「沖縄慰霊の日」はわれわれに何を教えるか

今日、沖縄県では慰霊の日を迎え、糸満市摩文仁の平和祈念公園では県主催の沖縄全戦没者追悼式が開催されました[1]。

沖縄戦での犠牲者を追悼する沖縄慰霊の日は、8月6日の広島への原子爆弾の投下、8月9日の長崎への原子爆弾への投下、そして8月15日の終戦記念日に比べると、全国的には注目の度合いが低いという点は否めません。

また、慰霊の日が6月23日に行われるのは、この日に第32軍司令官の牛島満大将と参謀長の長勇中将が自決したことをもって、沖縄諸島に上陸した連合軍に対する日本軍の組織的な抵抗が終了したとされるためです。

しかし、その後も沖縄本島以外の各島や本島内でも引き続き戦闘が行なわれており、南西諸島守備軍が降伏文書に調印したのは9月7日のことでした。

そのため、慰霊の日と実際の戦況の推移が必ずしも一致しないことも、多くの人たちが沖縄戦に対するより適切な理解を持つことを妨げていると言えるかもしれません。

しかし、そのような出来事の時系列的なあり方から離れれば、敵や味方といった枠組みを超えて、沖縄戦が多くの犠牲者を出した凄惨な事態であったことは明らかです。

これに加えて、たとえどれほど深刻な出来事であるとしても、実際に体験した人々においてさえ記憶は次第にあいまいとなり、見聞により対象を知る世代にとっては出来事そのものが歴史の中の多くの事柄の一つにならざるをえません。

それだけに、風化せざるを得ない記憶と記録を次の世代に継承し、1年のうちに1日だけであっても沖縄戦への関心や理解を高め、その後の沖縄県の歩みに思いをいたすためにも、こうした節目の日の持つ意味は大きいのです。

[1]沖縄 平和への祈りの朝. 日本経済新聞, 2022年6月23日夕刊1面.

<Executive Summary>
What Is a Meaning of the 77th Okinawa Memorial Day? (Yusuke Suzumura)

The 23rd June, 2022 is the 77th Okinawa Memorial Day, the end of the Battle of Okinawa. In this occasion we examine a meaning of this memorial day for us and the future generations.

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