夢をかなえるスマートフォン㊴9時限目の1〜面接

2月末、華苗は南青山出版の2次面接を迎えた。このグループ面接でのぞみと隣同士になった。その時の、のぞみはライバル心むき出しだった。のぞみから大学での早苗の評判が悪くなっているという噂を聞かされた。
「モデル始めて、調子にのってるんじゃないかとか、教授に色目つかってるとか言う人もいるのよ。早苗ってさ、お高くとまってるから、
いえあたしは、そうは思わないけどね。」
のぞみがわざと華苗を動揺させようとして言ったのかどうかはわからないが、華苗は本番直前にかなり動揺してしまった。直前に動揺したせいか、本来の実力がまったく発揮できず面接が終わってしまった。
面接が終わった瞬間はひどく憂鬱だったが、帰り道で「南青山出版が一番いいけど、自分のできることはやったつもりだし、前向きに考えよう」と思って、南青山出版に落ちてもあまり気にしないよう自分を励ました。
結果は、無事2次面接は合格だった。落ちたと思っただけにとても嬉しかった。
しかし、グループ面接でグラついたことは不安要因だ。不安に押しつぶされそうになり、昔の自分に戻ってしまうのではないかと、恐怖に苛まれてしまった。
今までの自分がフラッシュバックしてきたのだ。次の個別面接を直前に控えているため、与志宮に相談してみた。

いつも通りの表参道駅。
いつも通りの南青山骨董通り。
いつも通りのCafeブルーマウンテン。
のはずだった。
まわりの景色は変わってないはずだが、華苗の心境が変わっているのか、
華苗の目に移る景色は、最初に与志宮に会ったときに比べると、明確ではっきりしていた。
南青山女学院に通っていた華苗ではあったが、街自体は一年前はもっとぼんやりしていたというか、透明感を帯びていたのかもしれない。
憧れに似たものだったのか。今は、すべてがくっきりしている。南青山という街並みに染まってきたというべきだか。
その一角のカフェにいつも通り与志宮が座っていた。
「やあ、まずは二次面接合格おめでとう!」
「おかげさまで、ホントギリギリでしたよ~、ダメかと思っちゃいましたから〜」
「メッセージ読んだけど、大変だったみたいだね。」
「そうなんですよ~、動揺しちゃって、自分より偉いひとがいると緊張しちゃって」
「まあ無事通って良かったよ。いよいよ個別面接だね。緻密に計画してきたし、変わっていく状況の中で軌道修正をしてきたんだから、あとはその培ってきた君の実力を存分に発揮するだけだ。
出会ったころからの君と比べてみれば、驚くほど前に進んでいるし成長してるよ。」
「でもなんか、いよいよの個別面接が怖くなってしまって」
「じゃあ」
個別面接までにやることは、ただ一つだね。自分に自信をもつことだ。いざ個別面接となって、緊張して自分をアピールできなくて、今までの努力が水の泡になるのは悔しいでしょ?
なんで緊張するかって、それは落とされるかもしれないっていう恐怖心から来るものだよ。
個別面接をパスするのには、みなこの恐怖を乗り越えなければいけない。いいかい?恐怖は存在しないものだけど、誰だって恐怖は感じるものなんだ。大事なのは、その恐怖に対してどのように対処するかなんだ。そのためには、恐怖がどういうものであるかを知ることだね。
「君が何を恐れているか分かる?」
「面接に落ちるっていうことですか?」
「違うね~。」
これは前にも言ったことあると思うけど、君が恐れているのは、恐怖を抱いているものそれ自体ではなく、恐怖心だ。要は、落とされるかもって考えていることが怖いんだよ。
まだ起きてもいないことに恐れを抱いている。つまり、その起こったことに恐れを抱いているわけじゃない。この恐怖心を克服した者のみが、勝利を手にすることができる。
「どうやって克服する?」
「え~っと、考え方を変えるってことですか?」

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