2023年の5冊目『ネット興亡記 ①開拓者たち』

2023年の5冊目(2/5)

杉本貴司『ネット興亡記 ①開拓者たち』日経ビジネス人文庫(2022年)★★★

 楠木建氏と冨山和彦氏推薦!、という2巻本の帯の見て本屋で手に取った。1巻目を読み始めたところ、どんどん引き込まれていった。
 日本のインターネット事業の黎明期から本書ははじまる。サイバーエージェント、IIJ、iモード、ヤフー、楽天、アマゾン日本上陸、ライブドア創業・拡大期が描かれる。誰もがその名を知る、藤田晋、鈴木幸一、孫正義、三木谷浩史、堀江貴文といった創業者だけでなく、彼らと起業し新しい事業を一緒に作り上げた人物、それらの事業を取り巻く人物、そのやりとりが活き活きと描かれており、大変面白く、読めば読むほど元気が出てくる。
 ライブドア事件、村上ファンド、ヒルズ族、ネットバブルといった印象が強く、ネガティブに捉えがちだったが、成功も失敗も含めて、起業することの醍醐味、その後の経営の難しさや面白さが伝わってくる。90年代後半以降の日本のインターネット産業の歴史がよくわかる好著だと思う。
 本書に登場する人物には、2020年代のいまも活躍している方もいれば、表舞台から消えた人物もいる。この時代の開拓者以降、新たな起業家が出てきていないという事実がいまの日本を象徴しているような気がした。2巻目の「敗れざる者たち」がとても楽しみ。