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そんな「昭和」のことは知らない

モロ昭和

ある時期から急に「昭和」ということばが古臭いというニュアンスで使われ始めたことがあったでしょう。あれはいつごろのことだったのかな。

それまで、ぼくにとっての昭和とは、平成や令和のような1つの元号にすぎなかったし、もっとも身近に感じる元号だった。

祖母は大正生まれで、祖父は明治生まれなのだが、子どもの頃、大正とか明治ときくととても大昔のことを言われているような、とおい気分になったものだ。なんせ大正も明治も、太平洋戦争よりずっと昔のことなのだから。

それにくらべれば、昭和は、身の回りの空気のようなものだった。

それが平成のあるころから「昭和」というと小ばかにされるような、ふるくさいというニュアンスで使われるようになった。昭和レトロみたいな言葉も出てきて、いまではぼくもその言わんとするところはある程度わかる。

いろいろな昭和

さっき、貴乃花光司氏がネットでロングインタビューに答えている動画を見たのだが、かれは自分のことを

昭和の人間です

と言っていたけど、おそらく「古風な人間です」と言いたいのだろう。ただし、昭和といっても貴乃花さんの知っている昭和はあくまで

昭和のおわりころ

にすぎない。しかし昭和は64年間もあったのだから、いろいろなのだ。

昭和の中には、この国が「日本国」ではなく「大日本帝国」だった時代も含まれる。太平洋戦争も昭和だし、五一五事件も昭和の出来事である。

しかし、そういう「昭和」はぼくや貴乃花さんのような昭和生まれからしてもはるかに昔のことで、とうていひとくくりにイメージすることはできない。それだけではなく、戦後の昭和だってけっこう幅が広い。

ぼくや貴乃花さんの慣れ親しんでいる「昭和」は低成長期からバブル期へ向かう昭和のおわりごろだ。いま世間で「昭和」あつかいされている人の多くは、ぼくと同じく昭和のおわりごろの記憶しかない。

僕ら「昭和のオヤジ」が知っている昭和は、トレンディードラマや、ファミコンや、ガンダムや、ウルトラマンや、金八先生や、サザンの昭和にすぎず、あえていうなら「ソフトな昭和」だ。

その前に高度成長期というものがあり、そのころの昭和といえば、石原裕次郎であり、植木等やクレイジーキャッツであり、学園紛争だが、ぼくらはそういったものはリアルタイムではわからないのである。いわゆるオイルショックの記憶もない。

雑な昭和

これは、ミレニアル世代がバブル期のことをおぼえていないのと似ている。

以上の話は、世代論で整理すると簡単で、高度成長期の昭和はベビーブーム世代にあたり、ぼくらはそのあとのX世代と呼ばれるくくりだ。そしてその後、平成前期のY世代(ミレニアル)、平成後期のZ世代へ続く。

つまり、いま昭和のオヤジ扱いされている人の多くは「X世代」なんだけど、昭和レトロというと、その前のベビーブーム世代とX世代がごちゃまぜにされているのである。

テレビで活躍している人たちの中でも、ビートたけしさんはベビーブーム世代で松本人志さんはX世代なので、笑いのバックボーンはかなり異なる。

ぼくはジャズをよく聞くのだがあまり大きな顔でジャズを語れないのは、ジャズという文化が日本ではベビーブーム世代のものだからである。

しかし、ひとくちに「昭和レトロ」といわれると両方が一緒くたにされており、昭和レトロ風の居酒屋に行くと、石原裕次郎の映画の看板などがが掲げられていたりして、

そんなの知らねーよ

という感じだ。

というわけで、今日の記事には特に内容がないのだが、いまは時代の移り変わりが早いので、以上の世代論くらいに細分化しないとなかなかとらえることができない。「もろ昭和」というくくりはつくづく乱暴だなあと感じている。

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