アレクサ、音楽をかけて。私の情熱を探して。

中高生の頃は、熱意と集中力の平常値が今よりずっとずっと高かった気がする。特に音楽に対して。

テレビやラジオでかかる音楽をかなり集中して聞いて、CDショップなんて近くにないもんだから、音楽番組を録音して何回も再生しながらテープ起こしのように歌詞を書き起こして、カラオケに行く前に歌い方を特訓して、完コピしてからカラオケで歌いまくる、なんてことをよくやっていた。たまになんて言ってるかわからなかったところを聞こえた通りに呪文みたいに覚えていたら、カラオケで正しい歌詞が流れて、あーなるほどね、となって覚え直したり。
だから、あの頃のヒットチャートはほとんど曲のタイトルもイントロもサビも二番も全部完璧だし、今でも曲がかかれば多分全部歌える。
CDも、なかなか買えないからレンタルショップでアルバムを借りて、これまたMDとかに落として、何回も何回もリピートした。この曲の次はこのイントロ、みたいな、アルバム構成まですっかり染み付いて、その上でたまにシャッフル再生して新鮮な感じを楽しんだり。

今じゃアレクサとかに頼めば簡単に歌詞付きで最新音楽を流してくれるし、公式YouTubeとかでいつでもMVを見ることができるし、歌詞が不安だったらGoogle先生に聞けば一発で出てくる。すごい。すごいことだけれど、その分曲のタイトルや歌詞や歌い方を全部覚えるということはあんまりなくなった気がする。だいぶ音楽との付き合い方があっさりしてしまった。
十代の頃は、自分にとってコアなアーティスト以外にも、ランキングにのる新曲は全部同じように歌えたけれど、今はそもそも新曲を強い意思でもって聞こうとするのは限られた二、三人のアーティストだけになってしまった。それもいつの間に自分の中で選抜されたのか全く自覚のないままに。好きだったはずのあの人やこの人に、興味が薄れている。

自分の心のなかの音楽を入れていたスペースがどんどん砂で埋め立てられてしまったような感じだ。
これを感受性をなくすっていうんだろう。
あの熱意はどこへ行ってしまったんだろう。

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