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年齢と性欲をめぐる対話から見えたもの

🧠我々は記憶でセックスをする

常々思っていることを、性欲について見識のある方々に問う機会に恵まれた。

私の疑問はこうだ。
​─なぜ年齢に応じた性欲を備えないと非難されるのか?

世間では、中高年になっても性欲旺盛だったり、青年期に性行為に消極的だったりすると、「みっともない」「情けない」などと酷いことを言う風潮がある。
「年齢に応じて性欲が増減するのが健全」という定説のせいだ。

事実として年齢に応じて性的ホルモンの分泌量は変化するが、性欲はホルモンによってのみ湧くものでもない。そして、もはや人類の性欲はイコール「生殖したい・子孫を遺したい欲」ではない。

もともとは遺伝子の企みによってプログラムされたものだが、性行為(性交・自慰)はそのためだけに行われない。

今や目的は、生殖よりも報酬である。
娯楽や承認欲求、自己実現、またはビジネスなど、子孫繁栄以外の動機で行われる。
そのため性欲も、ホルモンの働きよりもむしろ、知識や記憶、環境によって呼び起こされるのだ。

例を挙げよう。
古代中国の王宮には、宦官(かんがん)という名で知られる去勢された役人が勤めていた。彼らは性欲を司る男性ホルモンを作る精巣を失ってなお、性行為を試みていた。
現代でも、勃起不全治療薬や潤滑剤を使用して、快適に楽しもうとする人々が多くいる。

年齢や身体機能に関係なく、性行為の報酬を知っており「またしたい」という動機さえあれば、性欲は尽きないのだ。


🤍差別される性愛

それなのに、「生殖適齢期に湧く異性への相応の衝動のみが正常な性欲」として、そこから外れた性愛を差別する風潮がある。

どうしてこうなったの❔

この疑問にともに向き合ってくれたのが、対話のホストを務めてくださったToshKuzさんと、性欲のことを尋ねてみたくてお誘いした二村ヒトシさんだ。

お二方との対話で得た知見は、
「政治的意図から、国家に都合の良い特定間のセックス以外を差別する風潮ができたのではないか」
というものだ。

資本主義国家は国力維持のために経済を循環させたい、そして労働人口確保のために、産めよ殖やせよ・家族は大事としたい。
建前なく表現すれば、国家は"金または子を産むパートナーシップ"を社会への貢献として推奨する。

そのために、生殖適齢期に性欲が乏しい(何基準?)と「性欲減退障害」として治療の対象とされたり、中高年は性欲どころか恋愛すら嫌悪されたり、子を持たないカップルや同性愛への偏見を煽ったりと、様々な差別が生じているのだ。

確かに、社会による性欲の規範は必要だ。
無知を利用した性的虐待、合意のない性暴力、無神経な性的発言は、根絶をめざすべきである。

しかしそれに当てはまらない、個々人が選ぶ性愛の形についてまで、資本主義にとって都合が良いか悪いかで為政者がジャッジを下すのは理不尽だ。
しかも、我々も前述の「差別された性愛」をなんとなく変、気持ち悪い、モラルに欠ける、と刷り込まれていないか。

つまり私の抱いた違和感は、個人の自由な性行為が、社会の要請によって狭められている現状から生じたのでは?という回答に、非常に納得した。


🚲時をかける性欲

自然は非常に合理的だ。
気分に影響されやすい人間は学ぶところが多い。淡々と目の前のことを無駄なく遂行する。栄養を摂り、休み、遊び、生殖を経て次世代へバトンを繋ぐ。

もしもAIに自然の生き物の営みを学ばせて人間社会を作らせたら、健康な若年層が遺伝子的に都合の良い異性と子作りをし、交尾を終えた個体は労働力として群れの活動の効率化に貢献し、……想像にかたくない。星新一氏が書いていないだろうか。
 
なんと現代の資本主義社会も、そういった機械的な「スタンダードセックス」を要請している。
社会を持たない生き物の真似をすることが社会的とは、果たしてどういうことだろうか。

農耕が始まり、城壁を築き、自然から少しずつ離れ、「所有」と「時間」という概念を獲得したことで、我々は動物には無い種の「寂しさ」を抱くようになった。

物にしろ、感情にしろ、所有したものはやがて去ることを経験で知っているのに、永遠にそこにあるとひととき錯覚してしまう。

そしてそれが去ることを想像したり、去ったりした時に寂しくなり、また得る目的のための手段として、喜ぶために何かをしたり、怒るために対象を探したりし、そして心身の充足のために性行為をしている。

寂しさの発露は十人十色だ。人それぞれに、したい愛し方とされたい愛され方がある。対象も形式も様々で、おしなべてそれらは無駄が多く、決して合理的ではない。

それが我々をこれほどまで多様にした。
この"社会的でない"性欲のおかげで、私は人間でいられる気がするのだ。


◻️この記事の元となった対話の内容は、音声SNSアプリ『Clubhouse』にて🔗アーカイブを聴取できます。(開始18分頃から本題に入ります)

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