見出し画像

あの日の言葉


#私のパートナー

一人目の子供を産んだ時、私は完全にワンオペだった。
どちらの両親も県外で仕事で忙しく、
産後一週間だけはなんとかきてくれたが
それ以上お願いすることはできなかった。

貧血がひどく、産院のトイレでブラックアウトするくらい
血が足りていなかった。
もちろん、母乳も足りなくて
産んだばかりの赤ちゃんはいつも泣いていた。
市販のミルクもあげていたが、
乳幼児アトピーで顔が赤く、
かゆがる小さな赤ちゃんにミルクをあげていいのか
新米ママには難問すぎて全くわからなかった。

生まれた赤ちゃんは予定日を三週間超えて生まれていたので
身体が大きく、余計にお腹が空いていたと思う。

いつも泣いていたので
洗濯物を干す時も
家事をするときも
いつも抱いていた。
ちょっとでも下に置いて寝かせるとすぐに泣いた。

初めの3ヶ月はなにを食べていたのか全く記憶がない。
今まで生きてきた中で、1番しんどかった。

当時住んでいたアパートは4階だったが、とても見晴らしがよく、
リビングからすぐ出られるベランダはとても広かった。
引っ越してきたばかりで友達もいない私は
いつも赤ちゃんを抱きながら空ばかり見ていた。

夜、主人が帰ってきてくれることで
私の一日はやっと終わりを迎える事ができた。

「ほんとうにながい。
 3ヶ月が3年みたいにかんじる。」

「おれも。」

主人はおっぱい以外はなんでもできる!と
本当によく手伝ってくれた。
でも、24時間べったり一緒にいる私とは
全く違う。

でも、主人の言葉に対して
あなたは違うじゃないとか
そんな言葉も言えないくらい疲れていた。

「おれが、この子をベランダから落としてやろうか?
 おれ、やったるよ?」
主人の方を見たら、
主人の表情は本当に穏やかだった。

そう言ってくれた時、
私の目から涙があふれた。
本当に私のことわかってくれてるんだ。
この人だけは世界中が敵でも私の味方なんだと思った。

このやりとりがクレイジーすぎるのは
よくわかっている。
きっとわかってもらえないだろう。

でも、私は本当にこの人と結婚してよかったと心から思ったし、
明日からまたこの子を育てていこうと思った。

今でもそのことを思い出すと泣けてくる。

夫婦の間のことなんて
他人に絶対わからないと思う。
わかってたまるかという感じもある。

親でもなく
子供でもなく
友達でもない
特殊で大切な目に見えない信頼関係を
他人と構築できるなんて。
これが幸せだと思う。