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今日は完全にオフの日

数か月に1回くらい、ぼくは「完全にオフ」になってしまう日がある。今日がそれだった。

といっても、芸能人のいわゆる「オフの日」ではない。アナザースカイに旅立って、ヨーロッパの街角のカフェでくつろぐわけではない。

ぼくのオフというのは電源をオフにするということであり、人としての機能を完全に停止してしまうということである。

外にも出ず、まともにご飯も食べず、本も読まず、ネットニュースすら見ていないので、世間で何が起こっているかもわからない。朝からお酒を飲んで映画を2本見て、そのあとはずっと寝ていた。

通常の意味で「休んでいる」のではない。たぶん「うるう日」みたいなものなのだと思う。完全な空白をもうけて、世間と自分のあいだのさまざまなズレを一気に調整している。

これをたまにやらないとアタマがおかしくなってしまいそうだ。通り魔になったり、あおり運転をやったり、鬱になったり、万引きしたり、覚せい剤を打ったり、性犯罪を冒したり、自殺したり、クソ暑い日中にマスクをしてしまったりしてしまいそうで、そういう「同調圧力を溜めこんだニッポン人」になってしまいそうでとっても怖い。

とはいえ、このまんま明日の朝を迎えれば今日はほんとうにオフだったんだけど、しかしいまこれを書いているということは、完全にオフにはなっていないのだ。

こんなものを書いてアップすると、だれかしら読むわけで、そうすると

まったくしょーがない奴だな

とか

朝から呑むなんて人間の屑だな

などと思われるわけである。それを意識しつつあえてこういうことを書いている時点ですでに刀を抜いて相手の間合いに入っており、おのずから意識が研ぎ澄まされて、ぼくのオフな一日は終わってしまった。

そういえば、今日は、多少は生産的なこともやっており、酒を飲みながら、参議院議員選挙でだれに投票すべきか、下調べのようなことをやった。もちろんいくら調べたって、

だれに入れたっておんなじだ

という気分になるのが今どきの日本人というものだ。しかし今日のぼくは機能を停止しているので、まともな日本人ではない。「日本の明日を作ってくれる候補者に希望をもって一票を投じよう」というクレイジーな気分になることができた。

老後の金勘定ばかりをしている「まともな日本人」におもねらない候補者。クソ暑い日にマスクを外さないゾンビの群れにさからってくれそうな人。若い人がこどもをそだてたくなるような国に向けて多少でもがんばってくれそうな気ちがいに一票を託したい。

そういや最近、西原理恵子『毎日かあさん』の第5巻を読んだんだけど、数十年前の東南アジアの風景がよく出てくる。

ああいう風に、いいかげんにゴリゴリ生きていけるようなバイタリティーあふれる感じに、この国もなんとなならないものなんだろうか。毎年数100万人くらい移民してもらって、社会をかき回してもらったらいいんじゃないか。


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