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【読書記録】東山彰良さん『わたしはわたしで』

ああ、すごい話だった。
6話の短編集。
前半 3話、後半 3話がそれぞれうっすら繋がっている。

1話目「I love you Debby」
妻を亡くしたわたしと娘のデビーが台湾にいる叔父を訪れる物語。叔父はわたしの父が日本で消息を立ったあと、わたしの家族を経済的に支えてくれた恩人。
その叔父が抱える罪の気持ちとデビーの想いが重なる。
読み始め、英語と日本語と中国語が入り混じる文章にうっとなり、そこに挟まる登場人物の紹介で、頭の中がこんがらがり、ちょっとこれ、無理かもしれん、と本を閉じそうになった。でも、デビーと叔父がスマホをきっかけに打ち解けるシーンから急に話の世界に私の焦点が合った。

で、そこから一気読み、と行きたいところだったけど、3話目の「モップと洗剤」の幕切れに呆然として、でもこれは海外が舞台の物語だから、ここは日本だから大丈夫と心を落ち着かせないと、先を読めなかった。

半日読む気にならず、ほっといてから、4話目に入ると、舞台が日本に。
「わたしはわたしで」
新型コロナウイルスの蔓延で、失業したわたしが元同僚の犬の世話を頼まれる、という始まりに、虚しさとほのかな明るさを感じて、読み進める。いや、結果的にはけっこうひどい話だったけれども、疾走感が楽しかった。

で、5話、6話。

こちらも良い話とかでは全くないけど、でも、結局、私も同じように生きてるんだよな、と噛み締めるように読んだ。

どれも短いお話なのに、一筋縄でいかなくて、ややこしくて、難しくて、掴みきれずに逃したものの方が多くて悔しい、と感じる不思議な感覚の一冊だった。

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