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エアコンなしで越冬した話

2023年の夏の終わりに、
部屋のエアコンが壊れた。
冷暖房のヤツ。

2004年製だったから
エアコン界の長老だ。

あの酷暑と言われた夏の間、
私を守るために
日夜ともに過ごしてくれたエアコンは

ある残暑の夕方に
ピッといういつもの音を最後に
スンと静かになった。

電気屋さんがくまなく見てくれたけれど
もう寿命ですね、と
予想通りの見立てだった。

ならば買い替えるしかない。
が、問題なのは、
シェアハウスのこの部屋には
次の夏には私は住んでいない予定で、
つまり住人が居なくなる見込みなのだ。

となると、
新しく取り付けるのは
いろんな意味で、惜しい。


そこで私は、
エアコンなしで越冬することにした。

シェアハウスには石油ストーブがある。
でも石油ストーブは
うっかりしたら燃えそうで怖いし
臭いが充満するのが苦手だ。

まあ何とかなるでしょう、と

とりあえず冬の始まりに
小さな電気ストーブを倉庫から出してきた。

これ以外になんの用意もしないまま
私は冬を迎えた。


そして結果は。
その電気ストーブ一個で越冬した。
なんとかなると思っていたら、
何とかなったのだ。


例年ならエアコンの補助だった電気ストーブも
いざメインの立場になると
その威力が増しているように感じたりする。

頼りはあなただけ。
その期待に応えてくれているみたいに。



とは言え、
もちろんめちゃめちゃ寒かった。
ここは古い木造の日本家屋。

底冷えは半端じゃない。

救いは南向きの窓から陽が射すこと。
晴れた日は嘘みたいに部屋が暖かくなった。

太陽ってすごいなあと毎度感動し、
ああ、この暖を閉じ込めておけたらいいのに、、
と、願ってる間に次第に陽は傾き
また夜には元通りの寒さがやってきた。


人が訪れない日は、見栄えより暖を優先して
玉ねぎのように服を着込んだ。
剥いても剥いてもまだ剥ける、みたいに
脱いでも脱いでもまだ脱げる、という感じに。

寒がりで冷え性の私は
元々身につけるアイテムが人より多い。
この冬はさらに着ていたから、
そのまま屋外でスポーツ観戦だってできそうだった。
何しろ、屋外と室温が僅差なのだから。

なんのために私は
こんなに寒さを堪えているのだろう?
と自分のしていることを馬鹿馬鹿しく思うこともあった。
でもその反面、

この寒さをやり過ごせたら
なんでもできそうな気がする!という
根拠のない自信に繋がる気も、どこかにあった。


そして意外なことに
体は慣れるものだとわかった。
それには、積極的な気持ちでいることが
案外効果があることも、確かだと思う。

受け身でいると
きっと寒さにやられてしまう。

”寒さ”はたぶん、本当は体に良くない。
そう思っている私が
もしもそう思ったまま過ごしていたら
おそらくどこか調子が悪くなったかもしれない。


寒さを体験してやるのだ、くらいの
負けん気が体を強くする。
そんな気がしていた。
その証なのか、
私は風邪一つ引かなかった。


我が部屋の、
この冬の最低気温は2.9℃。

冷蔵庫に負けないその部屋で
ベッドから起き出して
着替えまでしたのだから

寒がりな私でも
やればできるものだと
変な自信がついた。

僅差の温度とは言え、屋根があり壁がある。
そのことのありがたさも身に沁みた。

あら、今朝は5℃もある。
ある朝、ふとそう思っている自分が可笑しかった。


さらにもうひとつの救いは、
暖冬だったこと。
世の中の人は暖冬にいろんな懸念を語っていたけれど
私は暖冬にとても感謝をしていた。

    

人には勧められないし
二度は経験したくはない越冬のシカタ。

人生で一段強くなったかもしれない、
冬の思い出です。

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