「イチローのマリナーズ球団殿堂入り記念式典」について思ったいくつかのこと

現地時間の8月27日(土)、米国ワシントン州シアトル市のT-モバイル・パークにおいて、シアトル・マリナーズの球団殿堂入り式典が行われ、今年の殿堂入りを果たしたイチローさんの業績が讃えられました。

式典にはイチローさんのほか、マリナーズ時代の同僚であったケン・グリフィー・ジュニアなどが参列し、球場は華やかな雰囲気に包まれました。

通算10人目の球団殿堂入り[1]を受けた記念の演説の中で、イチローさんはこれまでのマリナーズと大リーグでの取り組みを回顧しつつ、グリフィー・ジュニア氏を「私にとって真の先生でした」と謝意を表しました[2]。

グリフィー・ジュニア氏がマリナーズに在籍したのは1989年から1999年までと2009、2010年でしたから、イチローさんと一緒であったのは2年のみとなります。

しかし、オリックス・バファローズ時代のイチローさんが1999年2月にマリナーズのスプリング・トレーニングに参加した際、グリフィー・ジュニア氏と交流し、マリナーズの帽子をかぶりながら「いいなあ」と大リーグへの憧れの気持ちを示したことを考えれば、実際に同僚であった期間は短くとも、イチローさんにとって絶えず参照した手本が同氏であったことが改めて示された形です。

具体的な人物の名前を挙げて謝意を示すことは、特に米国における公的な場での演説では一般的な光景です。

その意味で、イチローさんは米国の作法に従うとともに、名実ともにマリナーズを象徴する存在であったグリフィー・ジュニア氏を引き継ぎ10年にわたり球団を牽引したのがイチローさんであったことを想起させるのが、今回の演説でした。

「日本人大リーグ選手」として初めて大リーグ球団の殿堂入りを果たしただけでなく、記念の式典においても米国の野球史の展開をもわれわれに伝えたところに、イチローさんの大きな功績の一端があると言えるでしょう。

[1]Ichiro Weekend. MLB.com, date unknown, https://www.mlb.com/mariners/tickets/specials/ichiro-weekend (accessed on 29th August 2022).
[2]Ichiro's Mariners Hall of Fame Induction: FULL SPEECH. YouTube, 28th August 2022, https://www.youtube.com/watch?v=fgossI-oZII (accessed on 29th August 2022).

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Mr. Ichiro Suzuki's Induction Ceremony for the Seattle Mariners Hall of Fame (Yusuke Suzumura)

The Induction Ceremony of Mr. Ichiro Suzuki for the Seattle Mariners Hall of Fame was held on 27th August 2022. On this occasion we examine a meaning of this historical event for both Mr. Suzuki and MLB's history.

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