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【メールvsチャット】社内コミュニケーションに適しているのはどっち?

「社内コミュニケーションのツールをメールにするか、チャットにするか・・・悩ましい」
「というか、チャット一択なんだけど。でも、メール文化の自社に、どうやってチャットを導入するかが悩ましい」
・・・前職のコンサルタント時代、また現在は副業などで、いろいろな企業の方とお会いする中で、こういった悩みを耳にしました。

結論から言うと、「社内コミュニケーションのツールは、チャット一択」です。反対意見もあるでしょうが、あえてここは言い切りたい。

私自身、メール文化の組織にチャットツールを導入した経験もありますし、他社のコミュニケーションツールを整備するお手伝いをさせてもらったこともあります。
コミュニケーションの手段をチャットに変えると

  • 仕事の生産性が爆上がりする。コミュニケーションツール(メールとかチャット)の使用時間が1日1時間×100人以上削減できた事例もある

  • 情報格差が最小化される。社内のやりとりがオープンなので、誰でも必要な情報にたどり着ける。あとから入社した人も、やりとりの履歴を追いやすい。情報格差がなくなると、自発的に動くスタッフも増える

などの効果が余裕で期待できます。
さらに、実際にお手伝いした企業からも、以下の声をもらいました。

  • 経営層からの声

    • どのチーム、どの担当者間で、どれくらいのスピード感で、どんなやりとりが行われているかが隅々まで把握できる

    • 意思決定事項の判断がよりスピーディになった

    • 伝達事項がタイムリーに社内に行きわたるので、スタッフみんなが同じ情報量を持っている状態が作れている。その結果か、自発的に動くスタッフも増えてきた。これが一番うれしいかも

  • メンバー層からの声

    • シンプルにコミュニケーションコストがめっちゃ下がった。「●●さん、お疲れ様です。■■です。承知いたしました」なんてイチイチ打たなくても、スタンプ一発で返答できる

    • チャンネルの出入りが自由なので、いつでも必要な情報を取りに行ける。情報の共有漏れも減ったし、逆に不要な情報に触れなくてもよくなったので快適

・・・とはいえですよ。
「メールのほうがいいに決まってる。メールからチャットに切り替えるなんて不安だ」という声もたくさん聞いてきたので、その方々の気持ちもよくわかります。
複数の企業の方にヒアリングもしてみましたが、大別すると、以下の悩みに集約されました。

  • チャットは流れていくから、やりとりを追うのが大変にならない?

  • 社外とのメールのやりとりが多い組織には、チャットツールは適さないのでは?

  • 年次が上の人ほど、チャットツールについていけないかも?

そこで、今回は「社内コミュニケーションに適しているのは、メールとチャットどっち?」という問いについて、フラットに考えてみました。


社内コミュニケーションのありたい姿

「社内コミュニケーションに適しているのは、メールとチャットどっち?」に白黒つけたい。
そのためには、そもそもの「社内コミュニケーションのありたい姿」を考えなくてはなりません。

私が考える「ありたい姿の要件」は3つ。

  1. オープンであること

  2. リアルタイムで気軽にラリーできること

  3. 重要度×緊急度が一目でわかること

サマリーを図で示すと、こんな感じです。

①オープンであること

普段のやりとりや議論もオープンにし、なるべく多くの人に意思決定プロセスに参加してもらうことが重要です。

例えば、上意下達の「1対N」のルートで情報伝達を行っていくと、情報量が「上長>部下」となってしまいます。 持っている情報量や見えている景色が違う状態で部下に対して「もっと上長の目線にたって、どんどん提案してほしい」なんて𠮟咤激励しても、自発的な提案なんて上がってくるはずがありません。こういうギャグみたいな光景をよく見かけます。

一方で、情報を極力オープンにし、コミュニケーションルートも「N対N」にしておくと、持っている情報量の格差がなくなり、1人ひとりが自発的に動きやすくなります

②リアルタイムで気軽にラリーできること

何か疑問点があったとき、仕事の依頼をするとき、相談があるときに、気軽にやりとりし合えることが重要です。そのためにも、以下の状態を作っておきたいところ。

  • 「肩書は何と書けばいいのか。”お疲れ様です、XXです”と毎回書かなきゃ」と余計な体裁面に気を取られる必要がない状態

  • 「連絡してみたものの、読んでくれているのかがわからない」と悩まなくていい状態

  • 「XXさん、お疲れ様です〇〇です。以下の件、承知いたしました」なんて毎回書くことなく、気軽に反応できる状態

こういった小さなストレスを解消してあげることが、コミュニケーションの効率化に直結します。

③重要度×緊急度が一目でわかること

来た連絡の重要度と緊急度が一目でわかるようにしておくことも重要です。

「Aさんに対する依頼ではあるが、一応Aさんのチームの方々にも知っておいてほしい連絡」
「勤務中の人には、なるべく早く確認してもらって反応がほしい連絡」
・・・など、重要度×緊急度に応じて、しかるべき人にしかるべき通知が飛ぶツールを選ぶ必要があります。

メールとチャットを比較すると、チャットのほうが社内コミュニケーションには適している

社内コミュニケーションのありたい姿として、①オープンであること、②リアルタイムで気軽にラリーできること、③重要度×緊急度が一目でわかること、の3つが重要だと述べてきました。

では、この3つの要件を満たすにあたって、メールとチャットどちらを使うのがよいのでしょうか。

ここで、冒頭に述べた結論の繰り返しになりますが、圧倒的に「チャット」がオススメです。 以下、①~③の項目について、メールとチャットを比較してみました。

メール:オープンじゃないし、気軽にラリーもしづらいし、重要度×緊急度もわかりづらい

上述の①~③の項目に鑑みると、以下のように評価できます。

①「オープンであること」の観点
メールだと宛先に指定した人にしか連絡がいかない。宛先に入っていない人にはいっさいメッセージが見えない点において、オープン性が欠如

②「リアルタイムで気軽にラリーできること」の観点
・どうしても「●●さん、お疲れ様です。XXです」的な枕詞を必要としがち。この積み重ねがストレス
・読み手が読んでくれたのかどうか、返信が来ない限りわからない
・確認したことを伝えるためにも、いちいち「●●さん、お疲れ様です。XXです。以下の件承知いたしました」と返信が必要

③「重要度×緊急度が一目でわかること」の観点
件名に【重要】【緊急】とかが入っていないと、一目で重要度や緊急度がわからない

チャット:オープンで、気軽にラリーできて、重要度×緊急度もわかりやすい

①「オープンであること」の観点
オープンなチャンネルに投稿されたメッセージは誰もが検索して閲覧可能

②「リアルタイムで気軽にラリーできること」の観点
・枕詞が不要な文化を作りやすい
・「読んだらスタンプ押してくださいね」と連絡すれば、読んだ/読んでいない人の判別もしやすい
・情報を受け取ったほうも、スタンプ1つで反応すればOKなので気軽

③「重要度×緊急度が一目でわかること」の観点
メンション機能が豊富(個人に通知、チャンネル全員に通知などの使い分けが可能)なので、意図した通りに読み手のアテンションが取りやすい

こうやって概観すると「チャット一択でしょ」と思えてなりません。

よくある誤解?チャット導入時に懸念されがちなこと

ただ、ここまでメリットを述べても、「でも私はメールがいいんです」と言い張る層が一定数いらっしゃいます。
本当不思議なくらい、どの組織でも見かけます。

ということで、メール派に「チャット導入の懸念」を聞いてみたところ、要は以下の3つがお悩みポイントでした。

  • チャットは流れていくから、やりとりを追うのが大変にならない?

  • 社外とのメールのやりとりが多い組織には、チャットツールは適さないのでは?

  • 年次が上の人ほど、チャットツールについていけないかも?

チャットは流れていくから、やりとりを追うのが大変?

なぜか一番聞くのがこれ。
チャットは流れていくから不便・・・いやいや。これ、メールも一緒ですよね(笑)

フロー型コミュニケーションという特性上、メールもチャットも次々と情報がUpdateされて流れていきます。
しかし、なぜかチャットツールにだけ「チャットは流れていくから、見落としが増えるんだよね」と懸念を言ってくる人がいます。

確かに、何の運用ルールもなくチャットツールを使うと、情報がどんどん流れて行ってしまう「ように」見えます。

しかし、「話題ごとにスレッドを活用する」「チャンネルを命名規則を決めたうえで必要十分な状態に整備しておく」「ブックマークやリマインド機能を使いわける」などの工夫をすれば、むしろメールよりも見落としは減ります。

社外とのメールのやりとりが多い組織には、チャットツールは適さない?

これもよく聞く懸念です。

社外とのメールのやりとりが多い組織では、「社外とはメール」「社内とはチャット」とコミュニケーションツールが乱立してしまうのでは?というご指摘です。一見すると、ごもっともなご指摘に見えます。

しかしですよ。仮に社内外のやりとりを全部メールに一本化したとしましょうか。

そうすると、社内と社外のやりとりが全部メールに混在しますよね。私も以前、社内コンプラの業務を兼任したことがあるのですが「社内に返信したつもりが、誤って社外の人に送ってしまった」・・・なんて事故もよく目にしました。

もちろん、ちゃんと個々人でメールのフォルダ分けを設定しておけば、そんなに混乱しないのでしょうが。いちいち個々人でフォルダ分けさせるくらいであれば、もうきっぱり「社外コミュニケーションはメール」「社内コミュニケーションはチャット」と分けてしまったほうがスッキリしませんか?

どうしてもチャットとメールを行き来するのが面倒であれば、「大事なメールはチャットにも転送される仕組み」とかを作っておけばいいのです。

上記で見てきたとおり、①オープンで、②リアルタイムで気軽にラリーでき、③重要度と緊急度が一目でわかるやりとりをするには、チャットツールが最適です。

ですので、考え方としては、

  • 社内コミュニケーションはチャットを中心に据える

  • メールは社外とのやりとりに使う。もし定常的にやりとりする会社があれば、その会社ともチャットでやりとりする

くらいのほうが、効率的なコミュニケーションが実現できます。

私も、「社外とのメールのやりとりが多い組織」にチャットツールSlackを導入したことがあります。業態はBtoC、BtoB、どちらのSlack導入も経験しました。
結果、ある企業では、1日のコミュニケーションツールに割く時間を1時間以上削減することに成功しました。

誇張なしで、社内コミュニケーションをメールからチャットに置き換えて、これだけの効率化が実現できます。
※ただし、前段の業務標準化と運用ルール整備を仕込んでおくのがマスト。これもやり方がありますが、長くなるので別の機会に。

年次が上の人ほど、チャットツールについていけないのでは?

実は一番の障壁になるのが、これ。

「偉い人がメールを好んでいるから、メールを使いましょう。チャットは導入しません」的な鶴の一声によって、チャットが導入されないケースも実際に見受けられます。

経営者がデジタルツールにアレルギー反応を示すがあまり、ツールの導入が全然進まない。
これだけ便利なツールが、しかもGAFAとかそういう超絶頭のいい人たちが作った「直感的に使えた便利なツール」がたくさんあるのに、経営者のデジタル音痴のせいで、アナログな業務がずっと残っている。・・・もう最悪ですね。

これからの時代「お、ChatGPT だって?試しにインストールしてみるか!」とフットワーク軽くテクノロジーに触れるような経営者でないと、あっという間に世間から置いてけぼりにされるでしょう。
新しいテクノロジーに対して斜に構えるのではなく、「面白そうだから、使ってみよう」と思える素直さが大事になってきます。

そして、

  • メールではなくチャットのやりとりができるか

  • リモートワークができるか

  • ローカルフォルダではなくNotionやGoogle Driveでドキュメントを作成する環境か

・・・こういった「働き方やツール」が、勤務先を選ぶ基準にもなってきています

労働人口が減る中、労働市場における交渉力は求職者のほうが強い状況が続くでしょう。
いつまでもあぐらをかいて「決裁者である私が”メールだ!”といったらメールを使うんだ」「BI(数値分析のツール)は見慣れていないから、会議には必ずパワポにグラフをまとめた資料を用意しろ!」みたいなスタンスを続けていると、確実に優秀な人材から見限られます

注意!チャットツールでコミュニケーション効率を上げるための前提条件

ここまで「チャット最高」みたいなノリで書いてきましたが、注意点があります。
チャットツール導入によって、コミュニケーション効率を上げるためには、以下の前提条件が揃っている必要があります。

①業務が標準化されていること

業務が属人化したままだと、「この仕事は、〇〇さんに頼もう」という発想になります。すると、DM(ダイレクトメッセージ)で〇〇さんに依頼することになります。
こんな感じで、DMでのやりとりが増えると、オープンなコミュニケーションがいつまでたっても実現しません。

なぜならば、

  1. DMはプライベートなやりとり(当事者しか参照できない)になるため、情報が閉じてしまう

  2. すると、DMの当事者以外には、1のやりとりが見えないため、情報格差が生まれる

・・・からです。

したがって、オープンなコミュニケーションを実現したければ、
「この依頼は、○○さんにお願いしよう」ではなく、
「この依頼をしたければ、このチャンネルにお願いしよう」という動きになる必要があります。

そのためには、

  • 「この業務のかたまりは、このチャンネルで対応する」と業務整理を行う

  • チャンネルに入っている担当者たちは、依頼が来たときに誰でも対応できるようにしておく

・・・という状態を作っておかなくてはなりません。
この作業が「業務の標準化」です。
業務を標準化しないと、チャットツールは上手く機能しないことが、お分かりいただけたでしょうか。

ちなみに「業務の標準化」というテーマはそれだけで本一冊書けるくらい奥深いテーマなので、またの機会に。私が5社以上、業務標準化を進める中で体得した方法論をいずれまとめようかと。
「早く教えてくれ」という方は、個別に連絡ください。

②チャットの運用ルールが整備されていること

チャットの運用ルールを定めておかないと、あっという間に無法地帯と化します。例えば、ルールを整えておかないと、次のような悲劇が起こるはずです。

  • メンションのルールがバラバラだと・・・

    • 「とりあえず広く遍く通知しよう」という発想になる。すると、@hereやら@channelやら@allやら、「全体に通知する系のメンション」が多用される

    • そうなると、1人ひとりの通知欄がパンパンになる→通知が来たメッセージを開く→「なんだ、大した連絡やないやん」となり閉じる→通知が来ても特に気にしなくなる

    • 通知を気にしなくなると、緊急かつ重要な連絡でメンションされたときに、通知に気づかなくなる。そうやって、大事な作業が遅れていく

  • チャンネルの入室・退室ルールを定めないと・・・

    • 「とりあえず、入れるだけチャンネルに入っとくか」と、いろんなチャンネルにたくさんの人が入ってしまう。いずれのその人たちは、休眠会員的に、ずっとチャンネルに居座ってしまう

    • チャンネルをメインで動かす人からすると、常に50人とか100人とかチャンネルにいる状態なので、何か投稿しようにも「これ、100人が見てるんだよな、ソワソワ」となってしまう。そうやって、気軽な投稿ができなくなる

こうならないためにも、チャットの運用ルールを整えておくべきです。

ちなみに「どういう運用ルールを整えるとよいのか?」は私も何度か企業にチャットツールを導入する中で「答えに近いもの」を作ったので、またの機会に整理しようかと。
「早く教えてくれ」という方は、個別に連絡ください。

③文章に残す文化&文章力があること

これは①や②の条件と比べたら、プラスアルファ的な要素です。

オープンな組織を目指すためには、「組織内で行われているやりとりが、チャットツールで見える化されている状態」を作る必要があります。

ただ、これが難しくてですね・・・
例えば、会議でのやりとりや、立ち話でのやりとりを、文章に残さずにしておくとどうなるか。
会議に参加していない人、立ち話を聞いていない人から見ると、情報がクローズになっています。

口頭でのやりとりも、言語化してチャットに共有しておく。
こうやって文章に残す文化があると、チャットツールの効果がさらに高まります。

加えて、これはチャットだろうとメールだろうと同じなのですが・・・
コミュニケーション効率化において「文章力」は避けては通れないテーマです。
誰が読んでも、パッと理解できる文章を書く。
これが、チャットツールを最大限活用するための条件です。


以上、「社内コミュニケーションに適しているのはどっち?」について考えを述べてきました。
「いや、ここはこうじゃね?」
「それ、どうやってやるの?」
など、ご意見・ご質問・ご相談あれば、気軽にご連絡ください。

https://twitter.com/ysk_motoyama


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