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食レポ|ブラザーズ

 陽光を全身で浴びる。毛先ほども風の揺らぎを感じない。熱された世界には一分の隙もないようだ。僕の視界にはどこまでも薄い、白のベールが垂れ下がっていた。人の息遣いが失われた真夏の東京。オリンピックの意匠をまとったプリウスが微かな色を眼の端に残す。

 「ブラザーズ テイクアウト 人形町店」で注文していた「ハンバーガー」を受け取った。茶色の紙袋には茜色の”BURGERS MADE WITH TRUE SPIRITS”の文字が浮かぶ。「真心のハンバーガー」と僕は解釈した。高貴な期待を抱き、人形町の街路を歩く。

 HAMACHO HOTELにチェックインした。無駄なものがない。必要なものしかない。静謐な空間はそれ自体が精神的な冷房のようにも感じられる。マックからThe Killersを流した。ブランドン・フラワーズの声は荒削りであり、洗練されてもいる。それが艶を作り、メロディと重なって魅力へと昇華する。

 The Killersに浸った。良質なハンバーガーを頬張りながら。そもそもハンバーガーは黄金であり、そこに「鈍い黄金」のような表現は当てはまらないと思う。「ブラザーズ」のハンバーガー。そのバンズを口に入れる。そこには深みがあり、広がりがあった。年輪を重ねた樹木のように、一言では表現できない、雄大さと繊細さが共存していた。重なりと調和。美味なる方程式がここにも存在した。


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