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手放して、手に入れる

「30歳までに結婚する!」

そんな決意もむなしく、30歳の誕生日1週前に当時の彼氏から別れを告げられた。お先真っ暗というか、真っ白になったのを覚えている。

涙も枯れ果て、友人に別れの報告をするとひと言。

「それは良かった!」

え?今、なんと?

あんぐりした表情だったのだろう。友人は、彼といる私が全然、幸せそうに見えなかったことをぶっちゃけてくれた。そしてもうひとつ。

「彼と付き合ったままだと、他の人と出会うチャンスもなくなるよね!」

確かに。私の性格上、浮気なんて器用かつ面倒くさいことはできない。

「きっと、いい人に出会えるから。大丈夫だよ」

明るく言ってくれた彼女に心から感謝したのは、夫との結婚が決まったとき。数年前に彼女が言った「良かった!」の言葉がストンと消化された。

✳︎

恋愛と、ライターの仕事って似ているなぁと思う。

ちょうど1年前、ライター3年目だった私は、2社とメインで取引していた。1社はSEOがメインの制作会社で、大手の出版社などから依頼を受けた記事を書く。大手だけあって、求められるものも多い。どんどんキーワードもニッチになっていき、正直なところ書いていてもあまり楽しくなかった。

もう1社はインタビュー記事のライティング+編集。メディアを運営している会社の直依頼で、自分の考えや体験もどんどん入れてください!と言われる。社員さんの人柄がよく、対応も誠実。提案を批判ではなく、前向きに受け止めてくれる。

当時の私が"楽しくて、やり甲斐を感じる"のは、圧倒的に後者の仕事だった。そこで、制作会社の受注を校正・校閲にしぼり、ライティングの仕事はもう1社に全振りしたのだ。

結果どうなったか。

なんと1周まわって、専門分野の「教育」の仕事をするようになった。全振りした会社は業績が好調で、メディアをどんどん拡大している。婚活から地方創生、転職、育児、そしてワンランク上の教育を望む子育て家庭をターゲットにした企画がスタートしたのだ。

「学校インタビューの記事、やってみませんか?」と声をかけられたとき、迷わず「やらせてください!」と返事。数か月で20本ほどの記事を書いたけれど、楽しくて楽しくて仕方がない。

✳︎

あのとき、ズルズルと両方をキープしていたら?この仕事は回ってこなかったかもしれない。なんだか心がパッとしないときは「手放す」勇気も必要。手放したって、一生懸命やっていれば新たな出会いが訪れる。

もうひとつ。「せっかくやから、教育ではない道に触れたい」と、あらゆるジャンルに挑戦してきた私。全然関係のない婚活・恋愛を選んだのに(楽しいから)、めぐりめぐって教育に戻ってきた。そして、やはり楽しい。子どもたちのエピソードを聞くと、こちらも元気になる。

恋愛迷子になっていたころ、母がかけてくれた「落ち着くとこに落ち着くから」の言葉。

単なる"なぐさめ"ではなかったのかも。

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