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長い旅の前に「こんなことして意味あるのかな?」と思ったら。

 春からの海外駐在生活に向けて、少しずつ準備を進めている。

 行先は、東南アジアの国。少なくとも半年間は滞在する予定なので、必要なものを修理したり、買い足したり。(なぜ電化製品は同時期に故障するのだろう…)

 とりあえず、スキンケア用品は自分の肌に合うものがいいなと思い、持参することを決めた。旅先での肌トラブルは、萎えるもの。

 こうして、『どうしても必要なもの』を優先的に決めて、荷物をリストアップ。あとは現地調達で、なるようになるかなぁと。

 これから長い海外生活が始まる。仕事とはいえ、これは一種の「旅」だと思う。

 新しい世界を知り、自分を知ることのできる「旅」。いま与えられている機会を、どのような想いで過ごしていこうか。最近は、そんなことばかりを考えている。

 旅のやることリストを進めるなかで、旅の準備は、必要なモノを揃えるよりも、「旅の目的」を考えることのほうが、重要な準備なのではないかと気が付いた。


なぜ、目的を考えることが良いのか


 まず、なぜ目的を考えると良いのかというと、辛い時に目的が味方をしてくれるからだ。

 これについては、社会人1~3年目の時によく実感していた。当時は仕事が朝から晩まであり、1日12時間くらい職場にいた。肉体的にも精神的にもキツい状況。

 けれど「わたしがこの道を選んだのは、……」と、自分の原体験をよく振り返った。そうすると「よし、この後の仕事もがんばろうっ」と、スイッチを切り替えられたのだ。

 行動することを辞めたくなった時に「自分にはこの目的があるから」と、目的が踏ん張る力を与えてくれる。なので旅の前には、思い出すことでエネルギーが湧いてくるような目的を決めることが、お守りのような役割を担ってくれるのだと思う。

旅の目的を考えるときに大切なこと


 準備を進めるなかで、わたしは様々な「なぜ?」にぶつかった。「なぜ、旅をするのか」「なぜ、わたしは旅に出たいのか」「ほんとうに、今じゃないといけないのか」など。

 それは人から質問された言葉でもあるし、自分の中からフッと湧き上がってきた言葉でもある。「なんでなんだろうなー」。心の中で、自分に返事をする。

 すぐには結論を出さなかったし、出せなかった。頭に浮かんだ疑問を、口の中で飴をなめるように転がしていた。

 ふと、「わたしって…、いま、旅に出る目的に自信がないんだな」と思った。

 周りから「なぜ?」のシャワーをたくさん浴びて、その「なぜ?」を納得させられる答えが浮かんでこなかった。

 純粋な好奇心に付随する探究心が原動力であることは確かなのだけれど、本当にそれだけでいいのだろうかと考えてしまう。好奇心を満たすだけのために、お金と時間をかけていいのだろうかと。

 旅をするとき、こうした不安はつきものだ。未知の時間を過ごすのだから、予測がつかないことばかり。そこに自分の心と体力がどれだけ耐えられるのか。わからない。不安だ。

 だから、いまできることは、『旅の目的』に自信を持つことだと気づいた。それは、自分を信じることでもあると思う。

 自信は、不安を緩和してくれる緩衝材になってくれるのだ。

かっこ悪い目的でもいい


 正直、行動する理由が、全くカッコよくなくていい。例えば、「貧しい人の幸せのために」とか「世界の○○を変えたい」とか、必ずしもピースフルな目的でなくてもいいと思う。

 他者に軸を置く目的よりも、むしろ自分が本心から想う気持ちを目的にするほうが、断然自信が持てるのではないだろうか。

 人が行動するとき、必ず何かしらの理由がある。「やってみたい(行動してみたい)」と思う心の動きの奥には、どんな物語があったのか。それを振り返ることで、旅の目的に自信がもてるし、正直になれる気がする。

 正直になったところで、浮かんできた本音は「周りに認められたい」とか「すごいと言ってほしい」とか。もしかしたら、自分の奥底に仕舞っていた気持ちに気づいてしまうかもしれない。けれど、それでもいいんじゃないかと思う。

 自分で自分の承認欲求をたっぷり満たす時間にするのだと、割り切ってしまえばいい。

 旅をする前に、目的を準備する。そして、その目的に自信をもつためには、自分自身の気持ちに正直になることが必要だと、わたしは思う。

 旅の準備のために必要な時間の過ごし方は、どれだけ正直な気持ちでいられるか、なのかもしれない。

 正直でいることが、旅の行動の軸にもなりうるだろう。

道を太くする人


 今「当たり前だ」と思うことは全て、未知の世界にチャレンジして、道を開拓してきた人たちの存在のおかげだ。

 アメリカには、南北に延びるロングトレイルがある。なかでも有名な3大トレイルがあり、その総距離は約9,365㎞。1つのトレイルを踏破するために、約5か月はかかるそうだ。それを全て踏破した日本人ハイカーが、国内に数名いる。

 2月に開催されたトークイベントで、そのうちの一人、舟田さんのお話を聞く機会があった。3大トレイルを日本人で初めて踏破したハイカーで、今は農家をされているそうだ。

 ロングトレイルを歩き終えて何年も経った今、歩き旅について思うことを、このようにお話しされていた。

 「歩く人が、道を太くしていくのではないかと思います。」


 この言葉が、トークイベントを終えた今も、心地よく胸に残っている。

 ロングトレイルを歩くことは、直接的に世の中の何かを変えることではない。けれど、誰かが道を歩くことで、「そんな道があるんだ」とか「自分もやってみたい」など、共感する人が現れるかもしれない。

 自分が歩くことで、誰かが未来の道を拓きやすくなる。舟田さんの言葉を聞いて、もしかしたら、自分もそれを体現しているうちの一人なのかもしれないと思った。

 旅の目的を考える時、すごく迷うことがある。「こんなことをして、何になるんだろう」という想いが、思考を占領していくのだ。

 でも、それは仕方ないのかもしれないと思う。だって、歩いてきた人が少ない道に、わたしが興味を示してしまったのだから。

 舟田さんの言葉に勇気づけられ、自分の今までの選択に自信がもてた気がする。

 だからもし「こんなことして何になるんだろう」と考えてしまい、旅に出ること、チャレンジすることを躊躇してしまう人がいるならば、わたしはその方に伝えたい。

 もしかしたらあなたは、”その道”を太くする人なのかもしれない。と


夏の北海道・大雪山にて


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