【追悼文】杉下茂さんについて思い出すいくつかのこと

去る6月12日(月)、中日ドラゴンズで選手や監督を歴任し、1985年に野球殿堂入りした杉下茂さんが逝去しました。享年97歳でした。

明治大学を経て1949年にドラゴンズに入団した杉下さんが最多勝を2回、最優秀防御率を1回、最多奪三振を2回獲得し、沢村賞を3度、MVPを1度受賞するなど、球界を代表する大投手として11年間で215勝を記録したのは、広く知られるところです。

また、明治大学時代に天知俊一から教えられたフォークボールを効果的に活用したことで「日本最初のフォークボール投手」「フォークボールの神様」として高い名声を博したことも、周知の通りです。

ところで、幸運なことに、私は杉下さんに直接お話を伺う機会がありました。

その中で、最後はフォークボールに話題が及び、「フォークボールは落とすものではなく伸びるもの。真っすぐが鍛えられればよいフォークを投げられる」とおっしゃっていたのは、大変印象深いものでした。

特に手首を固定するのがフォークと思われているが、実際には手首を使わないといけいないと、実際の手首の使い方を例示しながらお話される様子を目の当たりにしたのは、貴重な体験となりました。

あるいは、「フォークボールを投げていたのは1試合のうちで数回だけ。ここぞ、というときに取っていた。自分の理解では、杉下茂は速球投手。今の投手のようにフォークから組み立てる配球にしていたら自分の野球人生ももっと違っていたかもしれない」という趣旨のお話は、「フォークボールの神様」の内なる声を耳にしたかのようでもありました。

戦後のプロ野球界を支え、引退後も指導者や解説者として最晩年まで後進への指導に当たり、斯界の発展に貢献した杉下茂さんのご冥福をお祈り申し上げます。

<Executive Summary>
Miscellaneous Memories of Mr. Shigeru Sugishita (Yusuke Suzumura)

Mr. Shigeru Sughishita, a Former Pitcher for the Chunichi Dragons and the Mainichi Daiei Orions and a Hall of Famer, had passed away at the age of 97 on 12th June 2023. On this occasion, I remember miscellaneous memories of Mr. Sugishita.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?