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金木犀の香り

匂いフェチというわけではないし、香水もつけない。だけど、どうしても好きな香りがある。

そう、金木犀の香り。秋のはじめに漂うこの香りをかぐと、言いようのない懐かしい気持ちになる。甘くて清潔で、胸がほんの少ししめつけられるような、ノスタルジックな香り。

今日、今年はじめて金木犀の香りがした。

世の中に金木犀の香りを再現した香りグッズは数あれど、やっぱり本物の木からただよう香りには叶わないなぁと思う。

一年の中のほんの一時期にしか味わえないこの甘やかな香りは、落ち込んだ日ですらちょっと気分を上向きにしてくれる。

いつの記憶かもう曖昧だけど、恋人と散歩しているときにこの香りが漂ってきたことがあった。「あ、金木犀の香り。最高」とつかのま足を止め深呼吸する彼の姿を見て、「この人とは気が合いそう」と思ったことを思い出した。

学生時代に好きだった人には、「金木犀の香りが好き」と話したとき、「『キモい、くせぇ』って聞こえるよね?」と無粋な返しをされてちょっとしたケンカをしたこともあったなぁ。今となっては笑える思い出だ。

夏ほど騒いでもらえないけれど、秋だってまぎれもなく平成最後だ。金木犀の香りが告げた秋のはじまり、今年はどう過ごそう。

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