未掲載エピソード#06「水道のない不便さをたのしむ」
このお話は現在発売中の「都会を出て田舎で0円生活はじめました/田村余一・田村ゆに」を出版するにあたって田村ゆにが執筆したエピソードです。本には掲載されず、書いてから約1年経ってみると現在の心境は少し変化しているのですが、せっかくなので公開します。
本の方は、田村余一のポップでわかりやすいエピソード満載です!
まだ読まれていない方はぜひお手にとってご覧ください♪
未掲載エピソード#06「水道のない不便さをたのしむ」
この暮らし全般に言えることだけど、暮らしを楽しめるかどうかって視点次第だと思ってる。
アレもこれもできない!と思えば辛いけど、これなら出来て、こんな側面もある!と新しい楽しみ方を発見するのが面白い。
それでも水道のない暮らしには、不便さや重労働が発生する。洗濯や食器洗いに使う水は、屋外の水場にバケツや水タンクを抱えて取りに行く。
飲み水も月に1回、町内の湧水がある場所へ車で片道20分かけて約100リットルを汲みに行く。
自分の中にあるポジティブワードを引き出して、無理矢理にでも愉しみに変換してみる。
重労働のバケツ運びは、おうち筋トレと捉えてはどうだろうか。
ジムに通わず、新しい道具を買い揃える必要もない「ながら」トレーニング。今なら入会金も月謝も0円だ。
飲み水を汲みに行くのは、森のオアシスへの小旅行。
家よりも人が少ない集落の先にあるため、真冬は車のタイヤが埋まりそうでヒヤヒヤすることもあるけど、水路で笹舟を流して遊んだり夏は涼しく顔を洗うだけでも心地よい。
帰りに産直でお土産の串もちを手に入れた日には、数時間の日帰り旅行の完成だ。
こんな風にムリに表現しなくても、月に1回、往復1時間の作業だけで大地が育むおいしい水が手に入るなら、こんなにありがたいことはない。
水道を契約していない。と、いうことは下水道もないわけで。
排水は敷地内へ流すので、洗剤にも気を使っている。
最初の頃は食器洗いや洗濯に大豆でできてる「サンダーレッド」という純粉石鹸を使っていた。今でも油ものの食器洗い用に、この粉を溶かしたものをキッチンに置いている。
5kg入りを買ってから5年は経つけど未だに無くならないので、節約目線でもコスパ最高!なんと言っても、1日で自然分解するところが魅力で導入した経緯がある。
洗濯では石鹸をやめて、マグネシウムの粒を洗剤がわりに投入している。
小さな粒をそのまま入れると排水してしまうので、不要な靴下に200g入れて縛ったものを2個つくって洗濯物と一緒に洗って干すスタイル。
泡が出ないので落ちているのか心配になるんだけど、マグネシウムを入れることで水がアルカリ性になりイオン分解の力で皮脂汚れを取る仕組みだそう。
そもそも日本の水は軟水なので、服の汚れって水だけでも9割は落ちるらしい。洗剤は残りの1割をどう取るかということなので、例えマグネシウムが気休めでも構わない。
実はマグネシウムをつかう魅力は、この先にある。
マグネシウムで洗濯してアルカリになった排水は、植物を元気にするといわれている。
科学的な根拠やデータはないけど、うちの実例だと洗濯排水が流れる道は他の場所に比べて草の育ちが圧倒的にいい。
大豆の洗剤をつかう台所の排水エリアも有機物が多いのか、春先にこんもりと草が茂っている。
排水が汚水になるのは植物を枯らすような成分が入っているからで、地球や土壌にやさしい選択肢はちゃんとある。
最終的に小さくなったマグネシウムは畑の肥料として土に還せるのだから、今のところ洗濯洗剤にマグネシウムの他はない。
身体と地球を満たす大切な水だからこそ、自分の目で見て確かめ美味しいと感じる五感のある水を取り込みたい。
人を通ることで水が汚れたとして、その先でもう一度飲める水に戻すのは自然の力。地球は交換可能な浄水器ではない。
再び美味しく口にしたいと思うなら、そこに何年もかかるほど汚してしまうとどうなるだろうか。
水道を通せばラクかもしれないけど、ラクしたさきで手に入る水の質に私たちは文句を言えない。
地球の上で共に生きる仲間として歩むには、これまでの過去を取り返すためにも更なる豊かさを生み出す未来へとコマを進めたい。
サスティナブルな暮らしを、一緒に実現していきましょう!