夢をかなえるスマートフォン⑮3時限目の4〜妹の早苗に相談

「得意なことって、ダンス部で賞、取ったじゃない。あれ、華苗が取ったみたいなもんだよ。」
「そうそう、アレびっくりしたよね 。
ダンスの点数はメッチャ低かったのに、賞もらっちゃったんだよね 。」
友絵は更に笑いながら言った。
もらった賞とは、「音楽がよかったで賞」という、ちょっとふざけた名前の、特別にその場で作られた賞だった。
そうだった、思い出した。
あのとき、賞をもらえたのは個人的にすごく嬉しかったが、ほかの部員の手前、あまり喜ぶことができず、記憶を封印したのだった。
「ああいう賞をもらえたってことは、華苗の感性がよかったってことだよ。誇っていいんだよ。」
さやかの言葉に、華苗の目の周りが熱くなった。
「で、華苗のいいトコさがしだっけ?やろうよ!今、みんなで!」
いいトコ探しじゃなくて、本当は得意なコト探しなんだけどと思いながらも、さやかの気持ちが嬉しかった。
いいトコを探してもらっているうちに、得意なコト、褒めるべきコトも少しずつでてくるようになった。
「華苗って、いっつもカバンの中に、本が入ってたよね。」
「知ってる 。ひどい時なんて、十冊も入ってたこと、あるよね。カバンが重い重いっていうから、見てみたらさぁ 、文庫本十冊もでてきたもん。笑ったよね 。」
2人とも、そんなこと覚えていてくれたんだ。
「ちょっと待って、それっていいコト?」
「いいコトだよ。」
さやかはまじめくさって言った。
「ちなみにアルバイトしたのは、カフェか併設されてる本屋さんだっけ?」
「え?なんで知ってるの?」
さやかと友絵は顔を見合わせてから、吹き出した。
「キャ~ハハハハあったりぃ~!
そうじゃないかって、思っただけよ。やっぱりそうだったんだ。華苗って、わかりやすい 。」
2人はヒーヒー笑って、なかなか止まりそうもない。
3年も会ってない友人達に言い当てられて、隠れるところがなくなった気分だ。
友絵が言った。
「本、好きなんだから、本屋さんになりなよ。」
 
「おかえり。遅かったね。」
珍しく、早苗が心配していたようだ。
「どうだった?プチ同窓会」
「みんな、変わってなかったよ。あ~変わってたというべきかな?
私以外、目標しっかり持っていて、びっくりだった。」
「ふ~ん、で、賞のこと、わかった?」
「わかった。」
早苗は次を待っているようだった。気が進まなかったが
「音楽はよかったで賞だって」と言った。
一瞬間があって、早苗が吹き出す音が聞こえた。今日たくさん聞かされたヒーヒー笑いを、早苗からも聞かされた。
「そんなに笑わなくても」
華苗は唇をとがらせた。
早苗はまだ笑いがおさまらず、お腹をおさえながら言った。
「忘れているわけだよね 、アッハッハッハッハ」
 友人達に見つけてもらったいいトコ探しの中で、自分の強みになることを抜き出して、どんどんスマートフォンに書き込んでいった。
操作はやっているうちに、少しずつ楽にできるようになっていった。それを嬉しく思いながら、とにかくたくさん、書き込んでおいて、与志宮に見せることにしよう。
 
 「昔の友達に会ったのは、いいことだね。行動すると、いろいろ前に進むよ。」
「はい、忘れてたことや友達がこんなふうに自分のこと思っていてくれたんだって、いろいろわかりました。」
与志宮は華苗がスマートフォンのメモに書き込んだ、自分の強みのリストを読んでいた。
「じゃあ、次はね、これをもとにして自分の資源分析をしよう。」
「資源ですか?」
資源といえば、石油とか石炭とかを思い浮かべてしまう。
「君の持っている資源だよ。」
人脈や特技・才能・嗜好や持ち物などが、それにあたるね。
君のために喜んで動いてくれる人間、君のために何かしてくれる人は大切な人脈だよね。
そして君自身が好きなものや好きなこと、やりたいと思う気持ちの持てること、君ができること、特別な技能や才能、君が持っている物、使える物。
「それらが君の資源となる。」
華苗はじっと考えているようだったが、やがて晴れ晴れとした表情で与志宮を見返した。
「そうか、そういうことなんですね。私の資源か。」
「よし、では君の資源分析を始めよう。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?