山の日に思い出すアルプス交響曲のこと

今日は山の日です。

「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」[1]という祝日法の規程は多分に形式的なものとはいえ、山に因む祝日が設けられていることは、国土の多くの場所が山岳地帯であり、富士山を自国の象徴の一つとする日本にふさわしいものと言えることでしょう。

ところで、交響管弦楽作品の中で山に因む曲は決して少なくないものの、とりわけ著名な作品の一つは、リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲です。

ワンダーフォーゲル運動や山岳映画など、アルプス交響曲が作られた1915年前後は、登山によって自然に接したり、山そのものを物語の対象とすることがドイツにおいて一種の流行となっていました。

そうした社会的な背景に基づきつつ、シュトラウスが少年時代に行ったアルプス登山の経験を織り交ぜた本作は聴覚的な効果だけでなく風音器や雷音器といった特殊楽器の使用といった視覚的にも聞き手の注意を惹きつける仕掛けが施され、アルプスの雄渾さと峻厳さ、そしてそうした山に立ち向かう人間の姿を印象深く描き出します。

各種の優れた録音があるものの、演奏会場で鑑賞すると耳と目を同時に満足させるアルプス交響曲は、山の日に思い出すにはふさわしい一曲と言えるでしょう。

[1]祝日法. 第2条.

<Executive Summary>
An Alpine Symphony for Japan's Mountain Day (Yusuke Suzumura)

The 11th August is Mountain Day, a Japan's bank holiday. On this occasion we remember Richard Strauss' symphony named An Alpine Symphony for the day for mountain.

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