晩年期の地すべりの特徴とは?【都道府県シリーズ第2周:山形県 小国町編no.1-3】
山形県南西部の小国町(おぐにまち)は大部分は山間地域ですが、市街地一帯は平野部になっています。
平野がつくられるには「土砂が溜まる」必要があり、その土砂の供給源を探してみたら、平野部の西の山地が大地すべり地帯でした。
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今回は、その地すべり地帯を詳しく見ていきましょう。
北西の地すべり地帯
前回は地すべり地形分布図の閲覧方法として「J-SHIS Map」を紹介しましたが、これはパソコンを使っている場合です。
実は「スーパー地形」アプリでも地すべり地形分布図を閲覧することができるんです。
こちらの方が地すべり地形の着色が半透明になっており、地形も見えるので便利です。
さらに拡大して見てみましょう。
これを見ると、急傾斜地も地すべり地形として着色されていますが、ここは実際には地すべりではないと思います。
以下では、赤点線で囲った範囲をさらに詳しく見て行きましょう。
「晩年期の地すべり地形」の証拠とは
上図で赤点線で囲った範囲が「地すべり地形分布図」で1つの地すべりとされている範囲です。
これを地形図だけで見てみましょう。
しかし私の場合は、上図の地すべり地形の大部分は既に侵食で失われ、晩年期の地すべりだと考えています。
青線より東の斜面は、その西と比較して斜面が急です。
一般的な地すべりは、ここまで急な斜面にはなりません。
またこの斜面の背後(青線より西)の斜面は、1つの地すべりとしては形状が不完全なことを考慮すると、晩年期の地すべりだと考えられます。
地形を詳しく見ると、赤で囲った範囲の細長い凹地がたくさん見られます。
これらは地すべり活動によって形成された陥没凹地です。
この陥没凹地の分布傾向を見ると、4つのことが言えます。
①陥没凹地は地すべり斜面の上部にできる
陥没凹地は一般的に地すべり斜面の上部に形成されます。
しかし上図を見ると、地すべり斜面(青線より西)の末端部付近まで陥没凹地が分布しています。
これが私がこの地域を「晩年期の地すべり」と考える理由の1つです。
②陥没凹地から移動方向を推定
陥没凹地は地すべりの移動方向と直行する方向に伸びる傾向にあります。
この地すべり地形の陥没凹地は主に南北方向に伸びていますよね。
ということは、地すべりは東西方向に動いたと想定できます。
斜面は東方向に傾いているので、この場合は東に活動した地すべりです。
③陥没凹地の数と地すべり活動
陥没凹地は複数発達していますよね。
これは地すべりが何度も活動したことを表しており、かつ陥没凹地の長さが違うのは、活動するたびに地すべりとして動いた規模が異なっていることを示しています。
つまりこの地すべり地形は既に何度も何度も動いたと言うことを示しています。
④陥没凹地の幅(長さ)は地すべりの活動幅
一番最初にお示しした赤点線の地すべり範囲が動いた時に形成された陥没凹地は、上図の一番西の陥没凹地だと考えられます。
なお一般的な地すべりは、長さと幅のバランスは概ね一定です。
もちろん色々なパターンがあるので絶対ではありませんが、だいたい「長さ3」に対して「幅2」くらいです。あくまで私の感覚ですが。
「陥没凹地の幅≒地すべりの幅」と考えてOKです。
これに対して地すべり斜面(青線より西)の長さが短いのは一目瞭然ですよね。
以上の4つを総合して考えると、この地すべり地形は「斜面下部がほぼ失われた晩年期の地すべり」と言えます。
次回は地質的な観点と人間との関りについてお話ししたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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