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スタートアップになぜデザインが必要なのか?

スタートアップにおいて、なぜデザインが必要なのかについて話しましょう。
最近では、テクノロジーによる差別化が難しくなってきたことや、他のサービスやプロダクトとの差別化が重要になっていることはよく知られています。

また、私たちは「モノより体験」を重視するようになり、体験に対してお金を払うことが増えています。その最たる例がiPhoneですね。

デザインはユーザーの体験に深く関わる要素であり、その優れたデザインによってユーザーは魅了されます。
優れたデザインは視覚的な魅力だけでなく、使いやすさや機能性の向上にも貢献します。
デザインを通じて、ユーザーに対して感情的なつながりを生み出し、ブランド価値を高めることができるのです。

特にスタートアップは競争が激しく、市場に新しい価値を提供するために差別化が必要です。
その差別化を実現するためには、デザインが非常に重要な役割を果たします。
魅力的なデザインを通じてユーザーの心を掴み、競合他社との差別化を図ることができるのです。

ですから、スタートアップにおいてはデザインが欠かせない要素となっています。
良いデザインによって、ユーザーの満足度や忠誠心を高め、事業の成長を促進することができるのです。

1.iPhoneは体験として優れていた

iPhoneの成功は、単にモノとしての技術が優れていたからではなく、その体験が優れていたからです。
iPhoneを所有することや使用することには付加価値があり、その体験には優れたデザインが取り入れられていました。

iPhoneは、他のスマートフォンとは異なる直感的で使いやすいインターフェースや美しいデザインが特徴でした。
操作性が高く、シームレスなユーザーエクスペリエンスを提供していたのです。

ユーザーはiPhoneを持つことで新たな体験を得ることができ、それによって満足感や便利さを感じました。
デザインの優れたインターフェースは、ユーザーとの感情的なつながりを生み出し、使いやすさと魅力を両立させていました。

実際、iPhoneは単なる電話や通信機器としての機能以上の価値を持っていました。
それは、ユーザーが日常の生活において欠かせない存在となり、愛着を持つことができるデザインであったことによるものです。

つまり、iPhoneの成功は優れた技術だけでなく、体験としてのデザインの優位性によるものであり、そのデザインがユーザーに付加価値を提供しました。
このように、デザインは製品やサービスの成功において重要な要素となり得るのです。

2.スペックはひとつの基準でしかない

iPhoneやMacについて、スペックが低いとかゲームができないといった批判があることはよく聞かれますが、全てのユーザーが高性能なスペックを求めたり、ゲームをプレイしたりするわけではありません。

● 普段使う車は馬力で選びますか?
● 普段食べるものにブランド化された食材を選びますか?
● 使いやすくて心地よいものを選びますか?
●「自分がこれが良い」と思ったものを使いますか?

一眼デジタルカメラの業界を見てみましょう。
そこではスペック競争に早くから参入し、画素数での競争が起こっていました。

しかし、写真の本質は「写真を撮る」ことです。
写真は記録し、記憶に残すためのものです。
このような体験を向上させるためには、長期間にわたってどうすれば良いかを考えてこなかったのです。

その結果、どうなったのでしょうか?スマートフォンが登場し、いつでも手軽にポケットから取り出して写真を撮影し、その場でシェアして楽しむことができる体験が実現しました。
この手軽さと体験の面で、一眼デジタルカメラの売上は大幅に減少しました。
人々は画素数よりも体験にお金を払うことを選んだのです。
この例から、体験が重要であることがよくわかりますね。

3.ユーザーの心を掴むためのもの

今やスマートフォン市場にはさまざまなメーカーからの製品が存在していますが、同じコンセプトや技術を活用した場合でも、デザインプロセスを経ることでユーザーに伝わる価値が変わってきます。
つまり、「デザインすることはユーザーを理解し、ユーザーの体験を考える」というプロセスが存在するのです。

デザインにはUIやビジュアルなどの見た目だけでなく、ユーザーの心を揺さぶる要素としての役割もあります。
もちろん、最終的な成果物は魅力的なビジュアルであることが望ましいです。
近年では、デザインはユーザーの心を掴むために必要不可欠なアプローチとして位置づけられています。

デザインやユーザー体験の重要性は理解されていると思いますが、具体的にどれほど重要なのかという点についてお話ししましょう。

4.課題解決型のスタートアップにおいて

スタートアップにおけるデザインの必要性についてですね。
スタートアップは一般的に社会や人々の課題に対する解決策を提供するサービスを開発しています。
このとき、ペイン(問題)やゲイン(利益)といった観点が重要な要素となります。

当然ですが、課題を解決するサービスには需要がありますし、需要があれば人々はそのサービスに対価を支払います。
スタートアップの初期段階では、まずユーザーにサービスを利用してもらうことが重要です。
MVP(最小限の実現可能な製品)のフェーズでは、「創業者とエンジニア」といった組み合わせが多く見られ、システムを構築し動作させることができる人々が最初にサービスに参加します。
デザイナーは後から参加することが多いです。

また、このフェーズでは「ユーザー体験」については創業者が主に考えていることが多いと思います。
創業者は、社会に存在する問題に対して特定の体験を提供すれば成功するという視点を持っています。
しかし、ユーザーが実際に求めているものをバランスよく認識しているのは、多くの場合デザイナーです。

5.エンジニアと経営者のタッグは強い

個人的に3社のスタートアップ経験を通じて感じることは、エンジニアと経営者の安定感です。
彼らはプロダクトを前進させ、スタートアップとして事業をスタートさせることができる安定感を持っています。
これは間違いなく重要な要素だと思います。

一方で、ユーザー体験を考慮する観点から見ると、デザイナーがスタートアップに参加するタイミングは、MVPを超えてPMF(Product-Market Fit)を目指す段階が多いと感じます。
この時点では赤字であっても売上を上げ、事業計画を立て、資金調達を行うフェーズです。
この段階では、とりあえず走り出すことが優先されたため、ユーザー体験の一貫性の欠如や将来の方向性を見越した機能の追加などが見受けられます。これはまさにスタートアップ特有のパターンだと思います。

プロダクトの多様性によるピボットが原因かもしれませんが、デザインや機能の面でも、プロダクトをシンプルに保つことが難しい状況が多いです。
プロダクトをシンプルに保てないということは、ユーザーが使った際に複雑さを感じるプロダクトになってしまっていることを意味します。
そんな複雑なサービスをユーザーが意欲的に利用するでしょうか?

6.ユーザー体験をシンプルに尖らせる

大事なのはこれだと考えています。
特定のユーザーを熱狂的なファンにする一方で、使いやすくシンプルなサービスを最初に目指すべきです。
ここでいうシンプルさは、ニッチな特化を指しています。

差別化を図るために機能を増やすことは避けるべきです。
機能を削減し、コアなユーザー体験に特化させる方が良いです。

成功するかどうかわからない事業において、機能を増やして拡張していくことは自滅行為だと考えています。
まだサービスが広まっておらず、コアなユーザーがファンになっていない状況で、具体的なターゲットも定まっていないのですから。

特にコードの側面では、状態の複雑性や機能の増加により、スパゲッティコードになりがちです。
そして、エンジニアはそのような機能を作れないとはあまり言わないものです。
そのため、無駄な機能が多く実装されてしまうことがあります。
本当にその機能はユーザーにとって必要なのかをよく考えるべきです。
近年では、エンジニアとデザイナーの組み合わせが初期のフェーズから必要な時代になっていると感じています。

7.とりあえずリリースしようぜの間違った弊害

FaceBookのCEOの言葉には、あなたのビジネスにおいてニーズがあるかどうかを理解するために、「とりあえずリリースする」という考え方があると述べられています。

しかし、ビジネスとしてのコアな機能をとりあえずリリースするべきではありません。
実際、一部のテクノロジーに精通したスタートアップを除いて、機能に焦点を当ててコアなユーザー体験を作ることは難しいと思われます。

とりあえずリリースを続けていると、負債が積み上がるだけです。
ユーザーのニーズを理解せずに使いにくいプロダクトを何度もリリースしても、良い結果は得られません。

プロダクトを開発する前に、ユーザーを理解することがますます重要になっています。
まずはシンプルなままでありながら、特徴的な要素を強調していくべきです。

以前は創業者やビジネス責任者がエンジニアリングの重要性を理解する時代でしたが、今ではデザインの重要性も理解しなければならない時代になったと思います。
私自身、デザインとエンジニアリングの間で活動している立場から、最近はスタートアップにおいてデザイナーの協力がますます必要と感じています。


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