見出し画像

鎖で縛ったあなたたちには絶対に教えてあげない

眠れない夜、ひとりでひっそりmixiを見るのが憩いの時間だった。色々な想いと価値観を持つ人が、各々が生きやすいスレッドで住んでいる世界。心地よかった。

リスカをしてても、ODしてても、出会い系がやめられなくても似た辛さを抱えている人がここにはいる。気持ちを話せる。それが、癒しだった。

盛りに盛った自撮りを掲載して、人から何点だと評価してもらうと安心した。他人の目には自分が人間に見えていることが分かって。存在しているのだと分かって。

あの頃、私の世界はあの小さなスレッドの中だけだった。そこでなら、声が出せる。心が言える。手が震えない。空気がある。酸素が吸えた。

現実から逃れられないことなど、知っている。分かっている。それでも、麻痺した心を麻痺させたままでいなくていい場所が自分には必要だった。痛みを語る相手が必要だった。重荷だと言われること、その場限りなこと、全部分かっていた。それでもよかったし、それがよかった。

関心があるようで、無関心な関係が一番心地よかった。過呼吸にならなくてもいい場所があるのなら、それでよかった。

家族は私がおかしくなったと言った。それまでの怒りを、悲しみを、苦しみを行動で表現しはじめたら、狂ったかのようなものを見る目を向けた。その目が大嫌いだった。あのさ、とっくに私は狂ってる。でもそれは、あなたたちの罪。私はただ、子どもでありたかっただけ。それだけの願いが、全くかなわなかっただけ。ただ、それだけのこと。

大人の都合に振り回され、大人な愚痴を聞かされる世界。子どもの私では生きていけなかった。汚い腕と言われたリスカの跡も、私には意味があった。「この手がダメだ」と叩かれた左手にも、心があった。

そういう痛みを全て、「おかしくなった」という理由で片付けて、あなたたちはまた酸素を奪っていく。呼吸困難寸前な死にたがりの私には気づかないままで。

早く大人になりたかった。小さな安らぎしか得られない世界から抜け出したかった。

なのに、大人になれても。まだ私はあの頃のあなたたちに囚われている。ほどけない鎖が、心に絡みついていて苦しい。

言った側、やった側はいいよな。過去に、ちゃんとできる。笑って「そんなこともあったね」と語れるほどの過去に。言われた側、やられた側は目に見えない傷がずっと痛い。涙さえ流せないほどの傷と、一緒に生きていくしかない。

苦しい、悲しい、怖い、ムカつく、ほっといてほしい、死んでほしい、助けて、ひとりにしないで。全部、言いたくて言えなかった言葉。私だけが知ってる言葉。私たちだけが知ってる言葉。知られたくて、絶対に知られなくなかった言葉。

一生、届く気はしない。届かなくていい。私だけが知っていればいい。大切な気持ち、卑怯なあなたたちには絶対に教えてあげない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?