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山の静寂と、子供の鮮やかさと

出張撮影をしていて「役得だなぁ」と思うことのひとつが、知らない神社に足を運べることだ。邇保姫神社糸碕神社速谷神社遠石八幡宮も、それなりの規模の神社だけれど。もしも仕事がなければ訪れることはなかっただろうし、何なら速谷神社以外は依頼が来るまで名前も知らなかった。

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京都や奈良のような歴史が観光に繋がる街ならいざ知らず。"超有名スポットではないが、地域では知られた神社"というのは、神社巡りを趣味にでもしていなければ知ることも行くこともなかなか無い。だから依頼メールに聞いたことの無い神社名が書かれていると、「いったい、どんな所なのだろう?」といつもちょっぴりワクワクしてしまう。


昨年訪れた中では、御調八幡宮が素晴らしかった。

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広島県三原市の山の中にある神社で、公共の交通機関では移動する手段が無く車でなければ行けない場所にあるのだが。これが意外にも、長い歴史のある神社だったのだ。事前に下調べをしていて、

「和気清麻呂が宇佐八幡宮の神託を得て、道鏡の野心を退けたことによって配流された際に。姉である和気広虫が流されたのがこの地で、清麻呂の雪寃を祈願するために宇佐八幡大神を勧請したのが創祀とされている」

との解説を目にした時は「これ教科書で見たやつじゃ!知っとる、道鏡事件じゃ!」と興奮した。(広島人なので、息をするように語尾に"じゃ"が付く)

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また平安時代には、備後総鎮護の神社として栄えていたそうで。時代が下っても「室町時代には足利義政によって狛犬が寄進された」とか「戦国時代には豊臣秀吉が三原城に滞在中に参拝して境内に桜を手植えした」など引き続き教科書の有名人が出てくる。

実に、由緒ある神社なのだ。

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この日は11月上旬という紅葉には少し早い季節だったので、閑散としていたけれど…桜や紅葉の時期には車の行列ができるくらい美しいスポットだという。

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とはいえ、この時期の枝先が僅かに色づくばかりの緑のもみじというのもまた美しいものだ。


一方で銀杏の木は鮮やかな黄色を振りまきつつも、既に半分程が地面に落ちていて。

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パクリと味見をされたり、愛らしく髪飾りにされたりと、子供相手に良い仕事をしてくれていた。(ちなみに「味はしなかった…」そうだ)

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ロケハンの際には、人けが無く山のさざめきの中に佇んでいた境内も。ご祈祷の時間が近づいて人々が集まり始めると、纏う空気が変わって見える。

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木々のざわめきや鳥のさえずりに囲まれて「己の領分では無い所にいるのでは…」と、どこか畏れ多さすら感じていた静寂の空間が。人の営みのもつ健やかさや、子供の発する鮮やかな気配に満たされていく。

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この気配の落差を知ってしまうと、神々が祭事のような人の賑々しさを喜ぶ…という話も理解できるような気がしてしまう。場に振りまかれる華やいだ明るさはその当人達だけのものでは無く、見る者の心にまで何かしらあたたかなものを伝えてくるような気はしないだろうか。

ほら、こんな風に。

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人の中でも、とりわけ子供というものは。きっと、大きな大きなエネルギーを持っているのだろう。

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ただ風景を撮っている時には無かった圧倒的な生の気配がレンズの向こう側に広がって、その存在感をグイグイと主張してくる。だから、子供の撮影は面白いのだ。


もう昨年のことだけれども。ひっそりとした神の領域のように佇んでいた姿も、人の俗と混じり合って生まれた明るい揺らめきも。

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そのギャップが故に、いずれもが印象深く記憶と写真に残っている。

このような体験の機会が得られるのは、やっぱりこの仕事ならではの役得だ。いまこれを書きながら、改めてそう感じている。




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広島で、大人から子供まで人物の出張撮影をしています。自然な情景を、その時間を…切り取って残したスナップ写真は、お客様だけでなく自分にとっても宝物。何かありましたら、ぜひどうぞ!

ユルリラム
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