「H3ロケット打ち上げ失敗」の持つ意味は何か

昨日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、大型ロケットH3初号機の打ち上げを行ったものの、2段目のエンジンが点火せず、大量の燃料を搭載した同機が落下時に周囲に危険を及ぼす可能性があると判断し、期待を破壊する指令を送りました[1]。

今回の打ち上げの失敗について、原因は現在調査中ながら、日本製のロケットは2022年10月に小型機イプシロン6号機が打ち上げに失敗しており、安定して運用できるのは現行の大型機「H2A」に限られることになります。

日本は大型機と小型機の2種類のロケットを併用しているものの、イプシロン6号機については現在も原因の調査が続いています[2]。

H2Aの後継機となるH3も打ち上げが失敗したことで次の打ち上げが困難となり、H3によって打ち上げに要する1回あたりの費用を半減させ、受注から発射までの期間も従来の半分に短縮するという日本の商業用人工衛星の活用に関する戦略は見直しを余儀なくされることになります。

もとより、米国のアポロ計画におけるアポロ1号機の事故を参照するまでもなく、安定したロケットの発射を実現するためには幾多の失敗を経なければなりません。

その意味で、今回のH3の発射の失敗は、宇宙開発事業の難しさを改めて我々に教えます。

それとともに、例えば今年2月に三菱重工が国産ジェット機の実用化からの撤退を表明したように[3]、長年にわたり日本の経済的な発展と成長を支えてきた技術力が鈍化もしくは停滞の兆しを見せていることも疑いえないところです。

今回のH3の打ち上げ失敗と国産ジェット機の実用化の中止とを同列に扱うことは出来ないとしても、こうした現象の背後に潜む何らかの構造的な問題を看過することは、結果として日本の一層の発展を阻害することになりかねません。

JAXAをはじめ関係者はH3の2号機の打ち上げの持つ意味の大きさを誰よりもよく知るだけに、来るべき機会の成功が願われるところです。

[1]H3初号機失敗 打ち上げ後に指令破壊. 日本経済新聞, 2023年3月8日朝刊1面.
[2]H3初号機失敗. 日本経済新聞, 2023年3月7日夕刊1面.
[3]国産ジェット三菱重工撤退. 日本経済新聞, 2023年2月7日朝刊7面.

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the failure of the H3 Rocket Launch? (Yusuke Suzumura)

The H3, the Japan's next generation rocket, has failed to be launched on 7th March 2023. On this occasion, we examin a meaning of this failure and its impact.

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