ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ニューイヤーコンサート2022が再び示した大きな意義

昨日、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートがウィーン楽友協会黄金の間で行われました。

今回は2014年以来8年ぶり3回目の登場となったダニエル・バレンボイムが指揮を担当し、演奏会初登場となったヨーゼフ・シュトラウスの『フェニックス行進曲』のほか、ヨハン・シュトラウス2世の喜歌劇『こうもり』序曲やワルツ『千一夜物語』など、アンコールを含め合計18曲が演奏されました。

日本国内での実況中継を担当したNHKがヨハン・シュトラウス1世を「ヨハン・シュトラウス(父)」とし、ヨハン・シュトラウス2世を「ヨハン・シュトラウス」と表記するという従来からの問題が継続した点は来年以降の課題です。

一方、無観客で行われた昨年の演奏会を経て、来場者を迎えて開催された今回のニューイヤーコンサートの様子は、関係者が様々な制約の中で最善の形式を模索していることを窺わせるものでした。

特に、恒例の指揮者による挨拶の際に、バレンボイムが「『コロナ禍』は医療分野における悲惨な出来事であるだけでなく、音楽にとっても惨事である。そのような中で今回の演奏が、人々にとって人間らしさを取り戻す一助となることを願う」という趣旨の演説を行ったことは、ニューイヤーコンサートへの初登場となった2009年に、当時イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を行っていたことを受け、「2009年が平和な年となることを願う」と演説したことを思い起こさせるものでした。

また、今回の演説は、昨年の指揮者リッカルド・ムーティが各国の首脳に対して、文化はわれわれの将来の社会を支えるものであり、困難な状況の中でも支援を続けることが重要であると指摘したことを踏まえたものでもあります。

ムーティの演説が90か国以上で視聴されるニューイヤーコンサートの持つ社会的な影響力を持つ催事であることを改めてわれわれに伝えるたように、今回のバレンボイムも芸術と社会とのかかわりを念頭に置いたこれまでの活動の一環として「コロナ禍の中で行うニューイヤーコンサートの意義」を示したと言えるでしょう。

もとより、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートは、1年間に世界各地で行われる数多くの演奏会の1つでしかありません。

それでも、一定の注目を集める演奏会において、昨年に引き続き今回も現在のわれわれの置かれた状況と芸術との関係、あるいは芸術が持つ可能性が問われたことの意義は、決して小さくないのです。

<Executive Summary>
Once Again, the Vienna Philharmonic Orchestra's New Year Concert 2022 Shows Its Important Role toward the World (Yusuke Suzumura)

The Vienna Philharmonic Orchestra held the New Year Concert 2022 with Daniel Barenboim on 1st January 2022. They showed their important role toward the world to promote and advance cultural activities under the era of an outbreak of the COVID-19 again.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?