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性別が、生き方を別けない世界へ - Battle of the Sexes


「なんで、女の子は野球をやっちゃいけないの?」

私が小学生の頃に抱いていた疑問でした。もちろん「やってはいけない」というルールはどこにもありません。しかし、少年野球チームに所属していた頃、「女のくせに」と言われることは日常茶飯事でした。

プロの選手でも男女関係なく戦えばいいのに。
女子が勝つこともあるだろうし、女子リーグ・男子リーグと区別するから、それが差別を生んでしまうのではないか。
そう考えてきたのですが、1973年、既に「男性との試合」に受けて立った女性がいたのです。

1960年代〜80年代、アメリカの女子テニス界のトップに君臨したビリー・ジーン・キング。本作「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」の主人公です。
彼女が活躍していた当時、女子の賞金が男子の8分の1とされていたことを受け、彼女は全米テニス協会を脱退し、「アメリカ女子テニス協会」を立ち上げます。

ビリーを演じたのは、「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーン。彼女自身、ビリーの生き方に共鳴し、本作への出演を懇願したそうです。

性別に優劣はない

ビリーが訴えたのは「敬うこと」

男は強く、一家を支える大黒柱。
女はか弱く、家で子どもを育てる。
そんなステレオタイプはとっくに崩れ去った現代。女性の社会進出も珍しいことではなくなりました。

しかし、ビリーが活躍した頃のアメリカは、男尊女卑なんて当たりまえ。女性を下に見るような言葉も、公の場で当たり前のように発されていました。

勝ち負けじゃない。ただ、敬ってほしい。

彼女は全世界の女性のために戦うわけですが、それは「女だって強い」といった威圧的なメッセージを発信するためではありませんでした。
ただ、「女性のことを認め、敬意を払ってほしい」と彼女は言います。

この発言に、ハッとさせられました。ジェンダーをめぐる問題は、男女お互いに熱が入ってしまい、”どちらが上か”という争いになりがちです。しかしビリーはただお互いを認め合おうと主張します。
真の平等を求める彼女の姿は、本当にかっこいいです。

しかし、それを主張するためには、まず試合に勝ち、女でも十分に戦えるということを証明しなくてはなりません。そこでビリーは、男子のプロテニスプレイヤーであるボビーと戦うことを決意します。

フラットな視点で、人を愛すこと

この物語のなかで、もう一つ考えたことがあります。それは、同性間の恋愛についてです。ビリーには夫がいるものの、美容師のマリリンと恋に落ちてしまいます。

しかし、それは夫を裏切る行為。そんな自分に心を痛め、葛藤する姿が描かれています。
ビリーにとって、夫も、マリリンも、大切な存在。きっと彼女は、誰かを愛することと性別は関係のないことだと考えているのだと思います。
人間そのものをフラットにみつめる、人類愛にちかい思想を持った人物なのではないでしょうか。

性別は、生物学の観点からみた一つの特徴にすぎません。性別に関わらず人を愛することが認められる時代は、近づいてきているようで、まだまだ理解されていない部分もあります。
この二人の物語から、性の複雑さを違った視点で考えることができました。


今年は#MeToo運動が活発になったこともあり、女性が権利を主張する風潮が強まっていやす。言葉にできる勇気と、それを受け入れることのできる世間の風潮は、とても喜ばしい事だと思うのですが、それが過激になりすぎると、平等な世界からは遠のいてしまう原因になるかもしれません。
ビリーが謳ったように、お互いを非難するのではなく、あくまで「平等の権利」を主張するものでなければ、それはただのクレームになってしまいます。

男女間に存在する壁は、ビリー・ジーンの時代や、それよりももっと前からずっと変わらない問題で、これからも考え続けなくてはならない事だと思います。
この作品に出会ったことで、「性別」としっかりと向き合うことができました。とにかく、性別が人の生き方を左右するものであってほしくない、と私は思っています。


本作の監督を務められたのは、ジョナサン・デイトンさん、ヴァレリー・ファリスさん。
私自身、映画の世界にのめり込むきっかけとなった作品「リトル・ミス・サンシャイン」(2006)も手がけられています。いつもご夫婦一緒に制作活動をされているそうです。

彼らが監督する映画には共鳴することが多く、本作を観るのを本当に楽しみにしていました。このような作品が世界に溢れれば、それも夢ではないと思います。

男性にも女性にも、是非見てほしい作品です。

予告編:「バトル・オブ・ザ・セクシーズ 」

こちらの記事は、映画メディア「OLIVE」にも掲載しています。
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