ヘンリー・マンシーニの生誕100年を祝す

昨日はヘンリー・マンシーニが1924年4月16日に生まれてから100年目の記念日でした。

映画だけでなくテレビドラマからアニメ番組まで多数の音楽を手掛けたマンシーニは文字通り付随音楽の巨匠と呼ぶにふさわしい存在でした。

その中には映画『ティファニーで朝食を』(原題:Breakfast at Tiffany's、1961年)や『ピンクの豹』(原題:The Pink Panther)の連作(1963年から1993年)などの映画史に残る傑作やテレビドラマ『刑事コロンボ』(原題:Columbo、1968年から2003年)の主題曲のように今も人々に親しまれる作品などを世に送り出しました。

また、担当作品の多さは『スペースバンパイア』(原題:Lifeforce、1985年)のような、興行的には振るわなかった作品でも主題曲をはじめ主要な音楽をものするといったことからも窺われます。

その中で私が特に気に入っているのは、マイケル・ケインが「シャーロック・ホームズを演じたレジナルド・キンケイド」を演じ、アベン・キングズレーが「世界最初の犯罪学博士」であるジョン・ワトソンを務めた『迷探偵シャーロック・ホームズ/最後の冒険』(原題:Without a Clue、1988年)です。

「マンボ」と「マンバ」を取り違え、「マンボとマンバ、何か違いがあるのか」とワトソンに尋ねると「全然別物だ。マンボはカリブ海の愉快な踊り、マンバは恐ろしい毒蛇だ」と呆れられたり、ワトソンの描いた台本通りに事件の詳細を新聞記者たちに解説した際に著名な記者に「見る」(see)と「観察する」(watch)の違いを得意そうに説明し、「諸君は見るだけて、私は観察している」と豪語してワトソンにたしなめられる様子は作品の喜劇的な側面を象徴的に描き出します。

一方、名探偵ホームズがワトソンによって作り出された虚像であり、真に倒すべきはワトソンであることを知っているモリアーティー教授との対決では、「華麗な剣の使い手」として昼間の舞台でも夜の公演でも数多くの敵役を倒したホームズが"once more unto the breach"とシェークスピアの『ヘンリー五世』の台詞とともに劇場の奈落に飛び込む様子などはどこか滑稽に思われながら、事件が解決した後に状況の説明を求める記者団に概況を伝えた後に「私の友人なしには事件を解決することは出来なかった」と初めてワトソンへの謝意を伝えるところに二人のきずなの強さが示されるなど、"Without a Clue"は「ホームズもの」として様々な見せ場を持つ優れた作品です。

この様な作品を音楽面で支えたのがマンシーニで、特に主題曲のクラリネットの軽やかな吹奏と弦楽器の滑らかな旋律とはその音楽の魅力を凝縮したものでした。

惜しくもマンシーニは1994年に逝去し、今は新たな旋律を耳にすることは出来ません。

それでも、これまでの数多くの音楽はこれからも様々な作品を一層彩り豊かなものすることでしょう。

<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Dr Henry Mancini's 100th Anniversary (Yusuke Suzumura)

The 16th April, 2024 was Dr Henry Mancini's 100th Anniversary. On this occasion, I remember miscellaneous impressions of Dr Mancini.

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