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度を越したやさしさは相手を不幸にする

友人関係ってむずかしいな、と思う。とくに障害をもつものにとっては。

私は脳の病気だが、その症状は精神疾患に部類されるので薬をもらうために通うのも精神科、入院するのも精神科である。

以前、同じ病院に入院していた年の近い女の子がいた。その子も精神疾患と、少しだけ知的障害があった。
元気で純粋な子で、退院してからも手紙のやりとりをしたり、インスタでつながっていたりとゆるくやりとりをしていたのだが、一度退院したら再入院することはなかった私と比べ、その子は何度も入院を繰り返していた。

たびたび新しいグループホームに退院するのだが、寂しくなると暴言を吐いたりするためそこで人間トラブルを起こしてしまい、追い出されて入院。そんなことを繰り返していた。

その子が入院するたび、もっと気づかってやっていればその子は入院しなかったのではないか、と自分を責める気持ちもあった。

それから1年以上経ち、やっとまた新しいグループホームに退院したというので、電話をしたり遊びに出かけたりするようにした。

しかし、その子はB型作業所で週一回仕事をするだけで他の日は1日中一人でホームで過ごしており、デイケアにもめんどくさいといって行かない。

他の友達はみんな仕事に行っていて、平日の日中はいない。
わたしはフリーランスで家にいるため、やはり私のところに連絡が来がち。

遠慮して、「電話しよう」とはいってこないものの。
「おはよう」「おつかれさま」「しごと?」と不定期にLINEが入る。
こちらが気を遣って、電話をするの?というと
とても寂しくて調子を崩していたという。
もしわたしが電話しようと言ってなかったらこの子はどうしていたのだろう?とまた不安になる。

自分から声を大にしてさみしい!かまって!とも言えないし、ノータッチでいることもできないのだ。

人生に楽しみや目標がないと絶望していくから、
遊ぶ約束を作ろうね、と1か月先に映画を見に行く約束はしているものの、それだけでは励ませないようで、毎日具合を悪そうにしている。

そんなに具合がわるいのに、働く日を増やそうかな?と言っており、ナースに止められている。

わたしがその子だったら、まずはデイケアに通って寂しさを紛らわしつつ体力をつけるのだが、それもしない。

このままではまた体調を崩して入院するのではないか、とはたからみても思うが、それは本人も感じているようで、「また入院になったらどうしよう」という不安が襲ってきているらしい。

お金も足りない。障害年金を受給しているものの、社協から渡されるお金は週3000円だそうで、朝・夕しか給食がでないグループホームでお昼代400円以内で過ごさないといけない上に余裕はない。

わかっているので遊びに行ったときはゲームセンター代、マック代、ガチャガチャ代、カラオケ代すべてわたしがおごった。肌が荒れるというが、化粧水つけてる?というとお金がないので化粧水も洗顔も持っていないという。(!)無印良品でオールインワンジェルと洗顔フォームを買ってプレゼントした。キャラクターグッズが好きな子で、欲しいものがあるというのでアニメイトに一緒に行って、いろいろ欲しかったようだが一つだけ、と思いちいかわのスケジュール手帳も買ってあげた。

その日の私の出費は12000円ほどになったが、喜んでくれるなら、と思った。

ところが、そんなことを1日したところでその子が強くなるわけではない。過剰に優しくされたことにより逆に寂しさが増してしまい、毎日電話していないと体調を崩すし、ただ私への依存性が増しただけだった。なんということだ。

人にやさしくするというのはある程度距離感を保たないと結局人を不幸にする。ほんとうに人づきあいは難しい。

訪問看護ステーションにこの子との距離感のことを相談してみると、「月一回遊びに行くだけでもだいぶ仲良しですから、そうやって目標を作ってあげてることはだいぶその子に貢献していますし、それ以上のことはする必要ないですよ」と言っていただいた。たしかに、人によっては年に一回会うかどうかだ。3ヶ月に一回遊んだとしても頻度は高い。月1なんてもっとだ。毎日の電話まで気遣う必要はなかったのだ。

本人にも正直に、ちょっと心配しすぎちゃうから、毎日の電話やLINEはやめるね。困ったらナースに相談してね。わたしとは月一回会う約束して、そのとき楽しもうね。と伝えた。

もしこれでこの子が入院したとしても、仕方ない。
わたしにはこれ以上のことはできない。

本人が自分自身で、もっといろいろなことを考え、病気について学び、病院のカリキュラムを活かし、強く生きて行かないと。

結局他人がしてやれることなんて何もないのだな、と虚無を感じると同時に、そんなことは薄々わかっているだろうにそれでも奢ってあげたいと思うのは私のエゴだろうかな、と自分の性質を悲しむのであった。


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