『クラシックの迷宮』が示すヘンリー・マンシーニの多層的な音楽のあり方

昨日放送されたNHK FMの『クラシックの迷宮』は、作曲家のヘンリー・マンシーニが4月16日(火)に生誕100年を迎えたことを記念した特集「ヘンリー・マンシーニ生誕100年」が組まれました。

映画やテレビドラマ、さらに作中の歌曲まで多岐にわたる作品を手掛けたマンシーニが付随音楽の巨匠であることは論を俟ちません。

それだけに、司会の片山杜秀先生がどのような視点からマンシーニの音楽を読み解き、紹介されるかは今回の放送の大きな注目点の一つでした。

今回はマンシーニの代表作の一つである映画音楽『ピンク・パンサー』の主題曲から始まり、テレビドラマ『ピーター・ガン』や『ミスター・ラッキー』の中の作品を取り上げ、さらにやはりマンシーニの名声を不動のものとした映画音楽『ティファニーで朝食を』の「ムーン・リバー」を紹介するのは、穏当な構成です。

また、1960年代に大編成による映画音楽を否定し、小編成の作品やジャズやボサノバ風の音楽を書くとともに、米国の映画産業は健闘したものの世界的にはテレビの普及により映画の地位が相対的に低迷する中で、従来は映画でなければ実現できなかった作品がテレビでも製作されるようになったことを受け、活動の場をテレビ界に広げたのもマンシーニでした。

そのようなマンシーニの姿を描き出すのが今回の放送の後半の主眼であり、『シャレード』『アラベスク』『暁の出撃』などの映画作品の音楽や現在では「『刑事コロンボ』の曲」として親しまれる『NBCミステリー・シリーズ』の主題曲などが紹介されました。

そして、映画『スペース・バンパイア』の主題曲は後期のマンシーニの代表的な作品の一つであるだけでなく、一度は否定した大編成の管弦楽曲をジョン・ウィリアムズの音楽を念頭に置きつつ手掛けたという側面から評価したことは、新ロマン派に分類されるウィリアムズが映画音楽の分野に与えた影響を踏まえた、重要な指摘でした。

片山先生が「あれもなかった。こらもなかった、は百も承知であれこれ詰め込み、ヘンリー・マンシーニの生誕100年記念の特集を組みました。」という言葉で番組を締めくくったことが示すように、ヘンリー・マンシーニの多様で多層的な音楽のあり方を聴取者に印象深く伝えた、今回の『クラシックの迷宮』の特集でした。

<Executive Summary>
The Featured Programme of the "Labyrinth of Classical Music" Shows Multi-Layered Figure of Henry Mancini and His Music (Yusuke Suzumura)

The NHK FM's programme "Labyrinth of Classical Music" featured Henry Mancini to celebrate his 100th anniversary on 20th April 2024. On this occasion, this programme demostrates that multi-layered figure of Mancini and his music.

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