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「鬱の沼」

しまった
気づいた時にはもう遅かった。
沼はいつだって
ひそやかに私に忍び寄り
あっという間に私の足を絡め取ってしまう。
そして私はどんどんと沈んでいくのだ。

重く、暗く、冷たい。
沼はどこまでも暗く
どんどん深さを増していく。

早く逃げなければいけないのに
足を取られて動けない。
沼の冷たさに体温も奪われていく。

今日の沼は特別重い。
ちょっとヤバいかもな。
頭の片隅で警告が鳴る。
どうにか一人で
沼から抜け出せる事が
多くなってきた今も
あまりに沼が力を増してしまうと
飲み込まれてしまう事がある。
今度頭のてっぺんまで飲み込まれたら
死んでしまうかもしれない。
手遅れになる前に助けを呼ばなければ。

今まで私が助けを呼べば
いつだって飛んできて
私を救い出してくれた彼は
今日も来てくれるだろうか。

これまで彼が差し伸べてくれた手を
何度も掴み損ねたから、
もう疲れてしまったかもしれない。
自分から助けを求めておいて、
「私には助かる資格がない」と言い張り
私が手を伸ばせなくなってしまう事は
よくあった。

いつも根気よく
ありとあらゆる手を使って
私も助け出そうとしてくれる彼の
その根気はいつまで続くのだろうか。

沼に入らないように言われているのに
また沼にハマってしまっている事を
呆れられてしまうだろうか
私がわざと入っていってるわけではない
と彼は分かってくれるはずだが
それでも愛想を尽かされてしまう日は
近いのかもしれない。

何度助けてもらっても
また沼にハマってしまう私を
助けても意味がないと
思われてしまう可能性だってある。

とりあえず他のことに意識を向けなければ。
沼に意識を向ければ向けるほど
沼が深く重くなっていく事を
私は知っている。

そしてこの沼に飲み込まれて死ぬことは
許されない。

諦めるわけにはいかない。
「彼のために」そう思うだけで
勇気が湧くようになったのは
いつ頃からだろうか。

沼に飲まれて死ぬことを
切望していた私が

彼と幸せに生きたいと
思えるようになったころから
一人で沼を抜けられる事が増えてきた。

まず沼にハマっていると認識することが
抜け出すための第一歩なのだと
教えてくれたのは誰だっただろうか

最初に沼にハマり出した頃は
沼にハマってると気付かなかったり、
そもそも沼だということがわからなかった。
あの頃の私とは違う。
沼の抜け出し方だって何通りも覚えた。
私はもう何度も沼から抜け出してきたのだ。
今日だって抜けられるはずだ。

助けを求める私に
彼は優しく手を伸ばす。
そして私は彼を信じて
彼の手を掴むのだ。


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