差別をしない、違いを受け入れる
「いろいろあって、まりかは張り詰めているんだろう。
俺といるときは、てろんとなっていればいいさ。
俺だけに見せて」
一度きりしか会っていない殿方に、ここまで言ってもらっていいのだろうか。
焚き火が好きなJUNさん、まりかを買い被りすぎてはいないか。
一瞬、不安がよぎるけれども、いまは恋愛初期のほやほや期。
「まりかねえさん、いま浮かれなくていつ浮かれるんですか!」
という、ミドリちゃんの忠告を受け入れることにしよう。
日曜のお顔合わせでつき合いましょうとあまりに自然に言われ、はいと答えたまりか。
毎日、逢いたいとLINEをもらう。
ときにはおどけたり、茶化したり、いじったりいじられたり。
いいペースで会話が進む。
まりかも自然に、私もよと返す。
これはもはや、理屈ではない。
待ち合わせの駅で初めて会った瞬間から、なつかしい感じがしたのだから。
とはいえ、やはり自分の気持ちはことばに乗せておきたい。
そこで、以前、こんな事を書いたことを思い出した。
8つほど挙げているが、いちばん大切なのは最初と最後だ。
差別をしないこと、違いを受け入れられること。
彼はどうだろうか。
以前、3回ほど会って運命だ何だとさんざんいった挙句、まりかにはトキメキを感じないとフラれた、無精髭のギターさん。
彼はまりかがいまはパート形態での勤務だと伝えたら、「生活保護とか受けてるの?」と聞いた。
生活保護は、憲法で定められた国民の権利で、まりかも持てる能力資力をすべて用いても暮らせなくなったら、申請するだろう。
でも、ギターさんのことばには、明らかに侮蔑が含まれていた。
あのとき、この人はなしだと判断すべきだった。
JUNさんは最初のメッセージで、まりかが子ども食堂の運営に関わっていることに興味を持った、と書いていた。
会ったとき、たまたま彼の住まいの近くに知り合いがやっている食堂があるとわかったときも、自然に何かできることないかな、と言ってくれた。
子ども食堂、かわいそうな子たちに施してやってる、というニュアンスで言われることが多いが、コミニュティづくりなんです、というまりかのことばに、うなずいてくれた。
差別なく、世の中を平らかに見る人の目だ。
彼が彼にとってホームであるキャンプの世界に招き入れてくれるように、まりかも大切にしている世界を見にきてほしい。
「おたがいの世界をシェアしながら、少しずつなかよくなりたいです」
「そうですね」
「今度、食堂に一緒に行ってみませんか?」
「ぜひ」
彼は私をどこに連れて行ってくれるのだろう。
私は彼に何を知ってもらうことができるだろう。
少しずつ、少しずつ。
私たちの旅は、はじまったばかりだ。
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