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朝、少しの過去を清算する

肩こりを侮ってはいけない。

20代の頃、リラクゼーションの仕事に従事していたにも関わらず、肩こりの深刻さに気付いたのはごく最近だった。

それは子どもを産んで数か月後のこと。
産後、やっと体重がもとに戻ったと思ったタイミングで、あることに気付いた。

なんか前より、顔がでかい。

美容にまつわる産後あるあるは山ほどある。
お腹まわりの肉が減りにくい。うん。聞いてた。
髪の毛が大量に抜ける。うん。聞いてた。
老ける、白髪が増える、疲れやすくなる。うん。悲しいけど想定内だ。

だけど顔がでかくなるなんて聞いてない。
聞いてないよ。嫌すぎる。なんでなん。
と思っていたら、顔のサイズそのものでは多分なく、肩が上がることで首が短くなり、顔がでかく見える現象だった。(多分)

そう、子育ては肩がこる。
日々重くなる我が子を毎日数時間抱っこしているのだ。今彼は10キロを超えているが、いまだに抱っこして欲しい欲が強く、私もなるべくその要望に応えたい。

そして子を片手に家の鍵をあけたり、ヤマトから荷物を受け取ったりするので、落ちないように緊張感を持ちながら抱っこしつつ、片手で色々しなくてはいけない。

そういう生活を数か月、1年と過ごすうちに、肩がガンダムのように上がった状態が私のデフォルトになっていた。

肩が上がると首が短くなる。すると顔が大きく見える。鎖骨も埋まっていく。抱っこポーズにより肩が内側に入っていくのもマズイ。背筋が曲がり、肩甲骨も埋まっていく。脇や二の腕周辺に肉がつきやすくなる。これはあかん。どうにかしなきゃ。

と、思ってなにもしない生活を数か月続いた。時間がないのだ。とにかく時間がない。肩こりはともかく、時間のなさはワーママとして生き延びるための課題となった。

ところで私は「時間がない」と思うとき、いつも思い出すドラマがある。「ハケンの品格」だ。

知らない人はいないだろうけど一応雑に説明すると、篠原涼子演じる派遣社員の大前春子が仕事早すぎてやばいぜ、というドラマです。(雑すぎ)

仕事が早くて何でもできる上に、「女性」「派遣」の名のもとに社員から圧をかけられても屈しない姿勢がかっこよく、今まで見たドラマの登場人物の中でも特に憧れる女性のひとりだ。

言いたいことをズバズバ言うけど、能力があるから一目置かれる。すべての無駄をそぎ落としたような華麗な仕事さばきと、就業のチャイムとともに必ず仕事を終える姿はもはや芸術なのである。

そんなハケンの品格で、印象に残っているシーンがある。
効率重視な大前さんが毎朝、就業前に独自の体操をひとりでやっている姿だ。必ず毎朝、チャイムが鳴るギリギリまで肩をまわしたり背中を伸ばしたりし、チャイムの音と同時にデスクに向かい、全精力を注ぐ。

私はこのシーンに違和感があった。みんなが談笑している中、ひとりで立ったまま肩をブンブン回したり、社員にあたるほど豪快に体を捻ったりする姿は目立っていたし、大前さんは朝のスキマ時間をelearningや資格の勉強に使いそうだと思ったから。

だけど今、改めてこのシーンを思い返してみると、これこそ効率化なのではという気がしてきた。
効率的に働き、なおかつ後ろ盾のない派遣という働き方を長く続けるには、よいコンディションの体を維持することが何よりも大事。大前さんは、資本となる体に対し、毎日気を配ることを大切にしていたのではないか。

何かのエッセイで作家さんが「週に2回はマッサージを受けないと仕事にならない」というようなことを書いていた。以前は「さすがお金持ち」と思っていたけれど、きっと必要経費なのだ。マッサージは娯楽ではない。未来への投資であり、現在の効率化であり、過去の清算なのである。

ということで今の私に週2でマッサージに通う財力も時間もないので、大前春子形式で独自のストレッチを毎朝取り入れることにした。

ストレッチ内容は簡単だ。腕を曲げてまわし、次に腕を伸ばしてブンブン回す。前と後ろ方向に10回ずつ。その後はヨガ動画で見た「肩こりに効くポーズ」を自分なりに3~5ポーズ取り入れてストレッチ。(詳細が気になる方はメッセージくださいw)

時間にすると5分程度だけど、これが結構めんどくさい。ちょっと疲れるし。だけど毎朝やると、なんだか仕事のスタートダッシュが変わる。積もり積もった肩こりが解消されるわけではないが、少なくとも前日の疲れはこの5分で少し解消できている気がする。

そう、たった5分で、私は前日の酷使を少しだけなかったことにできるのだ。
そうやってまず、最寄りの過去を清算する。それを毎日続ける。そして蓄積を清算するために、時々マッサージやヨガに行くこと。

そんな風に、少しずつ過去に縛られた私の体を解き放っていきたい。この先何十年も、この体ひとつで子を育て、家族を守り、働き、幸せを掴んでいかなきゃいけないのだから。



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