村上宗隆はセ界最強の4番打者

2019年に新人王を獲得すると、2020年はシーズン通して4番に座り続けた村上宗隆選手。
驚異の成長スピードで早くもセ・リーグ最高の4番打者との呼び声も高い。
そんな村上選手のすごさと今後の課題を見てみたいと思う。

セ・リーグ1位のOPS

2020年の村上選手のOPSは1.012とセ・リーグ1位(2位は青木宣親選手の.981)だった。
セイバーメトリクスの打者指標で最も重視されるOPS(長打率+出塁率)。これは数ある指標の中でも得点貢献値に最も相関関係が認められる指標だからであり、OPSが良い選手ほど得点に貢献しているということが言える。

そのOPSを構成している長打率と出塁率をセ・リーグ各チームの4番打者と比較してみた。

OBPSLG比較

OBP(出塁率)は上へ行くほど、SLG(長打率)は右へ行くほど数値が高くなっており、右上に行くほどOPSが高いということになる。
ビシエド選手は他の5選手と大きく溝を空けられている。
岡本選手と大山選手は長打率は高いが出塁率が低い。一方で佐野選手と鈴木選手は出塁率が高く、長打率はやや低くなっている。
村上選手はそれらの選手とも一線を引く数値を記録している。

課題の三振は減り、四球が大幅アップ

2019年にNPB史上日本人最多となる184三振を記録したが、今年は115まで減らすことができた。
とはいえ、今シーズンも最多三振を記録している。
三振と対で比較されるのが四球である。
全打席を100とした時の三振率、四球率を先ほどと同じく他球団の4番打者と比較してみた。

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三振率については上に行くほど低くなっている。
一方四球率は右へ行くほど高くなっているため、右上へ行くほど三振が少なく、四球が選べているということになる。
村上選手は他の5選手と比較して、ダントツで三振率が高く、四球率も高いことがわかる。

Swing率とContact率

四球が多い=あまり振らない
三振が多い=バットに当たらない
ということになるのだが、実際に各選手のSwing率とContact率を比較してみた。
まずはストライクゾーンに来た投球へのSwing率とContact率。

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ビシエド選手、大山選手、岡本選手、佐野選手はSwing率も高く、Contact率も高い。ゾーンに来た球には積極的に手を出し、かつしっかりバットに当てていることがわかる。
鈴木選手は、あまり手を出さないものの、振ったときは確実に当てている。
村上選手はあまり手を出さず、かつバットにも当たりづらく、これが三振の多さにつながっているといえる。

ゾーンに入らなかった投球に対するSwing率とContact率は以下の通り。

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ゾーンに入った時よりも差がはっきりと出た。
佐野選手、ビシエド選手はゾーン外でも積極的にいき、かつコンタクト率も高い。鈴木選手はしっかりと見逃し、スイングした際の 率も悪くはない。村上選手、岡本選手、大山選手はそこそこゾーン外の投球に手を出し、かつ当てることができていないということになる。
ただ、村上選手は鈴木選手の次にSwing率が低く、四球の増加につながっていると考えられる。

出塁とアウトの内容

出塁率も高い村上選手だが、その出塁の内容を比較してみた。

出塁

村上選手は安打数は鈴木選手、佐野選手に足りないものの四球数は最も多く、これが出塁率高騰につながっている。

一方でアウトの内容を見てみると

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村上選手はゴロアウトが少なく、空振り三振が極端に多いことがわかる。
先ほどのZ-Contact%の低さがこの結果につながっている。
選球眼は磨かれてきているものの、バットコントロールもしくは配球の読みに課題があるといえる。

打球の質を比較

村上選手がゴロアウトが少ないことがわかったが、これはゴロを打つことが少ないのか、それともゴロを打ってもヒットになりやすいのかを検証するために打球の質を比較してみたい。
まずは打球をゴロ、ライナー、フライに分けて比較してみると

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やはり、村上選手はゴロが少ない。ただ、鈴木選手、大山選手のほうがゴロ比率は少なくなっているため、ゴロを打つことが少ないことだけが原因とは考えられない。

そこで、打球方向を引っ張り、センター、流しの3つにわけて比較してみる。当然、右打者と左打者では打球方向が同じ引っ張りでも逆になっている。

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さすがに4番打者比較なだけあって、引張が各選手とも多いが、村上選手は流し打ちがこの6選手の中では最も高い比率を記録している。
言い換えると広角に打つことができているととらえることもできる。
広角に打つことによって、相手チームが極端な守備シフトを敷くことができないともいえる。

さらに打球の強さをHard、Mid、Softに分けて比較してみると

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村上選手が最も強い打球を打っていることがわかる。
広角に強い打球を打っているから、ゴロでアウトになることが少ないということになるだろう。

カモと天敵

これだけ、すごい選手だが苦手な投手も当然いるし、もっとも数字を稼がせてもらっている選手もいる。
村上選手が2020年シーズンで8打席以上対戦した投手の中で村上選手がカモとしている投手は

得意

阪神戦ではよく打っている印象だが、やはりローテーションの西投手、秋山投手、藤浪投手をカモとしている。
さらに、ベスト5はいずれも右投手となっている。

一方で、村上選手の天敵ともいうべき投手は

苦手

DeNAのエスコバー投手、中日のロドリゲス投手、広島の森下投手からは1本もヒットを放っていない。特にエスコバー投手には6三振を喫している。
広島の森下投手もこれから何年も勝負していくことになるだろう相手なので、苦手意識は早急に払拭する必要がある。

まとめ

村上選手は現時点でも間違いなく最強の打者といえる。
ただ、選球眼は磨かれてはいるものの、バットコントロールの精度を上げる必要がある。ある程度、ボール球に手を出してしまうのは仕方ないにしても、カットできる技術が身につけば、三振もさらに減り、三冠も獲得可能だろう。
さらに苦手投手の克服も課題となっており、スコアラーと連携してしっかりと対策をしておく必要がある。
2021年シーズンは特に村上対森下に注目をしたい。


※参照
1.02 ESSENCE of BASBALL
nf3 Baseball Data House

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