藤月ゆら

物語や歌詞など文字に触れることが好き 読書の感想などを心のままに

藤月ゆら

物語や歌詞など文字に触れることが好き 読書の感想などを心のままに

最近の記事

記憶にのこる

ずっと気になっていた本でした。 とても良い読後感、そして続きそうなラスト。 調べてみると続編が出ていたので、すぐポチりました。 「ありえないほどうるさいオルゴール店」 瀧羽麻子さん (本の概要より) 「あなたの心に流れている音楽が聞こえるんです」 風変わりな店主が世界にひとつだけのオルゴールを作ってくれる 補聴器に似た「音を調整する」ものを装着した店主ムカイさんが纏う空気感が落ち着きます。 私にとっての「心の曲がなんなのか」知りたいとも思いました。 あの曲かな、とか

    • 本とデッサン画

      読み終わると一本の大木のイメージが浮かんでいた。 ーすぅーと不動の何かがそこに佇んでいる感じー 連作短編集だからこその美しさでした。 「赤と青とエスキース」 青山美智子さん (本の概要を編集) メルボルンの若手の画家が描いた一枚のエスキース(下絵) 長い間旅をしてきた絵が語り出す 「文庫化されるのが待ち遠しい」 そばに置いておきたいと思わせる作品でした。 読んでいるとき絵にまつわる、こんな体験を思い出しました。 老舗のベーカリーやコーヒーショップなどのお店が並ぶ ○

      • やくそく

        ーちょっとの思考力を維持しながら単純なことを繰り返すー そういう時、もう一つのスクリーン(頭の中)を通して思い出される記憶があります。 ここ数日曇った空を背景にうっすら思い出したことがいくつかあります。 (本を読むより映画を見る時間が増えていた影響もあるかも) 記憶の中の自分には感情があるけれど、 それを見ている今の私は感情との距離があるため「本心」に近いものが感じられます。 対極の感情が混ざりあい内心で気持ちも言葉も飛び交っています。 けれど、まるで何もなかったかのよ

        • たどりつく

          読書が好きになるきっかけの作家さん そのうちの一人である島本理生さん 久しぶりに読みました。 「星のように離れて 雨のように散った」 島本理生さん (本の概要より) 行方不明の父、未完の『銀河鉄道の夜』、書きかけの小説。 三つの未完の物語の中に「私」は何を見い出すのか? 人生の岐路に立つ女子大学院生を通して描く、魂の彷徨の物語。 人との会話の場面が多く その会話内容がとても興味深い一冊でした。 特には『ノルウェイの森』の中での会話に 「何を感じたか」を確認しながら語り合

        記憶にのこる

          noteをはじめた年

          今年2023年9月にnoteをはじめました。 きっかけは140文字におさまらなかったものを書きためるスペースが欲しかったから、なんだと思います。 本にまつわることに限定して「X」にポストしてきました。 「1ポスト1冊」 それは読んだ本のメモのような、ちょい日記のようものでした。 一冊の本から受け取るもの多さ、思い出す記憶、刺激された感情など、 溢れるものが多くなってきた時、なんか違う感じになって一度Xから離れました。 離れてみると文字にしないからなのか、印象が薄れやすくて感

          noteをはじめた年

          猫のかほり

          やさしい絵本のような物語に包まれたく手にした本。 「伝言猫がカフェにいます」 標野凪さん (帯より) もう会えない人からの「想い」を猫が届けます。 心があたたかくなる連作短編集。 「可愛い」が想いのこもった言葉を伝えるために駆けまわります。 カフェには暖炉があって、そこで茶トラ猫が丸くなるシーンがありました。 日本の冬では「こたつ猫」を思い浮かべるけれど、 洋風だと、そうか「暖炉猫」になるのか、、、いいな。 そこで、ずっと前に観た映画のシーンを思い出しました。 (話、

          猫のかほり

          うさぎの足あと

          初めて読む作家さん 他の作品も読んでみたいと感じるくらい良い作品でした 「リラの花咲くけものみち」 藤岡陽子さん (帯より) 『動物たちが「生きること」を教えてくれた』   ー心に傷を負った少女の成長ー 北海道の大学で獣医師を目指す聡里は、自然に、 生き物に、人に、育てられてゆく 獣医師という特殊なことを学ぶ場と 北海道でしか見られないであろう景色や季節ごとの体験は、 普段意識しにくい「自然の一部である」ということを くっきりと、はっきりと意識させてくる。 花がたくさ

          うさぎの足あと

          ベランダの黒猫

          今月のはじめのことです ベランダに黒猫がやってきました 目があった瞬間、そのまま止まってお互い様子を伺っていた 逃げない感じなので、ひとまず下がってその場を静かに離れました 大きな音を立てないようフードを器に入れ戻る 黒猫はさっきのままの体制でそこにいました 「ここに美味しいものがあります」って音をさせながら ゆっくり網戸を開け、静かにそっと置く 黒猫はちょっと後ずさったもののフードに気づき食べはじめました 生後半年ちょいくらいだろうか ツヤツヤした毛、グリーンがかった

          ベランダの黒猫

          ショートスリーパーに憧れる

          無防備な子どものように何度も泣いていました 読み終わって水分を失った体は 読む前より潤っていて サウナに入った後みたいに整っているのだから不思議 「星を編む」 凪良ゆうさんの作品 (帯より) 「汝、星のごとく」の続編(3部構成)  ・春に翔ぶー教師・北原の過去  ・星を編むーふたりの編集者の物語  ・波を渡るー愛の果てにも続く暁海のその後、愛の形 この作家さんの作品を読むと 必ず心を丸裸にされた、みたいに気持ちになります 知らず知らずに厚着してしまった心が素に戻るとい

          ショートスリーパーに憧れる

          鍵のおもみ

          結露したガラス越しに世界を眺めているような一冊でした (頭の片隅にそんなレイヤー広がっていた) 暖かい室内にいるはずなのに心許ない ときどき下へと滴る水の粒が 流さずに しまい込み 忘れようとした涙のよう 木の葉がこすれるような ざわめきを残していきました 「最愛の」 上田岳弘さん (帯より↓) 情報も欲望もそつなく処理する久島(くどう) 「血も涙もない現代人」として日常を生きている ただ学生時代に手紙を交わしつづけた望未だけが 唯一の愛として、いまだ心を離れない

          鍵のおもみ

          手紙を書きつづる音

          本を読んでいると「脳内で映像が流れる」という体験をします 濃淡、色彩、動きの滑らかさは作品ごとに違います それにプラスしてBGMを流してくる本に出会ったことが一度だけあります そして初めて「効果音を流してくる本」を体験しました 音にタイトルをつけるとしたら「手紙を書きつづる音」 ざらっとした質感の紙にインクが走る音 跳ねて伸びて止まる、また走り出す文字の音 直感的に手紙と思ったのは誰かを思ってつづられる 息遣いのようなものを感じたからだと思う 最後の一文字を読んで止まっ

          手紙を書きつづる音

          はざまを揺れる

          先日図書館で借りてきた本を読み始めたところ 「あれ、これ知ってる」となりました。 内容はこんな↓ 他人の子を見て犬のが可愛いと感じる主人公 卵巣の病気を患い性交に積極的になれない その恋人はお金を払って学生時代の同級生だった女性を抱く 結果妊娠 その彼女は言う 「子ども、もらってくれませんか?」 目の前で起こる異常事態を冷静に見つめる主人公 周りにわかるような反応は控え目 だけど拒絶と引き寄せをくり返す思考自体の声はとても明瞭でストレート  「子供がほしいのと、子供

          はざまを揺れる

          屋根の上の猫

          ひと月くらい前に玄関先で子猫の鳴き声を聞きました。 あたりを探してみると隣の家の屋根の上に子猫を発見。 その大きさは生後2ヶ月くらいで尻尾がギザギザしていました。 近所でたまに見かける親子猫のうちの1匹でした。 母猫と兄弟猫とはぐれてしまったのかな? 登ったはいいけど降りられない様子(子猫あるある) 気温も日差しもまだ強い さあ急いで下ろさなきゃ! ということで高めの塀を足場にトテトテぎこちない足取りで子猫のそばへ。 シャーとか言われちゃうかなと覚悟していたけれど 逃げ

          屋根の上の猫

          水の気配

          幼い頃、母に読み聞かせてもらった「人魚姫」は 母を独り占めできる唯一の時間でした(ひとつ上の姉がいる) 本の内容は、ほとんど入ってきていなかった気がします。 4歳下に妹が生まれ、久しぶりに聞くことになった「人魚姫」 興味がないフリをして、少し離れたところで聞いていた記憶があります。 王子様を刺すように渡されたナイフにゾッとし 刺すところを想像してしまい固まって動けなくなっったことも。 人魚姫が海に身を投げ、七色の泡になって消えるラストを聞き、 ほっとして魔法が解けるみたい