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平野形成の原因を探る①【都道府県シリーズ第2周:山形県 小国町編no.1-2】

都道府県ごとに地形・地質を見ていく「都道府県シリーズ」。
2周目の第6弾は「山形県」
そして前回は山形県の中からさらに絞り込み、小国町(みかわまち)にスポットを当てています。


小国町市街地の平坦地

小国町は大部分が山間地域ですが、中央部付近は新しめの地質で標高は低い傾向にあります。
その中でも北西部には幅の広い谷地形があり、その谷に沿った平坦地は市街地になっています。

山形県小国町市街地周辺の地形図:スーパー地形より抜粋

中央部付近が小国町の市街地のある平坦地です。
「く」の字の部分が幅の広い平坦地で、その「く」に細い沢筋がいくつも集まっています。
でもこれ、パッと見てどこが下流なのか分からないですよね。
幅の広い平坦地が盆地のような状態で、周囲の谷地形は全て細長い。
拡大して詳しく見ないとどちらが上流か下流か見分けられません。

一般的に、河川は下流ほど川幅が広く平坦地も広いのですが、このように中流域の一部が平坦地になっている場合は地形・地質的な要因がありそうです。

下流はどれ?

平坦地には第四紀河川堆積物段丘堆積物が分布しています。
つまり河川の流れで運ばれた土砂が堆積し、平坦地を形成しました。
しかし一般的に上流域は水の流れが速いため、土砂が堆積することはありません。
そのため、過去に下流域のどこかで「堰き止め」が起こったと考えられます。と言うわけで、まずはどっちが下流か確認します。

山形県小国町市街地周辺の地形図②:スーパー地形より抜粋

まずは地形だけの図です。中央部を少し拡大しました。
谷幅は西の谷よりも北東の谷の方が広いですね。

山形県小国町市街地周辺の地形図③:スーパー地形より抜粋

今度は国土地理院地形図です。
川が流れる範囲が水色で着色されているので、水量の見当がつきます。
北東の川は谷幅は広くても、水量は少なそうです。
とすると、西の方が下流でしょうか?

逆に西が上流だとすると、下流へ向かって何度も枝分かれしているのは不自然ですので、やはり西が下流と考えて良さそうです。

山形県小国町市街地周辺の地形図④:スーパー地形画像に筆者一部加筆

標高を見てみると、赤丸の地点では135mなのに対し、青丸の地点は120m。
やはり西が下流でした。

狭い渓流で堰き止めが起こった?

平坦地の下流域を拡大してみましょう。

山形県小国町市街地周辺の地形図⑤:スーパー地形より抜粋

合流点のすぐ西から谷幅が急激に狭くなります。
赤芝峡という渓谷で、両岸にはボコボコと岩場のマークが描かれています。

山形県小国町市街地周辺の地質図:スーパー地形より抜粋

地質図です。
渓谷の入り口付近に南北方向の断層が2条並んでいます。
活断層ではないようですが、段丘堆積物(黄緑色)が切られていることから、段丘堆積物の堆積以降の時期(約13万年前以後)に断層運動で西側が隆起し、東の地域が一時的に湛水した可能性が考えられます。

また断層による隆起がなかったとしても、断層の西のピンク色は硬質な花崗岩が分布しているため、侵食に強く谷幅が狭くなっています。
そのため上流から流出した土砂で堰き止められ、一時的に湛水し、その時に堆積した土砂が平地を形成した可能性もあります。

その場合、上流域に土砂の供給源となる「崩れやすい山」があるかも知れません。
次回は「崩れやすい山」を探してみたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。



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