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鍵のおもみ

結露したガラス越しに世界を眺めているような一冊でした
(頭の片隅にそんなレイヤー広がっていた)

暖かい室内にいるはずなのに心許ない
ときどき下へと滴る水の粒が
流さずに しまい込み 忘れようとした涙のよう

木の葉がこすれるような
ざわめきを残していきました

「最愛の」 上田岳弘さん

(帯より↓)
情報も欲望もそつなく処理する久島(くどう)
「血も涙もない現代人」として日常を生きている

ただ学生時代に手紙を交わしつづけた望未だけが
唯一の愛として、いまだ心を離れない
彼女はいう
  「約束して。私のことは跡形もなく忘れる、と。」

久島が友人に言われていた言葉が印象的でしたので
それだけちょこっと触れてみようと思います↓↓

「世界にとってとても重要なものに繋がる鍵を持っていて
 その鍵の重みに黙って耐えているよう」

鍵なんてものは軽いはずなのに
捨ててしまえるか、というとそうはいかない
「重要なもの」というのは大抵、手に負えないものの場合が多いし
開けるか、開けないかを迷うことも含め
「鍵の重み」というのは言い得て妙だと感心しました

また童話や戯曲について触れるシーンが興味深かったです

おとぎ話の「めでたし めでたし」の後を想像したことはあるし
「めでたくなし」が現実にあることも知っている
ままならさが沁みました

あと先輩が記した「魚座のジーザス野郎」ってのも
この本の記憶としてしっかり残ってます

最近の読書は「手紙」にまつわるものを
知らず知らずにひいているようです

手紙、書きたくなります
封して 切手 貼る、って作業にちょっと憧れます

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