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エッセイ#067 - 夢の中のケガ

寝ている間に上腕三頭筋を痛めた。二の腕の裏側の筋肉だ。寝ている間のことだったので、何があったのかよくわからない。覚えているのは、気をつけの姿勢で仰向けで寝ていて、そこから起き上がろうと腕に力を入れていたら、上腕三頭筋が激しい痛みに襲われた事だ。驚いて力を抜いて、束の間じっとしていても痛いままなので、腕を曲げてみると痛みが収まっていった。よく考えたら上腕三頭筋は腕を伸ばしている状態だと収縮しているのだから、伸展させるためには腕を曲げなければいけないのだけど、寝ぼけていたしとっさの事で気付けなかった。だから伸ばさなきゃ伸ばさなきゃと思って腕を伸ばして、痛い部分をしばらく収縮させていたのだ。そんな激しい痛みが引いてもまだ痛みが残っていて、これは病院に行くような事になるかもしれないなと思ったのに、起きてみたら全く痛みがなくなっていてまた驚いた。

確かに意識があったのに、夢だったのかなと思ってしまう。それぐらい後を引きそうな痛みだったのに、ほんの数時間で全く痛みが消えている。つったくらいではこんなに痛まないという、強い痛みだった。あれは夢だったのだろうか?
同じ体勢で寝転んで、同じ場所に力を入れてみればわかる。それで痛くならなければ夢だし、痛くなれば現実だ。でももし現実だった時、同じ場所を続けて2回痛めた事になって、今度こそ病院行きだ。それは怖い。

だいたい何で、まっすぐに気をつけで寝転がった状態で腕を伸ばしたまま起き上がろうとしているんだ?それがおかしい。少なくとも変な夢を見ていたのは間違いない。全く思い出せないけど。
私は夢の中で夢だと気付く、「明晰夢」という状態になった事がない。だから夢の中で泣いていて目が覚めて涙が出ていたり、悪夢を見ていて逃げて暴れていたら目が覚めて暴れている自分に気付いたり、夢の中の行動が肉体に反映されていて目を覚ます事がたまにある。今回もたぶん、夢の中で何かしているのを現実の体でなぞっていて、それで痛めたから覚醒したのだと思う。たぶん。

夢というのは厄介だ。こうやって現実の体を痛めたり、夢の中の行動を起きてから後悔させたりする。
たとえば夢の中でずるい行動をしたり、保身に走ったりして、目覚めて後悔した事が何度もある。自分がいざという時に自己中心的な行動を取る人間だと突きつけられて、自己嫌悪になる。ただの夢じゃないかと切り捨てられないような、いかにも自分がやりそうな現実味がある。
夢の中で上手く立ち回れなくて、鈍くさい自分が嫌になったりもする。つい先日も、夢の中でガタイの良い女の人に襲われて、首を絞められているのにしばらくテンパって動けず、5秒程してやっと前蹴りをして、そこで目覚めた。なんですぐに抵抗しないんだ!と夢の中の自分の鈍くささにガッカリした。

同じ夢を見て、また上腕三頭筋を痛めないか少し不安だ。痛めたのは左腕なので、右腕を痛めるよりマシだけど、気軽に差し出せるものでもない。

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