳しい戦いが続いていたから、物申したくなる人も多かったはず・・・)

グローバルなマーケットに対しては、海外現地の旅行代理店とのアライアンスや海外のインフルエンサーとの連携の検討を進めている。
野球の親和性が高い韓国台湾はもちろん。タイ・シンガポール・インドや東南アジアを野球だけでなく北海道の資源を生かして全面的に獲得したい。
スノーパークもきっかけになると考えている。
とのこと。

余談だが、自分が今年韓国に行った際に韓国プロ野球に携わる方にもエスコンフィールドをお勧めしたが、きっと楽しんでいただけるに違いないと思っている。
日本の野球場での海外旅行者受け入れというモデルケースが、近い未来に訪れるだろう。

59:05〜 北海道新聞社より質問(来場者層について)

球場移転に伴い、来場者の中で道内でも札幌市外の方が増えているのか、札幌市以外の道内からの来場者層の傾向はどう変わっているか。

59:35〜 三谷氏より
従来プロ野球では試合の興行に注目した場合、交通アクセスは平日だと60分圏内で8割 休日は60〜90分圏内までで7〜8割が来場している。
中心点が札幌ドームからエスコンフィールド変わったことで、長沼町や石狩など従来札幌ドームでもアクセスが必ずしも良くなかった方々が増えている現象は確認できている。
とのこと。

この辺りは来場者の属性や消費行動などをデータに集約して事業側に反映させるマーケティングのサイクルを高速で回しているんだろうな、という推察が容易にできました。
(なかなか筆が進んでいないが、エスコンフィールドに行って感じた事業面の視点・気づきも別途noteに書きたいと思います)

1:01:20〜 メッセージの紹介

会見前にお二人が書いたメッセージが紹介されました。

前澤氏が書いたメッセージは「突破力」
出来るわけがないと言われ続けながらスタートした。
調和を重視するより、ある種「突破」して突き進めてきた。
今後は共生しながら独自色を出していく、やる前とやった後(開業後)の意味を込めた。
と話されました。

三谷氏は「共同創造によるまちづくり」
ファイターズや日本ハムが単独でやっているわけではない。道路を作っていただいた地元自治体や国交省、北海道開発局など様々な方達の協力があって成り立っている。
チームの中にいろんな方に入っていただく、1社単独でなくチームワークによって街づくりを進めていく。事業パートナーに想いを伝えて賛同して参画いただく。
新たなるイノベーションを産み、興味関心を持って人が集まってくるのでは、と考えて書いた。
と話されました。

お二方の信念や今後のボールパーク・そしてまちづくりに対する思いが窺えました。

まとめ

会見で表示した資料の一部は球団公式サイトでも閲覧できるようになっていました。開業から2ヶ月を経て色々な取り組み・改善がなされていることが会見を通して伝わってきました。

また、会見を受けて報道された内容(主にネット記事)では、当然ながら質問内容や会見の全容の要約、前後の内容は記載されていないので、情報の1次ソースを確かめることの大事さは改めて感じました。

特に、「我々ならではの要素」「関係人口」「五季」「事業権のバンドリング」この辺りは他のプロスポーツクラブでも生かせる内容だと感じました。
今すぐ取り組めることは明日から意識の中に取り入れていきたいです。

さいごに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ざっくりと内容をまとめるつもりが、文章が長くなってしまった。
そして書いているうちに、ふと私は思いました。

また、エスコンフィールドに行きたいな〜

・・・きっとこう思わせることが、今回の会見の最大の狙いだったかもしれない。まんまと術中にハマってしまった。汗

明日から日本生命セ・パ交流戦 2023が始まります。
セリーグのファンの皆様、この機会に普段訪れないパ・リーグの本拠地球場をぜひ楽しんでください!


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