夢をかなえるスマートフォン㊷9時限目の4〜夢をかなえる

「でも夢は語るために在るんじゃない、夢はかなえるために、実現するためにあるものだ。」
夢をかなえるためには、君にできないことはしなくていい。
自分が経験した、自分にできることをやってきなさい。自分がどういう人間なのか、自分の強みは何なのか分かってこそ、自分にできることが分かる。自分にできることが何なのかわかっているからこそ、前に進めるんだ。
自分にできないことはしなくていいんだ。最後まで、自分にできることを貫いてがんばってきてごらん。
「結果はあとでついてくるもんだよ。」
自分にできることをする。
この一年スマートフォンとともに、自分を高めてきた。
よし、また大きな夢に向かって、一歩踏み出そう。
「与志宮さん!」
華苗が急に大声で呼んだので、与志宮はびっくりしてしまった。
「いきなりどうしたの?」
「すみません、ただ与志宮さんの言葉を録画して、個別面接の直前で聞きたいなって思って」
「ははは。私の言葉かい?もちろん、いいよ。はい、じゃあ一度しか言わないので、録画準備~」
「あっ、はいっっっ」
華苗は急いでスマートフォンを取り出し、録画アプリを起ち上げた。
「神は乗り越えられない試練をお与えにならない、面接頑張って!」
与志宮と話して不安が解消した華苗は、早速内定書を簡単に作って、自分が働いている姿をアリアリと想像してみた。不安にさいまれていた昨日とは、打って変わって今はワクワクしている。与志宮のアドバイスで言われた「恐怖と希望」の話はこのことかと、華苗は実感したのである。
自分の資源を活かしたエピソードを彷彿させるような写真を掻き集めてスマートフォンに入れて、直前に聞くための言葉を真一郎にもお願いした。早苗は、忙しそうだったので頼めないままでいた。

 運命の個別面接の日が来た。
 準備をきちんとしてきたためか、あまり緊張は感じない。
珍しく出かける前に早苗が部屋に入ってきた。しばらく真面目な話をロクにしていなかった2人。きまずいムードだったが、早苗が言った。
「華苗、頑張ってきたんじゃん。偉いよ」
「最近、あまり話してなかったけど、早苗はどうするの?モデルつづけるの?」
グループ面接の時ののぞみの言葉が思い出された。
早苗は、モデルをはじめてから生活が変わり始めるのをどうしようもできなかったという。華苗は、自分がきっかけを作ってしまったことが原因だと、早苗に謝った。
しかし、早苗は、自分が無計画だから、問題があるとすれば自分のせいだ、と言う。それでも早苗はなりゆきだったが、モデルの仕事も楽しいよ、と微笑んだ。
 華苗は思い出したように、早苗に録画のメッセージを頼んだ。早苗も喜んで協力してくれた。その気持ちがとても嬉しかった。自分のすべてが、このスマートフォンに凝縮されてるような気がした。自然とこのスマートフォンに絶大な信頼感を寄せていた。間違いなくスマートフォンは自分の人生のパートナーだ。
『絶対大丈夫。』と自信を持って、個別面接に臨むことができそうだ。
途中、Cafeブルーマウンテンをのぞいてみたが、与志宮はいなかった。
華苗は個別面接に臨む。華苗は精一杯のことができたと実感。
結果合格。
個別面接が終わり、次は役員面接。
華苗は、最後まで残って、個別面接にも顔を合わせた1人の青年と、一緒に合格できたらいいなと思うようになった。役員面接はよほどポカをやらない限り大丈夫だと言われているようだが、気を抜くことは出来ない。
最後の最後で緊張してきた華苗に、その彼はそっと缶コーヒーを差し出してきた。
「頑張ろうぜ」
華苗は、その笑顔に耳まで熱くなるのを感じた。その一瞬、そこが面接会場であることを忘れてしまった。
「夢咲華苗さん、どうぞ!」

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