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かばさんの習字教室






わたしが筆文字アートを
仕事にできた理由。


掘り下げて考えてみると



"かばさん"



の存在が絶大だったことに気づく。



かばさん、とは

わたしが小学生の頃
習字をおしえてくれた
せんせいのニックネームだ。

”かばさん”という呼び名は


当時ヤンチャな子どもたちが
ふざけて付けたあだ名、という説や


かばさんの本名から
派生して出来上がった
ニックネーム、という説、


いまいち、どれがルーツなのかは
わたしもよくわからない。


子どもたちの間では


先生!というより

かばさん、という
とても親しみのある
おとなの友だち、

ゆるいキャラクターのような

そんな存在だった。



かばさんとの出会い






当時小学1年生。


小学生にあがると
同級生たちがこぞって


ピアノやそろばん、といった
習い事をしていた。

するといつの間にか
幼なじみまでも

書道教室に通いはじめていた。



わたしは字や絵を書くことが
好きだったし、


みんながやっている
”習い事”、というものを
してみたかった。



すぐに、"わたしも通いたい"
と母にお願いした。




かばさんの習字教室は


毎週土曜日のお昼を過ぎた
大体午後12時半頃から開く。



当時はまだ土曜日の午前中は
学校があったので


帰宅してお昼ご飯を食べ
すこし休んでからいく。



家から歩いて5分もかからない

のどかな田園風景が広がる
大きな木の下に

かばさんの自宅のすぐ近くに
青い屋根のプレハブ古屋が
こじんまりと建つ。


工事現場で見かけるような、
とても簡易的な建物だった。



かばさん


プレハブにつくとまず

滑りの悪い引き戸を
子どもの力でグッと
踏ん張りながら開ける。


調子がいい時はスムーズに開くのだが
引き戸のご機嫌はその日によって違う。



開かないときは
かばさんに

”開かないよー!”と伝え
半ば強引に開けてもらうのだ。


そんなちょっと手強い
引き戸を動かすと


かばさんが

”あらゆみちゃんいらっしゃい!”


と軽やかな独特なイントネーション、
元気な声で出迎えてくれる。


背丈は150センチほどで小柄。
かっぷくの良い、
田舎の中年のおばさんだ。

無造作なふわっとした天然パーマに
肩につかない程度のボブヘア。


習字の墨で汚れるので
いつも渋い紫色の柄物の
割烹着にモンペ姿だった。

いつもノーメイクで
身なりはかざらない。

話をしながら
下がってくる大きなメガネを
右手の人差し指で持ち上げる、


そんな仕草が印象的な
とても明るい気さくな女性だ。



そんな

かばさんの習字教室は

驚くほど自由なものだった。



つづく












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