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同人誌を語ってみると | その他の同人作品


ここで少し寄り道して、「ロリコン」作品などほかの作品についてのお話をしましょう。

当時は、多くの人たちは同人イコール「ロリコン」と思っていました。この先入観は今でも変わりません。これは1989年に逮捕された幼女殺人犯の「宮崎勤」事件の影響からでした。

ですが同人では決して「ロリコン」同人誌ばかりが頒布られていたわけでは
ありません。むしろ先に説明したように、「二次創作」と「ボーイズラブ」の方が圧倒的に多かったのです。

確かに「ロリコン」をメインにした同人誌はありました。それもかなりエグいものがあったのも事実です。ですが何度も言いますが、数は圧倒的に「パロディ(二次創作)」と「BL」作品の方が多かった。

むしろ商業出版である一般書籍での方が「ロリコン」は多かった印象が
強く
あります。


ではなぜ一般書籍の方が「ロリコン」作品が多かったのか──それは、この事件の前に、ロリコンブームのようなものがあったからです。「レモンピープル」というロリコン誌があったほどです。

ロリコン漫画ばかりを掲載している雑誌が創刊されるなどするだけではなく、少年や青年誌でもロリコン作品が掲載されるほどでした。これは「内山亜紀」さんというロリコン専門の漫画家さんなどがいて、それらのヒットもあって一種のブームのようになっていたからです。いわゆるロリコン漫画家というものが台頭してきていた時期でもありました。

ですから個人的な印象でいえば、同人誌ではとりたてて「ロリコン作品」が
多かったという印象はありません。

むしろ一定数はあるものの増えたり減ったりもしなかったジャンルという記憶があります。ただ確実に人気のあるジャンルではありましたし、先の「宮崎勤」事件で一番ショックを受けていたのは同人関係者も含めた同人ファン全般でもありました。この事件については後でもう一度、触れたいと思います。


同人は世間の動きとは関係なく個性を重んじていると勘違いされています
が、それは大きな間違いです。むしろ世の中の動きに敏感に反応し動くところでもあって、だから人気アニメに多くのファンとサークルが追随します。

好きなアニメを本放送が終わってもずっと追いかけ続けているサークルは皆無ではないですが、非常に少ないですね。また、人気のなかったアニメやアニメ化されていない漫画の二次創作をしているサークルもまったくと言って良いほど見たことがありません。それはファンも同じで新しいアニメに次から次へと乗り換えるように移動します。

例えば今は「鉄道」ブームですが、こういうブームを追いかけるように
多くのオタクなファンが追随します。ですから「ロリコン」作品もブームであった時は多かったと思います。とにかくブームに動くのが同人でもありました。

例えロリコン作品であったとしてもアニメの二次創作でないと多くは作られ
たことがなくて、それくらいオリジナル作品は嫌われてしまう傾向がありました。18禁作品に関しては僅かですがオリジナルがあったと記憶しています。

くり返しになりますがまだ誰も見たこともないような作品を探しているのではなく、ヒットした作品の二次創作を追いかけているだけの人たちでもあったのです。

当時は「セーラームーン」が大ヒットしていましたので、同人でもメガ級
のキラーコンテンツでした。女性にも人気があって、「セーラームーン」関係の同人誌を作れば無条件に売れてしまうほどの人気がありました。同人では時々、男女ともに人気のある作品が現れます。

もし、今のようにアニメに多くの幼女キャラが登場していたならば二次創作として作られていたと思います。そういう意味では、結果として今の二次創作の方がロリコン作品になってしまいやすいとも言えるのです。

いろいろなアニメはありますがロボットやメカものよりも、「美少女」アニメは圧倒的に強かった。例え「ガンダム」の二次創作でもモビルスーツを描くのではなく、キャラクターを描くのが殆どです。そういう意味では今の深夜アニメは同人作品ネタの宝庫と言えます。

また「幼い」「弱い」「可愛い」が正義であり全てであるのは女性の方で「ショタコン」と呼ばれる作品も女性サークルが一手に制作していましたし
人気がありました。

先入観なしで見る人がいたならば、ロリコン傾向は女性の方が強いと感じる
かもしれません。「ショタ」同人誌は「BL」に次いで人気がありましたし、基本的に女性サークルの方が幼いものが好きでした。


さきほど「鉄道」に関しても触れましたが、昔は「ミリタリー」と「鉄道」は数少ないのですが一定数のサークルは存在しました。これはもう増えも減りもしないジャンルでした。今は「鉄道」ブームもありますから増えてはいると思いますが、即売会へは脚を運んでいないので実際のところは分かりません。

ただ、アニメ「ガールズ&パンツアー」がヒットしましたので、ある程度の戦車関係の「ミリタリー」同人誌は増えたかも知れません。それは美少女キャラクターが沢山登場してくるからです。「鉄道ブーム」の場合は美少女キャラクターが関係してきませんので、同人での人気はどうなのかと気になるところでもあります。

後はいろいろな「ファンジン(ファン誌)」で、これもあまり減りも増えも
しないサークル数だったと思います。今はその頃とは事情が違いすぎますので、おそらくいろいろなタイプのサークルがあると思います。


昔は同人グッズを扱うサークルは女性サークル中心にある程度の数が存在しましたが、今は缶バッジ程度ではおさまっていなくて抱き枕やカーテンといったものまで制作してくれます。同人誌とちがって大きな変化がありますので、またゲームも本格的なものですしDVDやCDといった作品も多く作られていますので、今や即売会イコール同人誌だけではなくなっています。

こういう文章を書いていても、今の同人作品の制作体制の充実ぶりには昔を知っているだけに目を見張るものがあります。殆どプロと同じ仕事ができますが、だからといって同人サークルがそういうことをしているかというと違うと思います。

おそらくできる範囲は限られてくるだろうと思いますが、同人グッズ製作のサークルは昔と比べて格段に増えていると思います。もともと紙媒体の同人作品しか作れなかったから同人誌を作っていただけであって、多くのサークルが同人誌を作りたがっていたのではありません。

それは同人イベントに参加したいがために同人作品を制作しているサークル
の方が実際は多い
からです。なにかを表現したいや創作活動をしたいという当たり前のサークルはむしろ少ないのが同人の世界でした。これが最初の頃、我々には分からなかったのです。

グッズ関係は同人誌やゲームといった作品制作とくべて創作という点では労力が格段にかからないのでとりつきやすい。ただ欠点は製本などと比べると発注にお金がかかること。資金に余裕があるサークルならば作れる範囲が広がりますが、余裕がないサークルには限界があります。ただ確実に我々の時代と違って増えていると思います。


また、我々が活動をやめる頃にはゲーム関係のサークルも出てきました。
もっとも今はなくなってしまいましたが、全てフロッピーディスクを使った
ゲームです。ゲームとしては初歩的なものしか作れなかった時代です。

今は我々の頃と違って、ゲーム制作の質そのものが違います。我々がサークル活動を終えた後から急速にゲーム制作をするサークルが現れてきましが、今でもそうですがゲーム制作は半端ない労力を必要としますので制作できる範囲はグッズと違って限られています。

今は「コミケ」も商業参加が認められていますし、最近は一般的にも「コミケ」の知名度が浸透していますのでプロのミュージシャンや声優さんも自ら参加しています。ゲームの世界も同じで個人的に参加している企業もありますので、同人サークルと企業サークルの区別はつきにくいようになっています。

出来の良いゲームはだいたいが企業サークルで、同人サークルが制作する
ゲームはやはり限界があります。それを分からず皆一緒に考えている人が殆どで、時々、同じものができると思っていてそれを指摘されて困ることがあります。いちいち制作過程まで説明していては時間がかかり過ぎるし面倒で仕方ありません。

ですから動画を使っているゲームなど出来の良いゲームは、個人のサークル
ではなく企業サークルであることの方が多いとおぼえておいてほしいですね。

こういうゲームの世界でも同人は18禁ゲームが中心で、当時知り合った方々が後にエロゲーですがゲーム会社を起こされたりもしています。オリジナルゲームは独自のゲームイベントが作られています。


また、同人誌で人気を集めてきたのがゲームキャラクターの存在です。ゲームそのものはPCの問題や労力のかかり方などできる範囲は限られてきます。
ですがゲームなどのキャラターに人気が集まってきて、ゲームキャラクターを使った同人誌が多く作られています。

これらは我々が活動をやめた頃から始まりました。同人誌はアニメの二次創作だけではなくなっていて、ゲームキャラクターの二次創作などが増えてきて今では大きなシェアを占めています。ボーカロイドの「初音ミク」なども二次創作が沢山作られていました。

そしてくり返しになりますが、昔と大きく違うのは同人作品のネタである
アニメの作品数の多さです。昔は一年を通して放送されるアニメが当たり前で、放送数もそんなに多くはありませんでした。今のように深夜枠でそれも1クールだけのアニメ作品が一日に何作も放映されているということはなかったからです。

あまりに多いアニメ作品とゲームなどのキャラクターの多さに、今のサークルは的を絞れないのではないかと思います。またその人気作品の入れ替わりのサイクルの早さも昔とは違っていると思います。


そんなアニメ作品の中にヒットした「ガールズ&パンツァー」はありまが、
この作品を見たときに同人でオリジナルとして作っておきたかった作品として見ていました。

同人作家の視点で見た場合、良いところをついてきたなと思うことが多く
て感心するところが多々あるアニメ作品でした。というのも女の子と戦車という組み合わせは、サークル仲間との雑談で何度も出ていたのです。

士郎正宗さん原作の作品に「ドミニオン」という近未来の戦車警察というOVAアニメがあったのですが、それらも頭の隅にずっとあってそれも含め
て話していたのですが、我々にもう少し「戦車道」というような発想があればもしかすれば作っていたかも知れず、試してみたいタイプの作品でもありました。

果たして当時の同人誌ファンがどのように反応したのか、もし作って
いたらと考えると興味が出てきます。作品展開という点でもとても広がるものでもあるからです。今の深夜枠のアニメを見ると、時々そんなことを考えてしまいます。


男性サークルはいろいろなタイプの作品を作りたがらない傾向があり、女性サークルはとにかくいろいろなものに手を出す傾向がありました。今は違いますが、女性サークルは音楽テープでの頒布で声優さん収録による音声作品を作ったサークルもありました。

ごく一部ですがそういう女性サークルもありましたし、18禁ではないですが有名な声優さんが収録されている作品でした。それでも一応、「BL」作品でしたね。当時はそこまで「BL」作品にこだわる理由がわかりませんでした。

個人的にはこういう方向もあるだろうと考えていて、サークル活動を終了する前には付き合いも広くなっていて声優さんとコンタクトできるところに至っていたのですが、昔は今のようにレンタルスタジオなどの確保が難しかったりで実現には至りませんでした。

今ではわりとお手軽にできるようになっていて、設備も含めてその充実ぶり
は昔と比べものになりません。昔にこれだけの設備があればと振り返ることしきりです。

同人誌そのものの質は個人のスキルですから作品そのもののレベルはそれほど違わないと思います。ですがグッズやゲームなども含めた広い意味での同人作品となると、昔と今とでは質も選択できる範囲も違い過ぎるほど違います。


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